自主映画でカンヌ、辻岡正人の衝撃作

2015.9.24 18:40

辻岡正人監督

(写真1枚)

大阪・豊中市生まれの36歳。俳優としても活躍する映画監督・辻岡正人が、『第67回カンヌ国際映画祭』のマルシェ デュ フィルム(映画マーケット)でも上映された自主制作映画『BLACK ROOM』を携えて凱旋。9月26日、「梅田ブルク7」でおこなわれる初日舞台挨拶に登壇する。

"映画『BLACK

この作品は、片想いの女性を異常なまでの執着から監禁し、すべてを管理する破綻の青年の姿を描いている。企画はもちろん、製作、脚本、撮影、照明、美術、編集、監督、主演を、辻岡監督ひとりで担っている、文字通りの自主制作映画だ。にも関わらず、カンヌではニコール・キッドマンらハリウッドの大物と同様のステージで喝采を浴びた。

「テーマは『愛憎』です。最初は純粋に相手を愛していたのに、それが報われなければ、一転、今度は相手を憎みはじめます。愛と憎しみは表裏一体で、愛するが故に、その両面から溢れ出す『狂気』を描いています。では、愛と憎しみ、両方を受けた相手はどうなのか。それはとても言葉で説明しがたい複雑な心情であり、ラストシーンで表現しているのですが、それがカンヌでの評価につながったと実感しております」(辻岡監督)

"映画『BLACK

カンヌでは、「辻岡は謙虚だが、謙虚でいるのは大切だけど、自分の能力にまで謙虚になるな」と言われたという辻岡監督。自らの映画の作り方が間違っていなかったという確信と、その一方で、さらなる高みを目指すために何が足りないかを知れたとも。

主人公は、報道会社で勤務する青年ディレクター。占い師に死を予見されたことで、密かに想いを寄せていた同僚の婚約者を自宅を改造した鉄格子部屋に監禁する。精神的にも肉体的にも彼女を追い込んでいくも、頑なに拒否と抵抗を繰り返す彼女。最後、せめて身体だけでも奪おうと青年は電動ノコギリを手にする・・・。あまりの衝撃的な内容に、一部メディアでは「監督自身が監禁されていた経験が、映画の元となった」と報道された。

「飛躍した表現(の報道)でしたが、実際は、束縛の強烈な相手に自由と自我を奪われてしまったということです。それは飼い主がいる『カゴの鳥』のようなイメージでもあり、映画として演出で昇華させた結果、『監禁』という題材に発展しました。ヒモ生活をしていたのではなく、経済的自立をしたうえでの精神的束縛であったことは、映画でも反映させています。相手に対し『肉体』への欲求を描いた監禁映画はたくさんありますが、この作品では肉体ではなく、相手に対して”精神”への束縛を描いています」

スタイリッシュな映像とバイオレンスな描写で描いた、倫理や道徳を超越した愛憎劇。すべてを投げ打ってまで、辻岡監督にこの映画を撮らせたものは何だったのか。舞台挨拶での監督の肉声に、耳を傾けてみて。

映画『BLACK ROOM』

2015年9月26日(土)公開
監督:辻岡正人
出演:辻岡正人、夕樹ゆう、朝霧涼、手塚眞、鈴木悟、団時朗、ほか
配給:辻岡プロダクション

映画『BLACK ROOM』

辻岡正人(つじおか・まさと)
1998年、塚本晋也監督の『バレット・バレエ』で俳優デビュー。23歳のとき、初めて監督&脚本を務めた作品『ロスト・バイ・デッド』が自主制作ながら全国で公開される、一躍注目を集める。2005年の監督作品『DIVIDE』では、『トロントリールハート国際映画祭』で監督賞を受賞。以後『老獄/OLD PRISON』(2010年)、『JUDGEMENT』(2011年)などを監督。俳優としても映画『クローズZERO』『野火』をはじめ、数々の作品に出演。

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