ピンク映画で群像劇を撮る廣木隆一監督「不健康さが良いんです」

映画『さよなら歌舞伎町』の廣木隆一監督
──例えば、河合青葉さん、宮崎吐夢さんが演じた不倫カップルのセックスシーン。ガラス張りのシャワールームでのそれは、まさにピンク映画。河合さんの乳房がガラスにギュッと押しつぶされるようになって、宮崎さんが後ろから彼女を攻める。
最近、そういう描き方ってないから、「いいな」って思って(笑)。個人的にはそこまでピンク映画を意識したわけではないけど、でも自分の映画で久々に「あ、裸じゃん」っていうのは、あったかも。あとピンク映画は必ず1本に1、2シーンはラブホテルの撮影があったから、いろいろと思い出すことがあった。
これをきっかけにラブホテルをキッチリ撮ろうかなという気持ちがあった。昔のようにラブホテルに行って、そこで作品を撮って・・・ということではなく、ラブホテルを「題材」として、引いた視点で見てみたかった。
──舞台となるラブホにAVの撮影隊がやって来るじゃないですか。そのAV女優が、震災に遭って、生活とか学費とかどうしようもなくなったから「女優になった」というエピソードがある。そういうことって、ありえるだろうなって思うんです。でも、おもしろいのはその言い方。さらっとしていて、変に強調されていない。監督が撮られた『RIVER』もそうですけど、大きな出来事をエモーショナルに描いていないですよね。
「新しい朝がくると生まれ変わる」みたいな考え方を、「ふざけんな」と思っちゃうんですよ(笑)。「そんなのあまり変わんねえよ」って。前向きに強調しなくていいじゃないですか。何が起こっても次の日はくるし、人は死んでいく。それを普通に捉えたい。
自然に死んでいくなら自然に、殺人であればそれを物語として普通に語りたい。映画として大げさには考えたくない。みんな、そんな中であっても、いろんな人とセックスをしているんだろうし。
──だから・・・なのかは分からないですけど、映画に出てくる「セックス」が観ていてどれも気持ちがいい。すべてが背徳、ためらい、裏切りの中で、でも普通にコトに没頭している。
ラブホってそもそも、入るときに何だか後ろめたいような感じですよね。朝とか昼間にラブホに入っていく中年を見かけると、「何かありそうだぞ」と。だけど今はラブホって、コンビニでお菓子やお弁当を買って、ルンルンという感じで入る人もいますよね。何か使い方が健康的になっているんだけど、この映画はラブホならではの不健康さが、あると思います。

──それは僕も思いました! ラブホテルに入って、出てくる人を見ると、それぞれ背負っているものを感じられるというか・・・。
撮影中も、我妻三輪子演じる家出少女のように、いつもロビーにいて、男を見つけて一緒に部屋に入り、安いご飯を食べさせてもらうためにセックスをして、朝はひとりで出てくる。しゃべっていることをこっそり聞いてみると、どうもヤバい感じだったり。
そういうコは今でもやっぱりいるんだよね。変な言い方ですけど、その生々しい人間味に、逆に感動しちゃうんですよね。映画に出てくるホテトル嬢も「いつの時代の女だよ」という雰囲気だし。そういう、昔ながらのラブホテルの不健康さが良いんですよね。
──そういえば1990年代までのAVって、現在のように締め付けがそんなにないから、「社会に出られない」「ちょっと怖がっている」みたいな人が、AVに居場所を見つけて、ちゃんと生きていけた。受け皿がありましたよね。でも今はそれができなくなっている。逃げ場がない時代だと思う。それこそ、そういう人たちに「生きていくな」と行っているような時代なのかも。
そういうAVとか、つまらなくなっているよね。本当に「ソレ」しかなくって、「人間」が映っていない。この映画のホテルに集まる人は、「人間」が映っている気がします。
映画『さよなら歌舞伎町』
2015年1月24日(土)公開
監督:廣木隆一
出演:染谷将太、前田敦子、イ・ウンウ、ロイ(5tion)、大森南朋、松重豊、南果歩
配給:東京テアトル R15+
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