映画「聲の形」、山田尚子監督に訊く

2016.10.13 07:00
(写真4枚)

「私としては『音』を表現している」(山田尚子監督)

──主人公・石田将也の声をあてられた入野自由(いりの・みゆ)さんもいいですね。

入野さんはオーディションに参加していただいたのですが、主人公の石田将也とフラットに向き合ってくださり、それがとてもよかったんです。というのも、入野さんももちろん原作をご存知だったのですが、その前知識に引きずられると、ついシリアスに構えすぎてしまいがちなのですが、彼はただひたすら少年のキャラクターとだけ向き合ってくれて、少年と同じ目線でものを見て、彼の心情や悩みをとてもストレートに表現してくださったので。

──そして、西宮硝子を演じられた早見沙織さん。彼女もオーディションですか?

彼女とは何度かご一緒させていただいたことがあって。その度に「すごく『いい音』を持っていらっしゃる方だなあ」と思ってので、こちらからお願いした形でした。彼女とお話をさせてもらうと、音感がすごくいいというのもわかる。今回の硝子役には「音」というものを表現できる方がいいと考えていたので、これはもう早見さんしかいないなって感じでした。

© 大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会
© 大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

──確かに、今回の硝子役の演じ方をみても、音感の良さはすごく感じます。

ええ。実は今回のキャスティングに関しては、もちろんみなさん演技が素晴らしいのは言うまでもないのですが、それに加えて「音」という観点でも選ばせてもらったんです。全編を通して、いろいろな「音の形」を組み立てていきたかったので。声も劇伴(伴奏音楽)も効果音も、さらにはアニメーションも、「音」というものの表現を探っていきました。

──そういうことでいえば、硝子が将也と一緒に花火を見るシーン、あそこにも「音」があるわけですね。

そうですね、硝子は耳では聴こえなくても、音を感じているんです。音は振動でもあり、ものを震わせる。花火を見ながら少女は音の振動を感じていて、それは彼女にとって生きている実感です。そして、彼女はその生きている実感を全身に浴びながら、あることをしようとするのです。

──それであのシーンの最後では、硝子は手話で「またね」と言わず、「ありがとう」とだけ言っていくわけですね。

そうです。

© 大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会
© 大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

──そういった表現や、その後の展開からも、この『聲の形』は、山田尚子監督の新境地というか、なにかこれまでの作品とは違うものになったように思うのですが、ご自身にそういう感覚はありませんか?

そうですね…、なんというか改めて挑戦してみた、といった気持ちではないかもしれません。これまでと同じく映画として、映像として、アニメーションとして、作品にとってより良い道を探る、という一心でがむしゃらに向かっているだけなので・・・。ですが、なぜ自分は映像の仕事をしているのかという、自分のなかで根ざした気持ちに沿って作っていけたように思います。

映画『聲の形』

退屈がキライな小学生・石田将也は、転校してきた聴覚障がいの少女・西宮硝子に無邪気な好奇心を抱く。彼女が現れたことにより、退屈から日々から解放された将也だったが、硝子とのある出来事をきっかけに、周囲から孤立してしまう。それから5年の月日が流れ、固く心を閉ざしたまま高校生となった将也は、ある想いを抱いて別の高校に通う硝子のもとを訪れる。

2016年9月17日(土)公開
監督:山田尚子
出演(声):入野自由、早見沙織、悠木碧、松岡茉優、ほか
配給:松竹
2時間09分
大阪ステーションシティシネマほかで上映
© 大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

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