涅槃像から広がった、横尾忠則大展覧会

2015.2.5 15:49

3階展示室の会場風景

(写真4枚)

美術家・横尾忠則さんのコレクションを軸にしたユニークな企画で知られる、神戸の「横尾忠則現代美術館」(神戸市灘区)。同館では今、「涅槃(ねはん)」をテーマにした展覧会が行われています。「涅槃」とは釈迦の死を意味すると同時に、あらゆる煩悩から解き放たれた悟りの世界を表す言葉です。

本展は、横尾さんが収集した約600体の涅槃像コレクションから発展しました。彼は人並み外れた収集癖を持っており、いったん何かにはまると、とにかく集めなければ気が済まない性格なのだとか。今回の涅槃像の他、瀧のポストカードやY字路写真の収集でも知られています。

2階展示室、横尾忠則《Y+T》 1991年
2階展示室、横尾忠則《Y+T》 1991年

また、横尾さんは涅槃像のなかに「オダリスク」のポーズを見出していました。オダリスクとは、オスマン帝国時代にイスラムの君主の後宮(ハーレム)で仕えていた女性です。つまり、一つの像の中に、聖と俗、生と死という対極的な性質を感じ取り、それらを表裏一体の関係と捉えたのです。

本展では、先に述べた涅槃像コレクションのほか、横尾さんの絵画、版画、ポスター、装丁、近世の涅槃図、近代洋画の横たわる裸婦像などの作品群が展示されています。特に、3階展示室の約600体の涅槃像コレクションと、それを取り巻く約20点の絵画作品は見応えがあります。また、2階展示室の横たわる裸婦像のコーナー、インド看板絵師とコラボした全幅約6mの大作絵画も見逃せません。

対立する概念を飲み込んで巨視的な世界観を提示する横尾忠則さん。彼のスピリチュアルな一面を堪能する絶好の機会です。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『横尾忠則 大涅槃展』

日時:2015年1月24日(土)~3月29日(日)・10:00~18:00(金土曜~20:00) ※入場は閉館30分前まで、月曜休
会場:横尾忠則現代美術館(神戸市灘区原田通3-8-30)
料金:一般700円、大学生550円、高校生・65歳以上350円、中学生以下無料 ※障がいのある方とその介護者1名は当日料金の半額(65歳以上除く)、要証明
電話:078-855-5607(総合案内)
※会期中、関連イベントあり(詳細は公式サイトにて)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本