戦国最大の敗者「足利義昭」…尾上右近版は勘が良い? 信長に募る不満【豊臣兄弟】

3時間前

『豊臣兄弟!』より。足利義昭(尾上右近)(C)NHK

(写真9枚)

仲野太賀主演で、豊臣秀吉の弟・豊臣秀長(小一郎)が、兄とともに天下一統を果たすまでを描いていく大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。

3月22日放送の第11回「本圀寺の変」では、三好家が京都での覇権を奪取しようとした「本圀寺の変」が勃発。実は信長にとって結構な危機だったこの戦の経緯や、時代によって変化していく足利義昭のキャラクターについて語っていこう。


■ 三好三人衆、将軍暗殺を計画…第11回あらすじ

木下藤吉郎(豊臣秀吉/池松壮亮)は織田信長(小栗旬)に、堺の商人たちから矢銭2万貫を取り立てるよう命じられた。

松永久秀(竹中直人)を通じて交渉を重ね、鉄砲300丁を仕入れることを条件に、矢銭をもらう約束を取り付けるが、その鉄砲は信長と敵対する三好三人衆の手に渡ってしまう。藤吉郎と竹中半兵衛(菅田将暉)は、彼らが本圀寺にいる足利義昭(尾上右近)の暗殺を図っていることに気づく。

『豊臣兄弟!』第11回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第11回より。豊臣兄弟の前に立ちはだかる堺の会合衆。写真左から、商人・能登屋(山本浩司)、豪商・津田宗及(マギー)、豪商・今井宗久(和田正人)(C)NHK

斎藤龍興(濱田龍臣)を加えた三好勢は、小一郎や明智光秀(要潤)など、わずかな手勢しかいない本圀寺を襲撃。しかし、三好家が本圀寺をあがめていることを知った小一郎は、僧侶に化けて彼らを説得して時間をかせぐ。

いよいよ限界となったとき、堺の浪人たちを雇った藤吉郎と半兵衛が到着して、三好勢は撤退。抱き合って喜ぶ藤吉郎と小一郎を見て、義昭は「あの2人、わしのものにできるか?」と光秀に聞いた・・・。

■ マイナーだけど、重大な岐路「本圀寺の変」

最初に今回のサブタイトルを見て、一瞬「あれ、もう信長討たれちゃうの?」と、カン違いした人は結構いたんじゃないかと思う。

あの有名な「本能寺の変」と違って、歴史の授業でもあまり触れられることのない「本圀寺の変」(そういえばどっちも明智光秀が関わってる)だが、実は信長にとっては大ピンチな出来事だったことが、この第11回では描かれていた。

『豊臣兄弟!』第11回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第11回より。本圀寺の門前で、僧侶に扮した小一郎と話す三好三人衆ら。写真左から、小一郎(仲野太賀)、三好⻑逸(中野英樹)、石成友通(阿部亮平)、斎藤龍興(濱田龍臣)(C)NHK

足利義昭を将軍に擁立する際、信長に京都から追い出された三好家は、本拠地の阿波まで撤退。しかし、このとき交戦がほとんどなかったため、戦力は温存されていた。やはり一度は京都を実効支配した胆力は只者ではなく、信長の兵力が落ちる瞬間を虎視眈々と狙っていたのだ。

そして、信長がいったん京を引き上げ(兵糧不足と言われている)、もう1人の厄介な存在・松永久秀も信長に挨拶するために京を離れるという、まさにピンポイントな時期を見定めて兵を送り込んだのは、さすがの読みである。

『豊臣兄弟!』第11回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第11回より。急襲した三好三人衆の軍勢に応戦する明智光秀(写真左、要潤)と小一郎(写真右、仲野太賀)(C)NHK

とはいえ義昭、一週間ぐらい援軍が来ないなか、ごく少数の兵だけで三好家の猛攻を耐え抜いたわけだから、これはかなりの金星だ。もしここで義昭が討たれていたら、めぼしい将軍候補は尽きていたので、足利幕府がここで滅亡した可能性が高い。

また、信長も、将軍家の威光を利用して天下一統を進める計画が白紙になってしまうので、戦国時代の終わりはまだまだ先になっていただろう。

『豊臣兄弟!』第5回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第5回より。家臣に詰め寄る美濃の戦国大名・斎藤龍興(濱田龍臣)(C)NHK

そうやって考えると、今回三好家に加勢した龍興が、秀長が一芝居を打ったときに、どこで会ったのかを思い出せなかったのは幸いだった。もしあそこで「織田家の家臣だ!」と気づかれていたら、雪が降るほど寒いから暖を取りたいという気持ちも込みで(笑)、即座に火を付けられて逃げ場を失っていただろう。

これからいろいろ危機一髪状態がつづく信長だけど、実は一番最初の大きなピンチはこれだったのだと、改めて感じさせる展開だった。ありがとう、龍興!

■ 戦国最大の敗者「足利義昭」、過去作では…

そして今週は、今までただ信長の後ろを着いていくような状態だった足利義昭が、ようやく自我を見せ始めた回でもあった。

『豊臣兄弟!』第11回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第11回より。年末に訪ねてきた松永久秀と話す、15代将軍・足利義昭(写真左、尾上右近)と家臣・明智光秀(写真右、要潤)(C)NHK

数年前までは、義昭は信長に担がれるだけの凡人というイメージが強かったし、特に『功名が辻』(2006年)で三谷幸喜(!)が演じた義昭は、「戦国最大の敗者」というのを意識したという話も聞いた。しかし、近年は、情報線ではかなり善戦していたという説も強くなり、ダメキャラから更新されていっている。

最近だと、滝藤賢一が平和を愛する温厚な善人として演じた『麒麟がくる』(2020年)、古田新太がバカ殿に見せて実は真理を付いてくるユニークな人物像を作った『どうする家康』(2023年)と、なかなかに両極な人物が見られた。

そして、今回の尾上右近版・義昭だけど、これが簡単に本性が見えなくて面白い、という感じになっている。

『豊臣兄弟!』第10回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第10回より。織田信長(写真左、小栗旬)に礼を述べる、15代将軍・足利義昭(写真右、尾上右近)(C)NHK

初登場時は元僧侶らしく、万事ひかえめで周囲の人に求められるままに動くという印象だった。しかし、この第11回では、元将軍だった兄・義輝へのコンプレックスをむき出しにするという、少し薄ら寒い瞬間が見られた。

想像するに、周囲にいる義輝の元側近たちから「兄がどれだけ素晴らしかったか」ということを折に触れて説明され、顔も知らないのに・・・いや、知らないからこそ劣等感だけを募らせたという可能性はある。

『豊臣兄弟!』第11回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第11回より。織田信長(写真左、小栗旬)に高級な茶器を贈る大和の戦国武将・松永久秀(写真右、竹中直人)(C)NHK

その一方、松永久秀への対応から、周囲が自分よりも信長の方が上だと認識しているのを鋭く見破るという察しの良さもある。さらに本圀寺の変では、あえて自分の姿をさらすことで、味方を奮い立たせつつ、敵方に動揺を与えるという作戦が見事に当たった。

そんな感じで、周囲の人の本心や求めていることを、言葉にされなくてもなんとなく理解できるという能力が、かなり高い人物という位置づけなのだろう。

ただ、こういう感の鋭い、感受性の高い人は、その察する力をきちんと行動に変えることができない状況にいると、人一番フラストレーションを溜め込みがちだ。

『豊臣兄弟!』第12回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第12回より。二条御所の造りを訝しむ15代将軍・足利義昭(写真左、尾上右近)と家臣・明智光秀(写真右、要潤)(C)NHK

本圀寺の変の義昭は、周囲に秀長を含めて従順な人しかいなかったので、大胆なスタンドプレーも可能だったが、このあとは信長になにかと行動を抑え込まれることになるので、どんどん不満と猜疑心を溜め込んでいくことになるのだろう。それがどんな形で爆発するのか、怖いけれど楽しみでもある。

ちなみに、今回の舞台となった本圀寺、当時は六条堀川の辺りにあったが、現在は京都市山科区に移転した。特に加藤清正が厚く信仰をしていて、「赤門」などのいろんなものを寄進しているので、アクセスは少し不便だけど、清正マニアは訪れてみてほしい。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。3月29日放送の第12回「小谷城の再会」では、信長と義昭、信長と浅井家の間で不穏な空気が流れはじめるなか、秀長の将来の妻・慶(ちか/吉岡里帆)が初めて登場する。

文/吉永美和子


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