小吹隆文撰・週末アート、9/7〜

2016.9.7 23:00
(写真3枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、残暑の日々、ひやりとする刺激をもらえる展覧会と、街なかで開催のアートイベントを紹介。

 

博物館が見世物小屋に大変身!
『特別展「見世物大博覧会」』
@国立民族学博物館(大阪府吹田市)

今ではあまり見られなくなりましたが、かつて日本では、軽業、曲芸、細工物、動物見世物など様々な見世物興行が、都市の盛り場や社寺の祭礼で行われていました。本展は、江戸から明治、大正、昭和を経て現代に至る多種多様な見世物の世界を紹介する、関西初の展覧会です。

《絵看板》軽業・足芸一座(国立民族学博物館蔵)
《絵看板》軽業・足芸一座(国立民族学博物館蔵)

展示物は、見世物の様子を描いた絵看板や錦絵、都市の歓楽街を撮影した写真、特定の日用品(たとえば陶器や竹製品)のみを用いて歴史上の人物や物語の一場面を表現する一式飾り、迫真のリアリズムで観客をうならせた生人形(いきにんぎょう)など。現代のエンタテインメントのルーツであり、興奮と感動、妖しさと一抹の物悲しさが渦を巻く、見世物の世界を振り返ります。

2016年9月8日(木)〜11月29日(火)
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注目の若手作家が新展開を披露する
『Konohana’s Eye ♯13 小松原智史「コノマエノコマノエ」』
@the three konohana(大阪市此花区)

動物とも植物とも菌類ともつかない有機的な形態が延々と増殖し続ける、小松原智史の絵画世界。

小松原智史《コマノエ》(部分) 墨、ジェッソ、キャンバス 182.0×145.4cm 2016年【本展出品作品】
小松原智史《コマノエ》(部分) 墨、ジェッソ、キャンバス 182.0×145.4cm 2016年【本展出品作品】

昨年は、『奈良・町家の芸術祭 はならぁと』の宇陀松山会場で過去最大規模の展示を行い、観客を驚嘆させました。そんな彼の主題が「無意味」と聞くと、その圧倒的なエネルギーとの落差に驚く人も多いでしょう。今回は使い慣れた筆を、学生時代に用いていたGペンに持ちかえての新作を発表。2次元性を意識した作風で、表現の更なる深化が見られます。また、会期中の9月10日と11日にはギャラリーのある大阪市此花区の梅香・四貫島地区で『見っけ!このはな2016』というイベントが行われ、小松原は公開制作を行う予定。この2日間に出かけるのがおすすめです。

2016年9月2日(金)〜10月16日(日)
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見逃し厳禁!これが妖怪展の決定版
『大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで』
あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)

日本人が異界への畏れの形として表現してきた「妖怪」。その変遷を、美術史学の視点から解き明かす画期的な展覧会が行われます。

重要文化財 伝・土佐光信 「百鬼夜行絵巻(部分)」 室町時代(16世紀) 京都・真珠庵蔵 展示期間:10月12日〜11月6日
重要文化財 伝・土佐光信 「百鬼夜行絵巻(部分)」 室町時代(16世紀) 京都・真珠庵蔵 展示期間:10月12日〜11月6日

構成は、妖怪画や幽霊画が大流行した江戸時代から始まり、妖怪が造形化され始めた室町時代、妖怪の源流となった地獄、鬼、もののけが登場する平安時代末期、さらには縄文人の不安を造形化した土偶にまでさかのぼり、最後は現代によみがえった妖怪として『妖怪ウォッチ』を取り上げます。伝土佐光信《百鬼夜行図》、《土蜘蛛草紙絵巻》(ともに重要文化財)、《辟邪絵 神虫》、《辟邪絵 鍾馗》、《六道絵 衆合地獄》(ともに国宝)など一級品が多数あり、これまでに行われてきた妖怪展の中でも決定版と呼べる内容です。

2016年9月10日(土)〜11月6日(日)
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