小吹隆文撰・週末おでかけアート、2/3〜

2016.2.3 15:24

重要文化財 雨宝童子立像 長谷寺蔵(初出品)

(写真6枚)

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「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、日本の名宝、春画、現代アート、ビアズリーの展覧会をご紹介。

観音の聖地より寺宝の数々が降臨
『長谷寺の名宝と十一面観音の信仰』@あべのハルカス美術館

日本有数の観音霊場であり、花の御寺としても有名な奈良県桜井市の長谷寺。同寺の名宝を紹介する展覧会が大阪で行われます。

出展されるのは、ご本尊の両脇侍である「難陀龍王立像」と「雨宝童子立像」(共に重要文化財、初出品)、同寺の始まりと直接関連する「銅板法華説相図」(国宝)、「長谷寺縁起絵巻」、「長谷寺式十一面観音三尊像」など。また、「不動明王坐像」や「高尾曼荼羅図像」(共に重要文化財)といった、密教・神仏習合にまつわる品々も紹介され、長い歴史を持つ名刹ならではの世界を堪能できます。展示環境が整った美術館で寺宝を鑑賞し、間もなく到来する春、花の季節に現地にお出かけ。そんなプランはいかがでしょうか。

※会期中に関連イベントあり。詳しくは公式サイトにて

2月6日(土)〜3月27日(日)
展覧会情報はこちら

こんな機会はもう2度とないかもしれない
『春画展』@細見美術館

昨年に東京の永青文庫で開催され、約20万人もの動員を記録した展覧会が、ついに関西にやって来ます。春画とは、性風俗を描いた絵画や版画のこと。

喜多川歌麿「歌まくら」(部分) 浦上満氏蔵
喜多川歌麿「歌まくら」(部分) 浦上満氏蔵

特に江戸時代に肉筆浮世絵や浮世絵版画として流行し、笑いの要素を含んでいたことから「笑い絵」と呼ばれました。性を題材にした芸術は世界各地にありますが、日本の春画は質量ともに群を抜いており、海外で高く評価されています。しかし国内では、一部の研究者や好事家を除いて実物を見る機会に恵まれませんでした。本展では、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、葛飾北斎など江戸浮世絵の巨匠のほか、西川祐信、月岡雪鼎など上方絵師の作品を加えた京都バージョンとして、春画の世界を展観します。

2月6日(土)〜3月6日(日)、3月8日(火)〜4月10日(日)
展覧会情報はこちら
※18歳未満は入館禁止。受付にて年齢確認を行う場合あり。身分証明書のご持参を

2人の俊英が繰り広げる世界に注目
『作家ドラフト2016 近藤愛助 バーバラ・ダーリン』@京都芸術センター

若手アーティストの発掘、支援を目的に行われる京都芸術センターの公募企画。今回は現代美術家の小沢剛を審査員に迎え、104件の応募から選ばれた近藤愛助とバーバラ・ダーリンのプランを展示します。近藤は、彼の曾祖父が第2次大戦中に収容されていたアメリカの日系移民収容施設で撮影した写真などのインスタレーションと、彼自身が曾祖父になりかわるパフォーマンス映像を提案。

BARBARA DARLINg, BETWEEN#01, 2015-2016
BARBARA DARLINg, BETWEEN#01, 2015-2016

ダーリンは、1組のカップルが東北の海岸を車で旅するロードムービーのような作品で、台詞は「愛している」以外の台詞をすべて消去しました。どちらの作品も「記憶」が固有の土地や個人を突き抜けて、社会に対する問題意識へと昇華しているのが特徴で、見応えのある内容となっています。

※2/7に、小沢剛×近藤愛助×バーバラ・ダーリンのアーティスト・トークあり。入場無料、予約不要

2月2日(火)〜28日(日)
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世紀末のスター作家を巡る日英の関係
『ビアズリーと日本』@滋賀県立近代美術館

19世紀末の英国に彗星のごとく現れた夭逝の天才画家オーブリー・ビアズリー(1872〜1898)。彼がイラストを手掛けたオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』の英語版が1894年に世に出ると、英国は「ビアズリー時代」と呼ばれる熱狂に包まれました。

オーブリー・ビアズリー「クライマックス」『ビアズリーによるオスカー・ワイルド著「サロメ」の挿画のためのドローイング集』より 個人蔵
オーブリー・ビアズリー「クライマックス」『ビアズリーによるオスカー・ワイルド著「サロメ」の挿画のためのドローイング集』より 個人蔵

その影響は大正期の日本にも及び、多くの版画家、挿絵画家、グラフィックデザイナーが彼の虜になったとのこと。また、ビアズリー自身もジャポニスムの洗礼を受けており、初期作品には浮世絵からヒントを得た構図や描法が見られます。そんな日英アートの相愛関係を取り上げる本展では、ビアズリーを中心に、19世紀末から20世紀の日英の作家によるドローイング、版画、挿絵、装丁本など約270点を展示します。

※会期中に関連イベントあり。詳しくは公式サイトにて

2月6日(土)〜3月27日(日)
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