男3人の舞台「男同士の嫉妬はスネる」

アメリカで1983年に初演され、日本をはじめ、海外でもさまざまな俳優たちによって再演を重ねてきた舞台『オーファンズ』。男同士の微妙な人間関係が、3人のみのキャストで繊細に描かれるこの作品に、俳優の細貝圭、佐藤祐基、加藤虎ノ介が挑む。本作初挑戦の3人に話を訊いた。
──この舞台は、2人きりで廃屋に暮らす孤児の兄弟が、同じく孤児として育ったギャングの男と偶然に知り合い、まるで家族のように暮らし、別れと再生の時を迎える感動作。細貝さんは、弟のフィリップを愛するものの狂暴で切れやすい兄のトリート役。佐藤さんはピュアで子どものようなフィリップ、加藤さんはその兄弟にさまざまなことを教える人生の先輩格のハロルド役です。
細貝:兄のトリートは親の愛情を受けず、孤児として育ち、自分なりの精一杯の愛情を弟に注いでいる。彼は弟を家のなかに閉じ込めて、隔離して養うんですが、僕はそれは、彼なりのゆがんだ愛情表現だと思っていて・・・。トリートは愛されたことがないから、人の愛し方が分からない。だからそんな行動に出てしまう。その悲しさや繊細さも表現したいですね。
佐藤:フィリップは兄ちゃんが大好きで、本当にピュアな子どものよう。ハロルドから外の世界は広く危険に満ちた場所ではないことを教えてもらって、世界への扉が開き、目覚めていくんです。子どもが1つ1つ色んなことを覚えていくように、その純粋さ、無垢さをどうやって出せるのかが僕のテーマですね。
加藤:ハロルドは見知らぬ赤の他人の兄弟に、なぜこんなにも良くしてあげるのか。人は生きていると思いがけない行動を取ることがありますが、僕は彼もそうだったと思うんです。何となく兄弟と関係を持ってしまって、そのうちドンドンと深くかかわるようになってしまった。初めから彼らに何かをしてあげようという意図はなかったと思うんです。

──ハロルドに段々となついていくフィリップを見て、トリートは深く嫉妬します。そういう「ほかの誰よりも私が1番であってほしい」という嫉妬の感情は男同士にもあるのでしょうか。
細貝:僕は自分のなかにはあると思います。すごく親しい人が自分以外の人を誘って飲みに行ったら寂しいじゃないですか。
佐藤:僕、つい最近そんなことがありました(一同笑)。なんで僕だけ飲み会に呼ばれないの?という・・・。
加藤:女同士は分かりませんが、男同士のほうがスネる率が高いのでは(笑)。

──そこで3人の人間関係も変化していきますが、結果的にハロルドは、トリートやフィリップの人生を変えることになります。皆さんは、そんな人との出会いは今までありましたか。
細貝:僕は母ですね。アメリカに住んでいた14歳のときに、モデルのオーディションに母親が応募して。当時反抗期で、すごく嫌だった。オーディションに受かり、月曜から金曜まで現地の学校に通って、土曜は日本人学校、日曜はモデルのレッスンと1週間がそんなスケジュール。それがずっと続いて・・・。でも、そのレッスンの1コマに、お芝居があったんです。大学を卒業した後も、そのレッスンがすごくおもしろかったというのが残っていて。日本に帰って役者をやりたいという夢が膨らみました。結果的にそれが今の仕事に繋がり、母がそのきっかけを与えてくれたと思っています。
加藤:僕は人ではなくて環境ですね。自分が笑って活き活きできるのが、20代前半のときに出会った『芝居をする場』。その場がドンドン僕を変えていってくれたと思います。芝居をやっている連中のなかにいて、そこで生きていることが楽しくて、本当に心地よかった。人生が変わりましたね。
佐藤:僕は大学までずっと野球をやっていたんですが、途中で野球を辞めて、家でボーっとテレビを見る日が続いたんです。そのテレビのなかで笑福亭鶴瓶さんが、「人生を変えたいと思って僕は行動している」と噺家になったいきさつを話されていて、テレビ画面に向かって「人生を変えたい、動きたいと思っているならすぐ動け」とおっしゃった。僕は「あ、変えよう!」と思って、インターネットでオーディションを検索して、この世界に入ったんですよ。芸能界に入ったら、鶴瓶さんに直接そのことを言おうと心に決めていました。鶴瓶さんにお会いする機会があって、それを伝えたら「おぉ、よう来たな」と(一同笑)。あの鶴瓶さんの一言で突き動かされましたね。

魅力あふれる男優3人による本舞台。関西公演は「兵庫県立芸術文化センター」(兵庫県西宮市)で10月14日・15日に上演される。チケットは6000円、各プレイガイドで発売中。
取材・文・写真/米満ゆうこ
『オーファンズ』
日程:2017年10月14日(土)・15日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール(西宮市高松町2-22)
料金:6000円(全席指定)
電話:0798-68-0255(芸術文化センターチケットオフィス)
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