「こういう20年目にしようって突き進むバンドにはなりたくはない」（ゆきてる）

──そしてこのアルバムを携えたリリースツアー『粋なり対バンツアー』。初日の４月16日はthe pillowsと対バンでしたね。どういうきっかけでこの対バンが実現したんですか？

ゆきてる「クリープハイプのイベントに出たときに打ち上げで一緒になったんですけど、スカパラの加藤さんが『こいつら帰りの車逃したから、さわおさん新幹線代払ってやってくださいよ」って言って。さわおさんは『俺は奢るのは好きだけど、たかられんのは嫌いなんだよ』って言って外に出られたんで、『あ～、やってもうたな』って思ってたら、机に新幹線代置いてくれはってて。出会いはめっちゃ最悪なんです」

西田「そのときに僕たちの音源をさわおさんに渡してて『しょうもなかったら捨てるよ』って言われてて。そしたら後日新宿をゆきてると２人で歩いてたら、さわおさんにいきなり声をかけられて「良かったよ、ＣＤかっこよかったよ」って言ってくださって。それからはさわおさんが大阪でライブあるときは見に来たらって言ってくださったり、飲みに連れてってもらったり･･･ほんまやさしいよな」

ゆきてる「お前らのファンだからね！って言ってくれて。ほんまにうれしい」

──そしてツアー最終日の６月25日は、忘れらんねえよとの対バンですね。

ゆきてる「（忘れらんねえよの）柴田くんがツイッターで、『空きっ腹に酒聴いたけど、かっこよかった』って言ってくれてて、『ほかの曲も全部聴いた』って。全部聴いたんやっていう（笑）。で、うれしいなって思ってて。ぜひファイナルにと」

──ライブ楽しみですね！ 改めて、10年やってきて今後はどうしていきたいとかありますか？

ゆきてる「こうなりたいと思ってた10年じゃなかったですけど、全然後悔はしてないです。単純に楽しかったし、the pillowsと対バンできるバンドになれたんやって思うと、それだけで幸せ。この先もこういう20年目にしようって突き進むバンドにはなりたくはないな。そのとき見えてくるものに対してどう挑むかっていうほうが、楽しくないですか？自分たちの作る音楽がどうなっていくんか、自分たちが予測するよりは『こうなったか～』ってなったほうが楽しいし、そういう10年やったんで、これからもそうありたいと思います」

「the pillowsと対バン　こんな日が来るとは思えへんかったな」（ゆきてる）

the pillowsとの対バンが現実のものとなった４月16日、「梅田クラブクアトロ」。「the pillows、活動して28年目になりました。僕は48歳になってしまいました！」と、ボーカルの山中さわおがあいさつ。MCでは空きっ腹に酒とのエピソードを話し、「あいつらとは年齢が20歳くらい違ってて。（自分たちが）20年前はどんな曲やってたかなと思ったので、当時の曲をやってみたいと思います」と、『THE KILLING FIELD』（1995）、『NAKED SHUFFLE』（1994）、『そんな風にすごしたい』（2002）などの楽曲を披露。20年の歳月を戻すという「粋」な計らいを見せたthe pillowsに、集まったファンは驚きとうれしさで歓声をあげた。

その後、「どうも、山中さわおに新幹線代をたかったバンド、空きっ腹に酒です！」と登場した４人。MCで「ホンマに今日は先輩、ありがとうございます！ 10周年を祝うバンドの前に、28周年のバンドが出てくるっていう（笑）。俺が生まれる１年前から活動してるバンドと、対バンできるなんてほんとに幸せです」と話し始め、「西田といのまたが高校の同級生で、その文化祭でコピーしてたのがthe pillowｓの『サードアイ』で。そしてそれを客席で観てたのが僕でした。今日聴くことができてうれしい！」と、結成のきっかけとなった曲の披露に感無量だった様子。

新アルバムからも８曲披露し、会場にいた多くのthe pillowsファンをも踊らせていく空きっ腹に酒。最後に「10年やってるとこんなことがあるんや。10年やってよかったよ、ほんまに。ありがとうございます！」と叫び、「the pillowsと対バン／こんな日が来るとは思えへんかったな／28年後俺達がどうなってるかわからへんけど／今日が今日で良かった！」と、ゆきてるが即興のフリースタイルで溢れる喜びを表現し、会場を沸かせた。ツアー最終日（６月25日）の「梅田クラブクアトロ」では、忘れらんねえよと対バン。こちらも記念すべき一夜となりそうだ。