廣木隆一監督、故郷・福島を想う「撮れなくてもいい、と」

福島の現在を、憤りを抱えながら逆に淡々と描いた廣木隆一監督
廣木隆一監督といえば、『ヴァイブレータ』(2003年)や『さよなら歌舞伎町』(2015年)など、男女の情愛のもつれを描いた作品から、『オオカミ少女と黒王子』(2016年)、『PとJK』(2017年)といった少女コミック原作モノまで、幅広い作品で手堅い演出を見せる名匠。そんな廣木監督が手掛けた最新作『彼女の人生は間違いじゃない』(7月15日公開)は、郷里の福島の現在を、憤りを抱えながら逆に淡々と描いてみせた渾身の一作だ。
取材・文/春岡勇二
「撮れなくてもいいから、付き合ってくれ」(廣木監督)
──並木道に青白い霧がかかって、ずいぶんロマンチックな画から始まるなと思っていたら、霧の向こうから車が来て、なんと防護服を着た男たちが降りてきて除染作業を始める。この冒頭から「やられた」と思いました。
あの霧は本物なんですよ。撮影日の朝、行ってみたらあの霧がかかっていた。すごいな、と思いました。あの街路樹は桜で、シーズンには桜の名所として知られた場所なんです。初めはCGを使って桜が咲いている画にしようかと思ったんですが、自然の霧が素晴らしかったので、これでいいやとそのままにしました。
──いや、すごいです。あの霧を観て、ロマンチックだなと思っていたのが、その直後に除染作業が始まったことで、その霧自体の意味合いもまったく変わってしまいます。
そうなんですよね。意味を込めすぎたことになるのもどうかなとは考えたんですが、いい感じで収まってくれた気がしています。
──今度の映画は、監督が初めて書かれた同名小説が原作なっているのですが、原作の冒頭もこういったシーンからですか?
小説はずいぶん前に書いたので、すでに記憶が曖昧なところがあるのですが、おそらくこうでなかったと思います。これは映画の始まりとして考えたシーンですから。
──先に小説を書いて後に映画化するというのは、監督にとっても初めての試みなわけですが、今回はなぜそうされたのでしょうか?
僕は福島県郡山市の出身ですが、僕が東日本大震災に遭遇したのは、帰省のために乗っていた新幹線の車中だったんです。宇都宮で緊急停止したまま夕方まで閉じ込められて、11日は宇都宮のどこかの体育館に泊められたんです。そこで初めて津波のことを知りました。翌日、レンタカーを借りて福島に入って用事を済ませ、すぐに東京に戻ったのですが、やはり、どうしても東北のことが気になって。
──なるほど。
で、カメラマンに連絡して、「撮れなくてもいいから、とりあえず付き合ってくれ」と、宮城の方に向かったんです。そこに広がっていたのは、津波のあとの風景。同行した製作の女の子は泣いていましたね。それでも撮れるところを撮って帰ったのですが、どうにも気持ちの整理がつかなくて。
当分福島の映画を作るのは、資金面でもそのほかの事情でも難航するだろうなと思ったので、先に小説という形でまとめてみようと。それで、もしできるのであれば、1千万円ぐらいの低予算で自主制作作品として映画化しようかという気持ちでした。
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