安藤裕子「結局、自分の曲しか歌えない」

2017.12.11 18:00
(写真3枚)

今年6月、初のセルフプロデュース作品となる『雨とぱんつ』『暗雲俄かに立ち込めり』の2曲を発表した安藤裕子。実はそれまでの約1年半、音楽から離れていたという。所属していたメジャーレーベルからも独り立ち。公式サイトに綴られたのは、「私小説を描けない私小説家なんてやっぱりおかしいでしょう?」という言葉。12月15日に大阪、来年1月8日に東京でのライブを控える安藤裕子に話を訊いた。

写真/渡邊一生

「自分が書いた楽曲しか歌えないんだな、私・・・」(安藤裕子)

──公には発表されてませんでしたが、1年半休業状態だったとか。

そうです。その休んでいた理由というのが、自分を見つめる時間があまりにも減ってしまったんですよね。ここ最近の音楽のテーマが重くなりすぎて、死生観みたいなものがすごく強まっていって。その死生観に囚われすぎて、今度は軽い曲が作れなくなって。作っても、歌ってても嘘っぽくなっちゃう。やっぱり濃度の薄い音楽って、聴き手にバレますよね。

──曲調に関わらず、作り手が楽曲の世界観にのめり込んでいるか、という?

そうそう。で、『あなたが寝てる間に』(2015年)というアルバムは、その死生観からちょっと離れて、明るくやるというのがテーマだったけど、1曲1曲は丁寧に作ってはいるんだけど、どこか上の空というか。自分でも、ちょっとウソをついているような気がして。そのなかで、心の底から歌えたのが『都会の空を烏が舞う』だったんですよ。それって私の死を歌った楽曲なんですけど、そこでしか自分の言葉が出なかったんですね。

「死生観に囚われすぎて、今度は軽い曲が作れなくなって」と安藤裕子

──なるほど。その後、Charaやスキマスイッチ、堀込泰行や峯田和伸らに楽曲を提供してもらう企画モノ『頂き物』(2016年)をリリースされてましたが。

ずっと一緒にやってるディレクターが、「自分で楽曲が書けないのなら、カバーアルバムを出すみたいに提供してもらった楽曲をやったらどう?」と企画してくれて。すっごい楽しかったけど、やっぱり人の楽曲だなというところに至って。1年くらい猶予をもらって自分で書いた『アメリカンリバー』も最後に収録したんだけど、なんやかんや、一番心が入ったのが自分の楽曲だったわけですよ。「あぁ。結局、自分が書いた楽曲しか歌えないんだな、私・・・」って思いつつ(苦笑)。

自主制作シングルCDとしてリリースされた『雨とぱんつ』、11月にはアナログ盤も発売された

──シンガーソングライターの性(さが)というか。

でも、自分の曲しか歌えないと分かっても、その自分の曲が出てこない(笑)。だけどリリースの予定は決まってるという状況で。もう自分へのごまかしが耐えがたくなって、去年の春くらいから、作り手として休業状態に入ったの。ライブ活動だけは残して。そのときに、マネージャーに「リハビリで作ってみたら?」と言われて作ったのが、この『雨とぱんつ』なんですよ。で、急きょライブ会場で発売することになって、だいたい3週間くらいで作れと(笑)。

──すべての作業をその短期間で?

そう(苦笑)。だから、とってもライトタッチのもの。限られた環境や予算のなかで、今なにができるかを探るというか。そういう意味では、これまで「言葉」や「死生観」に囚われていたけど、まったくそこに触れず、音作りに没頭できて。そんなのかなり久しぶりで、すごく楽しかったんですよ。

安藤裕子

『安藤裕子 Premium Live 2017-2018 〜ゆく年くる年〜』
日時:2017年12月15日(金)・19:00〜
会場:森ノ宮ピロティホール
料金:6500円(3歳未満入場不可、3歳以上有料)

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