神戸で、4人の現代美術家に迫る展覧会

2018.7.12 07:00

泉茂の1980年代のリトグラフ作品。雲形定規は泉の晩年を特徴づけるモチーフ

(写真6枚)

1951年に結成された前衛美術グループ「デモクラート美術家協会」。当時の既成画壇、特に公募展組織への批判・反抗から生まれた彼らのグループは、大阪や東京で盛んに展覧会活動をおこないました(1957年に解散)。そのメンバーのうち4人の作家にフォーカスした展覧会が「BBプラザ美術館」(神戸市灘区)で9月17日までおこなわれています。

展覧会は「デモクラート美術家協会」時代の彼らの作品に始まり、その後のそれぞれの仕事を、泉、山中、吉原、吉田の順に紹介しています。作品の比率は、同館が豊富なコレクションを有する泉と山中が大半を占め、吉原と吉田の作品は少なめですが、見応えがあります。

泉の作品は、初期の銅版画時代は詩的な情緒を帯びていますが、1960年代以降はシルクスクリーン(版画技法の一種)が中心となり、幾何学形態や雲形定規をモチーフにしたシャープな作風に移行します。一方、山中の作品はほとんどがシルクスクリーンで、コラージュや加筆のある作品も見られます。彼の作品もシャープな形態と色面分割が特徴ですが、キャリアを重ねるにつれ色遣いがやわらかになり、温かみのある作風へと変化しました。

吉原英雄が「デモクラート美術家協会」時代に描いた油彩画とリトグラフ作品

吉原の作品は、初期の油彩画やリトグラフ(版画技法の一種)にダイナミックな傾向が見受けられるのに対して、1970〜80年代のリトグラフはトリッキーでエレガントな性質を持ち、その対比が興味深いです。吉田は炭鉱労働者を力強い筆致で描いた油彩画、銅版画、木版画などが展示されており、ほかの3人とは異質な雰囲気を漂わせています。今後の再評価が待たれる作家のひとりです。

この4作家は関西の現代美術史を語る上で欠かせない存在ですが、一般的な認知度はまだまだ低いかもしれません。本展を通して、多くの人に彼らの作品をもっと知ってほしいと思います。また、本展のような地元の現代美術史を掘り起こす企画が、もっとおこなわれててもよいのではないでしょうか。期間は9月17日まで、料金は一般400円。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『コレクションを核に 関西ゆかりのデモクラートの作家たち  泉茂・山中嘉一・吉田利次・吉原英雄』

期間:2018年7月3日(火)~8月5日(日)、8月7日(火)~9月17日(祝・月)※月曜休(7/16、9/17開館、7/17休館)
時間:10:00~18:00 ※入館は17:30まで 
会場:BBプラザ美術館(神戸市灘区岩屋中町4-2-7 BBプラザ2F)
料金:一般400円、大学生以下無料
電話:078-802-9286

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