行定勲監督も絶賛「松本潤が映画を広げてくれる」(後篇)

「やっぱり(葉山は)松本潤で良かった」(行定監督)
──エロティックといえば、風邪をひいた泉の部屋へ先生がお見舞いに訪ねるシーンですね。あれも原作にはなかったですけれども、持ってきたリンゴをいきなり目の前ですりおろして病人に食べさせようとする(笑)。
すぐ食わせるんか、っていうね(笑)。あれもちょっとドSな感じで。要するに彼の欲望なんですね。
──リンゴの形態も先生のナニの・・・欲望の象徴に僕には見えるんです(笑)。
すりおろしたものを食わせたときの彼女の戸惑いね(笑)。でも、あそこから空気が変わってくるじゃないですか。葉山が墓穴を掘るっていうか。「気がないなら、どうしてこんなやさしいことするんですか? 私の気持ち、知ってましたよね?」と泉に言われてしまう。
──それも冷徹なまなざしと口調で、率直に疑問を投げつけられる。
あれは非常に生々しいんだなぁ。俺も女のああいう顔を見たことがあるかも、俺が目を背けているときにああいう顔をしていたんだろうなぁと(笑)。あのツーショットは本当に、俺の到達点だと思いましたもん。男を蔑むっていうか、直視しない。あのときの顔が非常に「女」なんですね。怖くもあり醜くもある「女」の顔だっていうのが。

──今まで観たことがない女優・有村架純が随所で見られる映画ですが、あのシーンはまさに白眉です。
この平成の現代に、昭和の映画のようなこういう表情ができるんですよ。絶対にそういうタイプの子じゃないはずなのに。(夜中に先生の家に行って)橋のところで「来ちゃってごめんなさい」って吐き捨てて去ろうとする、あのときの彼女の顔がすごく不細工なんですよ。「いやー、OK! すごく不細工な顔してたよ」って何回か言ったらしいんです。まぁ、僕は無自覚なんですけど(笑)。そしたら、すごくうれしかったって。
──うれしかった、と(笑)。
「こんなにも思い詰めているのにこの人はわかってくれない」って、そのとき自分の気持ちが荒んでいたから、なんか「不細工」って言われてすごくうれしかったと言ってましたね。だから、有村架純というのはなかなかの女優ですよ。女優の資質、ポテンシャルが高い子だなぁと思いましたね。今までは清純な役が多かったけど、この映画で抜けたんじゃないかな。
──松本さんも新境地というか、40%にした目ヂカラは人生に倦んでいるのに、やっぱり華と知性が感じられるのがすごい。
ゴミだらけの海岸のシーンがあったでしょ?「これを片付けるのは1日かかるな」って美術監督は言ったんだけど、「いやダメ!このまま!曇るんだから明日撮る!」って、翌日撮ったんだよね。松本潤が歩きにくそうに歩くんですよ、それが不格好でね。そのテストを見た美術部が、彼がつまずくところに歩けるルートを作り始めたんです。そしたら松本潤が俺のところに来て、「監督、歩きにくくていいんだよね? これ狙いでしょ?」って言ってくるんですよ。「もちろん」って言ったら、スーッと助監督のところに行って「ごめん。歩きにくくていいので、これ元に戻して」って。
──うんうん、目線の芝居と同じことが起こってますね。
そう! で、有村は淡々と松本潤の後ろについて、真っ直ぐに同じ道を歩くっていう。最後の方に撮ったんだけど、彼らはもうわかってるから、俺がなにも言わなくてよくなるの。やっぱり松本潤で良かったな、と思ったのはそういう瞬間。よく見ているんですよね。それに、今回は考えないといけないんだっていうのが最初からあるから。人が出したゴミのなかを、2人が歩きにくそうに歩きながら、自分の思いを吐露するシーンだっていうことをちゃんと考えてる。そういうのが俺は非常に面白かったし、うれしかったですね。

──あと、坂口さんもファンはかなり衝撃でしょうねぇ。ヘタレな役や初心な役は今までにもあったけど。
この映画での坂口の顔は、まだ誰も見ていない。彼こそ不可解な人間で、ニュートラルで、いろんな色に染まれる。でも全体的にいびつなんですよ、あんないい男なのに。それを言ったら「初めて言われました。実はそうなんです」って。モデルなのに猫背だったり。だからセックス・シーンでも肩甲骨がぼこっと出る感じがすごいんです。彼と今出会えて、ホントに良かった。ウマが合ったので、またいろんなことがやれそうです。
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