いしいしんじ原作、観客参加型の舞台

2015.1.17 16:33

演出家・ウォーリー木下(左)といしいしんじ

(写真2枚)

Lmaga.jpの連載「いしいしんじの東京問答」でもおなじみの小説家・いしいしんじ。彼の傑作小説『麦ふみクーツェ』を、音楽や現代アートを巧みに取り入れた芝居に定評のある演出家・ウォーリー木下が舞台化。その内容やそれぞれの思いについて、いしい&木下が語ってくれました。

木下「原作は10年ぐらい前に読んだのですが、読む前と後で自分が変わってしまうぐらい貴重な小説体験でした。舞台でできることの幅を物語以外の所にも広げたい、そんな思いをひも解かれた作品でもあります」

いしい「ウォーリーさんが自分の中のいろんなイメージを駆使してこの作品を読まれて、そこから大事なものを見つけて、それをまた芝居の形にされようとしている。僕にとってこれほど”うれしい、うれしい”批評はないです」

一年中麦踏みをしている「クーツェ」という人物が見える少年・ねこが、色を認識できない少女・みどり色を始めとする風変わりな人々との交流と、様々な音楽体験を通じて成長する姿を描いたこの作品。観客も演奏に参加するコンサートのシーンがクライマックスだが、木下はこの部分が芯となる形になるよう、大幅に改訂したそうだ。

木下「原作ではいろいろ不思議な事件が起こるんですが、今回はねことみどり色のエピソードと、音楽にまつわる話に絞りました。原作の良さをまんま生かすだけの舞台って、経験上面白くなくて(笑)。生演奏やプロジェクションマッピングなども使って、別の世界の『麦ふみクーツェ』の話を作るという感じです」

いしい「これまで舞台化された僕の作品は、表面に見えている模様をそのまま出した、というような脚本が多かったんです。でも今回は最後まで読んで”これって、こういう話かー!”と、本当に思いました」

ラストは実際に、観客も持参した楽器を使って舞台の演奏に参加できるわけだが、この他人と一緒に音を奏でる”合奏”を体験できることが、今回の舞台の一番の肝だという。

「麦ふみクーツェ」
「麦ふみクーツェ」

いしい「僕たちは音楽を聴く喜びは知ってても、合奏する喜びを忘れがち。この日をきっかけに、いろんなことが自分の中で音としてあふれ出て、実は普段から合奏しながら生きている・・・日頃の何気ない言葉のやり取りや、通勤電車での動きだって”合奏”なんだよ、ということが感じられるといいなあと思います」

木下「僕も日常の中にあるダンスや音楽に目を向け始めると、演劇が面白くなりましたしね。小説を読むような個人的な体験でもなく、音楽ライブみたいに全員がひと塊になって熱狂するのでもない、その中間みたいな劇場空間作りをやってみたいです」

取材・文/吉永美和子

シアターBRAVA! 10周年記念シリーズ つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」

原作:いしいしんじ「麦ふみクーツェ」(新潮文庫刊、理論社刊)
脚本・演出:ウォーリー木下
出演:渡部豪太、皆本麻帆、朴璐美、植本潤、松尾貴史/尾藤イサオ、ほか

日時:4月23日(木)~26日(日)※時間は日程により異なる
場所:シアターBRAVA!(大阪市中央区城見1-3-2)
料金:S席8,500円 A席7,000円(全席指定)
TEL:06-6946-2260(シアターBRAVA!)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本