大阪・阿倍野に開業「亜笠不文律」が目指す、令和の新たな「町の本屋さん」とは?

3時間前

本屋「亜笠不文律」店に入る前から情報量多め!

(写真13枚)

◆ 「めちゃくちゃハードルが高い!」新規開業が極めて難しい書店業界の今

書店の商品である本を入荷する際に避けて通れないのが出版取次店(以下、取次)と呼ばれる流通業者。小売店における問屋のような存在だが、現状、新刊を幅広く取り扱う書店を開業する場合、大手の取次と契約する必要があり、ここが個人経営の店舗にとって大きな壁となる。

本屋「亜笠不文律」
幅広い品ぞろえで、子どもからお年寄りまで楽しめる本屋「亜笠不文律」

「取次は、私が書店勤務の時代からやり取りしていた会社にお願いしようと思ったのですが、契約するには物件が決まっていないといけません。先ほど話したリノベーション物件をすぐ契約したのですが、取次側も本を卸して良い店かを審査するので本当に契約できるかは、すぐには分からないんです」

かつて日本の出版業界では個人経営の書店が重要な販路だったため、大手取次との契約もそこまで難易度の高いものではなかった。しかし、時代の流れにより取次契約の内容は大手チェーンに対応したものへと変化していく。

文庫本もずらり 本屋「亜笠不文律」

「私は自分の考えている業態を実現させるために一般の取次契約をしていますが、個人経営の書店で、なおかつ今の書店業界の状況を知ったうえでこれをやるのは、めちゃくちゃハードルが高い。しかし、それに見合ったサービスも受けているので、現状はこの状態を維持することが課題です。最近では個人書店に向けた契約パッケージも用意されつつあって、定期刊行物は入荷できませんが契約のハードルは圧倒的に低くなります。これから自分で書店を経営したいという人は、こういった契約や小規模な取次を活用されるのが良いと思います」

一般書店の取次契約にたどり着いたアガサさんだったが、本の売り上げだけで経営を成り立たせるのは至難の業。もともと考えていたというカフェ営業や古本の販売など、複合的な業態で店の独自性を打ち出すことに。

2階では古本を閲覧しながら紅茶やお菓子が楽しめる
2階では古本を閲覧しながら紅茶やお菓子が楽しめる 本屋「亜笠不文律」

「カフェやギャラリー、古本のための場所があるという前提で物件を探していたので、2階建ては必須条件でした。新刊の販売だけではない業態にしたのは、本の利益だけでは経営が難しいという理由もありますが、地域に根付いてお茶も読書も楽しめる場所があまりなかったから。身近にそういう場所があればいいのにとずっと思っていたので、じゃあ本屋と組み合わせて自分で作ろうと思い立ちました」

本屋「亜笠不文律」
本屋2階で『特薦いいビル 千日前味園ビル』刊行記念トークショーを2025年11月に開催。BMCメンバーのサイン会や、味園ビルの貴重な資料の閲覧もこちらで「亜笠不文律」

◆ 小さいお子さんから80代の方まで…地域に溶け込む中で打ち出す独自性

こうして2025年3月31日にグランドオープンを果たした「亜笠不文律」。アガサさんがXで店づくりの様子を発信していたことで注目を集め、開店するとさっそく地域住民や書店巡りを趣味とする来店客が訪れように。今では足繁く通う常連客も増えている。

2階でトークショーを行ったイベント開催日は、1階も本を買い求める人たちで大忙しだった 本屋「亜笠不文律」

「幅広い年齢の人に来てほしいと思っていたのですが、おかげさまで小さいお子さんから80代の方まで来ていただき、『近所に本屋ができて良かった』『天王寺まで出なくてもいいので助かる』とたびたび言ってもらっています。開店当初は未完成だった2階の準備をしながらだったので、店が地域に与える影響などを考える余裕もありませんでした。しかし1周年を控えた今、近隣のみなさんの生活の一部に書店という選択肢を入れてもらえるようになったのかなという実感は少しずつ感じています」

幼児向けの知育関連グッズも取り扱う
幼児向けの知育関連グッズも取り扱う 書店「亜笠不文律」

店内はアガサさんが目指していた「町の本屋さん」を体現すべく、雑誌から書籍まで幅広い本が並ぶ。特にコミックは、漫画家として活動し、コミック専門の出版社で営業をしていたこともあるという経歴から、大手チェーンの書店では見られないセレクトにこだわりが光る。

書店「亜笠不文律」
定期的に入れ替わるコミックのラインナップに要注目 本屋「亜笠不文律」

「最初はこだわりがないことをこだわりにしたいと思っていました。しかし、マンガ・コミックに関しては人生の中で関わっていた時間が長いし愛着も深いので、大手の書店だとひっそりと棚に刺さっているような作品でも、めちゃくちゃ面白いと思うものを積極的に仕入れています。棚の内容も定期的に入れ替えているので、お気に入りの一冊との出会いにつながれば嬉しいです。その他の本についてもどういうニーズがあるか分かってきたので、開店当初から品揃えが大きく変わりました」

定期的に入れ替わるコミックのラインナップに要注目
POPを読んでいるだけでも楽しい 本屋「亜笠不文律」

開店からもうすぐ1年を迎える現在もなお慌ただしい日々を過ごしているアガサさん。店に興味を持った際は、ぜひ気軽に足を運んでほしいとのこと。

「お客様は、本を探すぞ!という意気込みを持った人から、立ち寄ることで癒しになる、少し気が紛れるという人まで、本当にさまざまです。私としては、来たからといって絶対に何か買わないといけないとは思っていないし、目的を持たずに来ても楽しめる場所にしたいと思っています。ただ、2階でお茶ができることが近隣の方にまだあまり知られていないので、ここはもっとアピールしたい。ゆっくりくつろげる、馴染みの場所にしてもらえたらと思っています」。後編に続く。

◇ 本屋「亜笠不文律」は、大阪市阿倍野区王子町4-3-18。営業時間は平日12時~20時、土日祝11~20時。月曜定休。

アガサさんが「目的を持たずに来ても楽しめる場所にしたい」と話すように、居心地の良さを実感。本屋「亜笠不文律」
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