江戸のやまと絵を知る、大阪で展覧会

2017.8.30 07:00

土佐光起《斎宮女御像》(部分)1幅 江戸時代・17世紀後半 個人

(写真4枚)

江戸時代の絵画で、土佐派中興の祖・土佐光起の生誕400年を記念した展覧会が「大阪市立美術館」(大阪市天王寺区)で、9月2日よりおこなわれます。

江戸時代の絵画といえば、「狩野派」や「浮世絵」を思い浮かべる人が多いでしょう。平安時代以来の伝統的な絵画様式「やまと絵」を継承・刷新し、幕末まで続いた「土佐派」も忘れてはいけません。土佐派は室町時代に朝廷の絵所預を世襲するなど権威と伝統を誇っていましたが、永禄12年(1569)に土佐光元が羽柴秀吉の但馬攻めの陣中で戦死すると、絵所預の職を失い、狩野派の台頭もあって劣勢になります。桃山時代には京都から泉州・堺に拠点を移し命脈を保ちました。

土佐光起 重要文化財《大寺縁起》(上巻・部分)3巻 江戸時代・元禄3年(1690) 開口神社(大阪)
土佐光起 重要文化財《大寺縁起》(上巻・部分)3巻 江戸時代・元禄3年(1690) 開口神社(大阪)

しかし、江戸時代前期に登場した土佐光起によって土佐派は再興します。京都に戻った光起は承応3年(1654)に一門の悲願だった絵所預に復帰し、幕末まで続く流派体制を確立したのです。土佐光起は、伝統的なやまと絵のスタイルを継承しつつ、ライバルの狩野派や中国絵画からも積極的に学び、やまと絵の典雅さに克明な写生画法を取り入れた独自の画風を確立しました。また、花鳥図や唐人物図も描くなど画題の拡大にも務めました。

土佐光起《源氏物語絵巻》(部分・「帚木」)1巻 江戸時代・17世紀後半 大阪青山歴史文学博物館
土佐光起《源氏物語絵巻》(部分・「帚木」)1巻 江戸時代・17世紀後半 大阪青山歴史文学博物館

本展では、光起と息子の光成を中心とした土佐派の作品約50点を展覧。雅な和の情趣に清新な風を吹き込んだ近世やまと絵の魅力を伝えます。この展覧会を機に、土佐派の認知度がグッと上がるのは間違いないでしょう。

文/小吹隆文(美術ライター)

『土佐光起 生誕400年  近世やまと絵の開花-和のエレガンス-』

期間:2017年9月2日(土)~10月1日(日)
時間:9:30~17:00 ※入館は16:30まで 月曜休(9/18開館、9/19休館)
会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82 天王寺公園内)
料金:一般700円、高大生400円、中学生以下無料
電話:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター なにわコール、年中無休、8:00~21:00)

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