【連載】春岡勇二のシネマ重箱の隅 vol.5

独特のエネルギーがほとばしる大阪映画
『ガキ帝国』は、万博を間近に控えた60年代後半の大阪を舞台に、キタとミナミの不良少年たちの抗争を軸に、差別や貧困の問題もひっくるめて当時の大阪という街の独特のエネルギーを熱い疾走感のなかに描いた青春映画。主演は島田紳助、松本竜介、趙万豪(ちょう・ばんほう)、升毅。35年前だからあたりまえだが、みな若く生きがいい。そこには万博前の、いわば成熟前の大阪の青春そのものが刻まれている。紗貴めぐみは、紳助ら主人公3人の友人だったが、いつの間にか升毅演じるライバルの恋人になる少女を演じていた。この映画は、それまでピンク映画を撮っていた井筒監督の一般映画デビュー作で、実はこの映画がデビューという俳優も多い。例えば、國村隼がそう。趙万豪が演じたケンの友人で、アパッチと呼ばれる集団のリーダー・崔を演じていた。ただ、このときの名前は國村隼ではなく米村嘉洋となっている。また、そのアパッチのメンバーのなかに、いまやイケズ課長を演じたら日本一(現在、NHKドラマ『水族館ガール』に出演中)の木下ほうかもいて、彼もこれがデビュー作だった。
その木下ほうかが、井筒作品で今度はしっかり目立つ役を演じ、彼の初期の代表作となったのが、『ガキ帝国』から15年後に撮られた『岸和田少年愚連隊 BOYS BE AMBITIOUS』(1996年)。主演はナイナイの矢部浩之と岡村隆史で、木下は主人公の2人と中学生のころから抗争を続けている他校の不良のリーダー役。実年齢31歳で中学生を演じている。舞台となっているのが70年代半ばの大阪岸和田で、『ガキ帝国』と比べると、70年の万博を境に変わった大阪の空気が感じられて面白い。また、35年前と20年前の木下ほうかもね。

さて、今回は大阪を舞台にした映画を書き連ねてみたが、それは8月27日から『後妻業の女』が公開されるから。資産家の高齢男性に近づき、結婚もしくは内縁関係を結んで遺産をがっぽりと手に入れる、そんな「後妻業の女」を大竹しのぶが活き活きと演じる話題作。監督は名匠・鶴橋康夫。中之島の遊覧船での婚活パーティーやら、大正区の千歳橋やらあべのハルカス前やら、関西人にはお馴染みの場所が多数登場するのも楽しいが、出演者に豊川悦司、尾野真千子、水川あさみ・・・と関西出身者が多く、嘘でない、ナチュラルな関西弁が心地良い。特にワンシーンだけだが、我らの笑福亭鶴光先生が登場し、主人公のひとりの豊川悦司とやりとりするシーンは必見だ。あと、大竹と尾野が、水をぶっかけ合い、生肉をぶつけ合う凄まじいバトルをくり広げる焼き肉店のシーン。大阪の人間なら、あれがどこのお店か気になるところ。あの雰囲気はやっぱり鶴橋・・・、と思いきや、実は堺市北区にある民芸焼き肉店だった。さらに気になる人は探してはいかが。晩夏の焼き肉もかなりいいよね。
文/春岡勇二
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