美術家らがセレクト、異例の1日展覧会

2018.3.17 07:00

元永定正《かわばた》1983年 シルクスクリーン、紙 芦屋市立美術博物館蔵

(写真4枚)

「芦屋市立美術博物館」(兵庫県芦屋市)で3月25日におこなわれる『一日だけの展覧会』。通常、美術館の展覧会は数カ月単位での開催が多く、たった1日というのは極めて異例です。

同展は芦屋市立美術博物館の所蔵品を紹介するコレクション展ですが、作品のセレクトを学芸員がおこなうのではなく、美術家の伊藤存、伊達伸明、中村裕太と、小説家の福永信が担当しています。彼らは独自の視点で約40点の作品を選び出し、展覧会当日は1日中展示室にいてギャラリートークをおこないます。

淀井敏夫《牛と女と地中海》1975年 ブロンズ 芦屋市立美術博物館蔵

美術館のコレクション展では、その作家の業績や作品の歴史性に基づいて展示がおこなわれることが多く、そこから逸脱することは滅多にありません。つまり、学術的・客観的な視点が貫かれているのです。しかし今回、4人のメンバーはそんなお約束に束縛されることなく、自由な、あるいは主観的な視点で作品にアプローチします。そうすることで、作家や作品のさまざまな関係性に光を当て、新しい解釈や意味を引き出そうとするのです。

吉原治良《漁夫(仮題)》1929年頃 油彩、布 芦屋市立美術博物館蔵

会期が1日しかないということは、展覧会に興味を持つ観客が一斉に集合するということでもあり、当日はとても濃密な空気が会場を満たすはず。ギャラリートークでも聞くだけではなく、どんどん質問を投げかけて会話をすれば、普段の美術館では味わえない体験ができるでしょう。同展はまさに「一期一会」の美術展なのです。

文/小吹隆文(美術ライター)

一日だけの展覧会『芦屋の近代 現代のとりくみ-当館コレクションより』

日時:2018年3月25日(日)・10:00~17:00
会場:芦屋市立美術博物館(兵庫県芦屋市伊勢町12-25)
料金:一般500円、大高生300円、中学生以下無料
電話:0797-38-5432

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本