後藤ひろひと「大阪は夢の場所」

「ひどい映画っていうのが、とっても大事」
──演劇とお笑いと映画の究極の融合と言える今回の企画『エル・シュリケン vs. 新昆虫デスキート』が、6月1日〜7日まで「ABCホール」(大阪市福島区)で開催されます。私は『エル・ニンジャ』時代からこの企画に参加してるんですけど、1時間程度で撮影したシーンをその場で編集して、その1時間後ぐらいに上映会が実現するというのが、すごい時代になったもんだと思いました。
『エル・ニンジャ』をやった90年代の終わり頃って、家庭用のPCでも映像やゲームを作れるようになって、その可能性に自分がのめり込んだ時期でね。それで知り合いの映像ディレクターに「撮影した映像をその場で編集して、すぐ上映するってできるのかな?」って相談したら「今の時代なら可能だ」って言われて実現したのが、あの企画だったんだ。
──これには後藤さん自身の、数々のエキストラ体験も反映されてるそうですね。
エキストラって、映画の内容とか全然説明されず「ただ応援してください」「ただ逃げてください」とだけ言われるの。それで完成した映画を観たら、応援している相手が実は悪人だとか、逃げるんじゃなくて追いかけるシーンだったとか、わざとだましの演出をしている事が結構ある。デルシネでもそういう演出をする方が、やっぱり面白い表情が撮れたりするし、お客さんも映画を観た時のツッコミや驚きが大きくなると思うんだよね。

──実際「そんな役だったのかよ!」と、映画のグダグダな内容と合わせて愕然としました。それはデルシネ第一弾の『エル・シュリケン vs 悪魔の発明』(2013年)でも、まったく同じでしたね。
主役の演技が本当にひどいのが見せ場だという(笑)。でもその「ひどい映画」っていうのが、実はとっても大事なことなの。いい映画の中に素人の自分たちが出ると、そのシーンが邪魔に思えてしまうけど、他のシーンがそれ以下のことばっかりなら、逆に自分たちのシーンが引き立って見えるわけだから。今の時代はみんな、家庭用ビデオカメラとかで撮影慣れしているけど、こんな風に「おお、本当にお話のなかに入ってるよ!」っていうのは、やっぱりうれしいことだと思うんだよね。
──「映画撮影の現場」という芝居の枠内にお客さんを巻き込むことで、より現場の臨場感を持たせるという仕掛けは、やはり演劇の人。しかも観客を舞台からイジることが大好きな後藤さんだからできたことだなあと思います。
そうだねえ。お客さんにスポットを当てて、勝手な心の声をナレーションするとか、いっぱいイジったなあ(笑)。「デルシネ」ってライブ・・・演劇の部分がすごく大事だから、多分映画の人ではできなかったやり方なんじゃないかな。今は3Dとかが標準になってきている時代だけど、もっとすごいことがある。映画が飛び出すんじゃなくて、自分から入っていけるようなものは、ソフトとして必要なんじゃないかなって。お客さんを映画館まで足を運ばせる仕掛け、あるいは映画の撮影システムの一個の可能性として、「デルシネ」はとっても新しくていいことなんじゃないかなって、俺は思っています。

──今まで沖縄や京都などでも上映していますが、印象深い出来事はありますか?
沖縄でやった時に1回ハードクラッシュがあって、完全に映像が飛んだのね。その時は俺が弁士になって「ここでお客さんのシーンがこう入ります」って説明して、エル・シュリケンのシーンでは本人が出てきて、ヒーローショーみたいになってた(笑)。でもそれはそれで、普通に映像を流すよりも盛り上がりましたね。あと今回の『新昆虫デスキート』はプロレスの試合の話なんだけど、この前やった沖縄では、プロレスを知らないような女の子や子どもまで、完成した映画を観てエル・シュリケンコールを送ったり、彼が勝ったときには大きな歓声を上げてくれたんだ。映画でもここまで反応してくれるなんて・・・と、泣きそうになりましたよ。離島の漁師さんとその子どもたちみたいな人までが、大声を出して楽しんでくれたっていうのは、間違いなく大阪では大変な盛り上がりになるぞ、という自信にはなりましたね。
──今回、特に期待してることはありますか?
プロレスを知らない人もここまで盛り上がれるんだから、プロレスが好きな人なら、さらにうれしいんじゃないかな。武藤敬司さんや、俺が今の女子プロレスでトップだと思ってる松本浩代ちゃんも出てるから。プロレス好きと、映画好きにもっと来てほしいね。しかも今回は公演期間が長いから、一度観に来て「次はこの役で出よう」と言って準備するお客さんが出始めたら、相当面白いことになると思います。それでこのデルシネのシステムに興味を持つ人がいたら、日本中どこでも喜んで出かけますよ。ピューロランドが「欲しい」って言うなら、俺は子どもたちがキティちゃんと共演できる映画だって撮るからね(笑)。
取材・文/吉永美和子

【プロフィール】
後藤ひろひと(後藤・ひろひと)
通称「大王」。1969年2月23日生まれ、山形県出身。劇作家、演出家、俳優。1987年に大阪の劇団「遊気舎」に入団。1989年に二代目座長を襲名し、ほぼ全作品の作・演出を担当。変幻自在のギャグとキテレツなキャラが満載のコメディで、関西以外でも大きな注目を浴びる。1996年退団後、1997年に川下大洋と「Piper」を結成。その翌年に吉本興業とマネージメント契約を結び、小劇場から商業演劇まで多彩なコメディを発表し続けている。代表作に『ガマ王子VSザリガニ魔人』(『パコと魔法の絵本』で映画化)、『ダブリンの鐘つきカビ人間』など。現在ABCラジオ『秘密結社 大阪ぴかぴか団』(日曜23:00~23:30)でレギュラーを務める。
デルシネ『エル・シュリケン vs 新昆虫デスキート』
出演:後藤ひろひと、エル・シュリケン、ラ・ゲイシャ、ほか
日程:2017年6月1日(木)〜7日(水)
時間:19:00〜(土日は12:00〜/17:00〜)
会場:ABCホール(大阪市福島区福島1-1-30)
料金:3000円
電話:0570-550-100(チケットよしもと)
デルシネ『エル・シュリケン vs 新昆虫デスキート』
後藤ひろひと
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