大阪で映画祭、全身脚本家・荒井晴彦

ロマンポルノの傑作のひとつ、1979年公開の『赫い髪の女』© 日活
1977年、日活ロマンポルノ『新宿乱れ街 いくまで待って』で脚光を浴び、以降、日本映画を代表する脚本家として、確固たる地位を築いた荒井晴彦。その傑作群をずらり揃えた特集上映、荒井本人が「東京なら嫌だが、関西人のシャレなら構わないよ」と言ったというタイトル『荒井晴彦映画祭 70になった全身脚本家』が、大阪のミニシアター「シネ・ヌーヴォ」(大阪市西区)で9月2日から開催される。荒井晴彦の魅力について、映画評論家・春岡勇二に寄書してもらった。
文/春岡勇二
「好きな脚本家は?」と聞かれれば、「荒井晴彦」と答えてきた
「好きな映画監督は誰ですか?」と尋ねられることがある。そんなときは「神代辰巳」と答える。学生の頃『一条さゆり・濡れた欲情』(1972年)の伊佐山ひろ子に惚れ、『青春の蹉跌』(1974年)のショーケンに痺れ、『悶絶!!どんでん返し』(1977年)の面白さにに惹かれて、神代作品を公開時から数年遅れの後追いで観続けてきた。そして、『赫い髪の女』(1979年)にリアルタイムで遭遇した。20歳のときだった。観終わってからの数日間、頭のなかでは憂歌団が流れ続け、宮下順子、石橋蓮司、亜湖、阿藤海の姿をずっと追っていた。
主役の4人だけじゃない、山口美也子も三谷昇も庄司三郎も頭から離れなかった。神代映画の世界にどっぷりはまったのだが、しばらくしてこんな人間たちを誰が創造したのか気になった。原作は中上健次、脚本が荒井晴彦。中上健次は長谷川和彦監督の『青春の殺人者』(1976年)の原作者として知っていたが、荒井晴彦の名はこの時初めて意識したように思う。同じ年にもう1本、衝撃的な作品を観た。小沼勝監督の『Mr.ジレンマン 色情狂い』だ。家でも会社でもうだつのあがらない中年男が、ストレスを原動力に超人に変身するコメディ。この映画で初めて知ったのが主演の柄本明だった。原作は笠太郎のコミックで、脚本はこれも荒井晴彦。以来、回数は少ないけれど、「好きな脚本家は?」と尋ねられたら「荒井晴彦」と答えてきた。

荒井脚本は、湿った空間のなかで男と女が絡み合う。だらしなく、小汚く、懸命に愛し合う。そこには「裸」の人間の真実がある。そして絡み合いが真剣であればこその競い合いがある。男が女の優位に立とうとするのだ。だが、勝負はすでに決している。荒井脚本に描かれた、したたかで逞しい女たちに男たちが勝てるわけがない。女たちは争いでたとえ傷を負っても、その傷も糧にしてさらに輝く。男たちは敗れ惨めに墜ちていく。でも、その当人も、それを見ている者たちも実はそれが不快ではない。彼らは知っているのだ。墜ちていくことで彼らもまたしぶとく輝くことを。

そんな荒井晴彦の脚本映画(監督作2本含む)が11本も集められた映画祭が、9月2日から大阪「シネ・ヌーヴォ」(大阪市西区)で開かれる。これまで数多くの特集上映をおこなってきた同館だが、脚本家の特集は珍しい。さらにこの企画が東京発ではなく、関西のシネマ倶楽部と同館が組んで始まったというのも、関西在住の映画ファンとして誇らしい。15日までの期間中に荒井晴彦本人が訪れておこなわれるトークが実に9回用意されていて、ゲストも阪本順治監督、井上淳一監督、評論家の渡辺武信、寺脇研、脚本家の西岡琢也と多彩且つ魅惑の顔ぶれ。初日には2本の監督作品で音楽を担当したミュージシャン・下田逸郎まで来館し、ミニライブを行うというのだから、いい意味で「なんて日だ!」と叫んでしまう。最近、かつての日活ロマンポルノの影響が見受けられる作品が多く現れている邦画界。ここで荒井晴彦の仕事を観直しておくことは、いまの映画を考える上でも重要だろう。
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