可愛い子は耳痛い?女流監督の注目作

2015.4.24 20:30

映画『おんなのこきらい』

(写真3枚)

女には2種類しか存在しない。それは、『可愛い子』と『可愛くない子』。「前者は勝ち組で、後者は女としての価値ゼロ!」・・・なーんて、思ってる人はいないだろうか? もし「その通り!」と思うなら、底知れぬ自信のある勘違いさんか、こじらせた自己嫌悪女子か、アレにしか興味がないクズ男子・・・といったトコロか。

そんな『可愛い』を描いた映画『おんなのこきらい』が今、話題となっている。主人公・キリコ(森川葵)は、顔は超絶可愛いのに、ド級に性格のワルい女。人生『可愛い』がすべて。ミニスカからナマ足を露出させ、綿アメみたいにふんわり甘〜い私は、世界中の男をひれ伏せさせる価値があると思っている。クライアントにも、キレ者だけどブサイクな先輩が頭を下げるより、可愛い私が上目遣いに甘えた方がうまくいくと自信たっぷり。女はみんな敵。毎晩チヤホヤしてくれる男たちだけが、自分の価値を高めてくれるアイテム・・・というイタい女。

しかし、この映画の恐ろしいのは、女流監督・加藤綾佳が、可愛いキリコを失意のどん底まで容赦なく叩き落とすところ。簡単に騙せそうだった男に本性を見破られたり、不細工な尻軽女に愛する男を寝取られたりなんて序の口。最後には、ズタボロにされたキリコを観て、「キリコちゃんは悪くない、クズ男どもが悪いんだ!」とウッカリ感情移入させられる始末で、男女どちらが見ても、思い当たる事多々。たっぷり毒を飲まされる寸法だ。それにしても森川葵は、どんな時もめちゃめちゃ可愛い。「やっぱり可愛いって最強!」と勘違いさせる説得力は、彼女なしには成立しない完璧なキャスティングだ。

加藤綾佳監督(右)とバーの店長を演じた俳優・谷啓吾
加藤綾佳監督(右)とバーの店長を演じた俳優・谷啓吾

大阪「第七藝術劇場」での最終上映日には、加藤監督と、キリコが想いを寄せるバーの店長を演じた谷啓吾さんが舞台挨拶に登壇。「今の世の中、『可愛いほうが得』って言うけど、どうなのかなぁと。可愛い子なりの苦悩を描いてみました」と語る監督。それって、自分の経験が入ってる?「うーん(笑)、過去のダメな恋愛は反映されてるかも・・・」。対する谷さんは、キリコタイプは絶対無理だとか。「あたし可愛いでしょって押しが強すぎるし、君は恋人じゃないよって言っても、全然通じてないトコとか・・・もう、怖い!」。「ぎゃー、胃が痛い!」と監督が思わず悲鳴を上げるなど、辛辣な展開の舞台挨拶に、客席も大いに盛り上がった。

取材・写真・文/hime

映画『おんなのこきらい』

2015年4月11日(土)公開
監督:加藤綾佳
出演:森川葵、木口健太、谷啓吾、井上早紀、ふぇのたす、ほか
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
1時間20分

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