「このままでいいんかな」→大阪・住吉大社に変化…「ねこポスター」 きっかけで “かわいい” 増殖中

6時間前

全国に約2300社ある住吉神社の総本社であり、1800年以上の歴史を誇る「住吉大社」(2026年1月/Lmaga.jp撮影)

(写真16枚)

猫が主役のポスターやパッケージ、干支をモチーフにした看板や暖簾・・・。伝統的な神社の風景のなかで、思わず足を止めて見入ってしまう“かわいらしいデザイン”が、大阪を代表する神社のひとつ「住吉大社」(大阪市住吉区)で徐々に注目を集めはじめている。

きっかけをつくったのは、同社の広報担当者。伝統のなかに新しい表現を取り入れようとする、神社の挑戦があった。

■「このままでいいんかな」“風景の一部”になっていた伝統的なスタイル

『初辰まいり』の為に制作されたデザイン。左上から時計回りに、2025年ポスター、2026年ポスター、法被・そば、招福猫の袋(2026年1月/Lmaga.jp撮影)

中心となって動くのは、住吉大社の広報を担当する総務部企画課の河野さんだ。

──お守りや御朱印など「授与品」のデザインにこだわる神社は増えてきましたが、ポスターなど「広告」の部分については伝統的な表現が主流のイメージがあったので、住吉大社さんのデザインは新鮮だなと感じました。

きっかけは、月に1回おこなう住吉大社の名物『初辰まいり』のポスターでした。毎月日にちが異なるのでポスターも作り替えるのですが、招福猫や反橋(そりはし)の写真を使ったデザインに事務員さんが日付を墨書して20年ほど作っていたんです。

昔ならではのやり方で長年やっていて、このままでいいんかな?と思ってたんですよ。南海電車と阪堺電車の駅にも掲示してもらってるんですが、風景のひとつになってしまっていたので、せっかく貼って貰うならもうちょっと面白い感じで宣伝できたらなと思ったんです。

「初辰まいり」以前のポスターデザイン(写真提供:住吉大社)
「初辰まいり」以前のポスターデザイン(写真提供:住吉大社)

──調べた所、石川県金沢市のデザイン会社「TONE(トーン)」さんが制作されているんですね。なぜ、地元大阪ではなく金沢の会社が?

「TONE」が手掛けた2025年12月〜2026年11月の『初辰まいり』ポスターデザイン©TONE Inc.

色々調べていたところ、トーンさんが手がけたバラエティ豊かな石川県の観光ポスターが凄く良くて。何パターンも展開されているのが『初辰まいり』のイメージと重なったので、お声がけしたのが始まりです。

実は、最初に提示された案は「多分神社ってこうじゃないといけない」という、ある意味で無難なイメージに寄ったデザインでした。ただ正直なところ、もうちょっと攻めた、目に止まるような表現に挑戦したいと思ったんです。

その率直な思いをトーンさんに伝えたところ、九谷焼窯元六代目であり美術家のKAMIDE KEIGOさんやコピーライターの方々も巻き込みながら制作が進み、結果として想像以上に素敵で訴求力の高いデザインに仕上げて頂きました。

■「神社はこうあるべき」を越えて

住吉大社の広報を担当する総務部企画課の河野充浩さん
住吉大社の広報を担当する総務部企画課の河野充浩さん(2026年1月/Lmaga.jp撮影)

住吉大社に奉職して20年の河野さんは、約10年前から総務部に配属。以前から興味を持っていた広報企画にも積極的に関わってきた。

──1800年以上の歴史を誇る「住吉大社」。新しい試みについてはハードルの高さもあったのでは?

もちろん、様々な企画を進める中で時間がかかったものもありますが、今では社内で理解してもらっていると感じています。

私はご神徳を広めることを最優先に広報企画を考えてきました。それが結果的に他社と明確に差別化でき、住吉大社独自のイメージや信頼感に繋がっていると思います。

SNSに写真をあげてもらったり、少しずつ反響もいただくようになり、今では柔軟に色々やらせてもらってます。理解してくれる上司に感謝ですね。

安産祈願の袋(写真提供:住吉大社)
安産祈願の袋(写真提供:住吉大社)
九谷焼窯元六代目であり美術家のKAMIDE KEIGOさんがデザインした紙袋(2026年1月/Lmaga.jp撮影)
招福猫がプリントされた『初辰まいり』の法被(2026年1月/Lmaga.jp撮影)

──楽しんで取り組んできたことが、成果として表れたんですね。

昔から来られている参拝者の方も「変わったね」「なんか面白いね」と褒めてくださいます。初辰まいりの日には希望者にポスターをお渡ししているんですが、昔は余っていたのに今はすぐなくなりますね。法被も作ったんですが、着て歩いてると「可愛い」「写真撮らせて」とお声がけ頂く事もあり、すごく嬉しいです。

住吉大社には国宝、文化財がありますので維持管理は大変です。守っていくべきものは変わらず大切に受け継いでいく。でも、こうやって時代に合わせて変えて良いものもある。そういう部分はこれからもチャレンジしていきたいなと思いますね。

■「せっかく来てくださるなら…」年に一度、心に残るものを

初詣シーズンでしか見られない「住吉大社」の巨大な干支看板(2026年1月22日/Lmaga.jp撮影)

そんな変化し続ける境内で、2月3日までしか見ることができない看板にも注目だ。住吉大社のシンボル的存在・反橋の前に設置された大きな看板には、2026年の干支・午(うま)のイラストと「駆けだすなら、ことしがぴったり。」というメッセージ。神社の空気に馴染みながらも新しさがあり、世代を問わず親しみやすく、そっと背中を押してくれるような存在感のあるデザインが心に残った。

──初詣で見かけた大きな看板がすごく印象的に残って…そういえばこういうデザインって神社ではあまり見たことないと。

お正月はやはり多くの方がいらっしゃるので、一般的にはどこの神社でも安全確保のための「参拝道を誘導する看板」がほとんどなんですよね。

もちろん必要不可欠なものではありますが、せっかく一年の幸せをお祈りしに来られているので、神社にももっと何か思い出に残るようなものがあってもいいのではと思い、2025年(へび年)から設置し始めました。

せっかく神社に置くので、看板のサイズは日本人が昔から親しむ「白銀比」を採用しています。看板を立てる所から始めて、細かい部分までこだわりました。

干支看板の掲出期間は毎年12月上旬から節分の2月3日まで(2026年1月22日/Lmaga.jp撮影)


これらの多彩なデザインは、ご祈祷やお供えの返礼品としても使われている。ぜひともグッズ化してほしいところだが、現時点で商品化の予定はないという。

干支看板の掲出期間は、毎年12月上旬から節分の2月3日まで。そのほか、境内の装飾は行事に合わせて掲出期間が異なる。

暖簾や看板など、住吉大社の各所には目を引くデザインが散りばめられている(2026年1月22日/Lmaga.jp撮影)

取材・文・撮影/Lmaga.jp編集部

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