衰えない維新魂、松本雄吉

2012.7.10 10:00

結成からなんと42年目に突入した劇団「維新派」。少しアートに詳しい人ならきっと名前ぐらいは聞いている、関西を代表する野外劇集団だ。とはいえ今回の新作は、野外ではなく屋内・・・? いえいえ、実は緻密極まりないスタッフワークや、彼らの「街」や「風景」に対する深遠なる眼差しをじっくり堪能できるのは、派手な美術や屋外の過酷な状況に左右されない、屋内公演の方なのだ。主宰の松本雄吉の言葉を中心に、今回の鑑賞ポイントを紹介します!

取材・文/吉永美和子 写真/本郷淳三

劇場からはみ出す異空間は、まるでテーマパーク!

違法スレスレな野外パフォーマンスを展開していた劇団創成期からずっと、劇場街ならぬ”劇場外”での表現にこだわり続けている維新派。「みんなスポーツの観戦は熱くなるのに、なぜ芸術に対してはあんなに熱狂的にならへんのかと。やっぱり外でやると罵声を浴びたり、逆に塀をよじ登ってでも見ようとしたりと、観客との関係が熱を帯びてくるんです」(松本)。そして近年は、30トンもの水を使って実在の水上集落を再現したり、琵琶湖上に東欧の街を出現させるなど、演劇離れしたスケールの野外劇を上演。作品を鑑賞するというアートな姿勢でも臨めるけど、むしろテーマパークのノリで、未知の光景に胸を踊らせながら・・・それこそ熱を持って観るのが、維新派の場合は正しい見方だろう。

人間には作れない「街」という名のワンダーランド。

「野外劇のセットを作るのは、実際の街の中に、自分たちの一過性の街を作るようなもの。だから必然的に、街の批評や都市問題を考えるようになりました」(松本)。そのため維新派の作品は、一つの街を様々な角度から切り取ることで、その風景の成り立ちと、そこで暮らす人々の営みを、淡々と見せていくものが多い。人間ドラマを描くことが多数派な演劇の世界では異色だけど、逆に斬新な切り口の風景画や風景写真を、次々と見せられるのにも似た刺激を覚えるだろう。それと同時に、普段何気なく眺めている風景および日常の生活が「こんなにもはかなく面白くいモノだったか!」と、改めて気付かされる機会にもなるはずだ。「街は人間が作っているけど、一方で”人間が作れるモノではない”と思える奥深さがある。僕らが街の多様性を投げつけることで、それを実感してほしいんです」(松本)。

白い身体から発する、音楽的セリフとダンス的動き。

いろいろと演劇の枠を飛び越えた維新派だけに、その演技スタイルも個性的。まず役者は全員白塗りで(肌の色を消すことで”ヒトで在らざるもの”に近づく効果があるそう)、セリフはほとんど単語の羅列。しかもそれを、関西が誇る前衛作曲家・内橋和久による変拍子の音楽に乗せて、ラップのようにリズミカルに発声していく。さらにこのセリフ回しに、歩いたりしゃがんだりなどの日常的な動きを有機的に組み合わせていくと、不思議と一種のダンスのように見えてくるのだ。「維新派にはダンサーみたいな奴はほとんどいなくて、ドン臭い身体の人ばかり(笑)。むしろそういうわかりやすい身体から生まれる動きを、パフォーマンスにしてみせるのが僕らの仕事かなと。芸術家が多くて”芸術村”みたいなのができている東京からは、多分生まれない・・・大阪におる僕らだからこそ、できる世界やろなと思います」(松本)。

美術や映画の手法も使って、知られざる大阪を発掘。

「大阪の風景」をテーマにした本作では、やはりミニチュアの大阪の街が登場するか・・・というと、さにあらず! 真っ白かつ直線的という無機質な世界の中に、光と影と音、そして役者の身体のみを駆使して、大阪の街の姿を映し出していくんだとか。 「何もない空間に、大阪を連想させるいろいろな影を映して表情を変えていくというのは、どちらかというと現代美術的なやり方。大阪を舞台にした映画の音声だけを流すというシーンもありますし、漠然と見たり聞いたりするだけでも楽しめるんとちゃうかな。そういうわかりやすい所から入っていって、最終的にわからないような世界に導いていければ」(松本)。 ちなみに一番意識しているのは、東京の街の歴史や裏側を探る人気テレビ番組『ブラタモリ』! 「あんな風に、誰も知らないような大阪の街の姿を発掘して見せることで、大阪の風景について改めて考えて欲しいなと。 今の若い子は、意外と風景を見ていないからね(笑)」(松本)

維新派『夕顔のはなしろきゆふぐれ~Perspective play for City~』

日時:2012年7月12日(木)~ 29日(日)
会場:デザイン・クリエイティブセンター神戸

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