サワは「もう一人のトキ」…川の向こうに残った女性2人の生き様を描いたわけ【ばけばけ】

『ばけばけ』第80回より。なみ(さとうほなみ)は得意客のもとへ嫁ぎ、天国町を出ていくことになった(C)NHK
ヘブン(トミー・バストウ)と結婚して、武家屋敷が立ち並ぶ、松江大橋の北側に引っ越したトキ(髙石あかり)。今週放送された連続テレビ小説『ばけばけ』第16週「カワ、ノ、ムコウ。」では、その反対側の、長屋と色街が並ぶ南側に残された、トキの幼なじみ・サワ(円井わん)と、遊女・なみの人生をクローズアップした。
「松江新報」の記者・梶谷(岩崎う大)が書いた記事が原因で、トキは一躍「松江の有名人」になってしまった。サワとなみは、ついこの間まで同じ「橋の南側」に暮らしていたトキを、遠い存在のように感じていた。
トキ、サワ、なみ。3人の姿を通じて、『ばけばけ』は「明治を生きる女性」の苦悩を多面的に描いてきた。制作統括の橋爪國臣さんに、あらためてサワとなみの、物語における役割について聞いた。
■ サワとトキ、どちらにも反対側の人生があり得た
橋爪さんは、「トキ、サワ、なみの物語を通じて、当時の人たちのさまざまな生き方が見えたらいいなと考えました」と話し、こう続ける。
「サワはトキの幼なじみで、親友で、同じ没落士族の娘で、同じように『橋の北側』から『橋の南側』の長屋へと流れ着いた仲。ずっと『傷を舐め合って』生きてきました。サワはきっと、『もう一人のトキ』なのだと思います。サワにも、トキと同じような道のりがあったかもしれないし、トキにも、サワのような人生があり得た。

ところがトキがヘブンと結婚して『橋の北側』に戻っていったことにより、ふたりの間に距離ができてしまった。あれだけ仲の良かったトキとサワでも、どちらかの暮らしが変われば、こんなにもギクシャクしてしまう」。
■ サワのほうが「朝ドラヒロイン」っぽい?
トキとサワのキャラクターの描き分けについて、橋爪さんはこう言及した。
「トキは、自分自身で何かを切り開いていくタイプではないんですね。周りに流されて、いろんな運命が重なったことで見えてきた『生きる道』をそのまま進む女性です。対してサワは、自分の力でどうにかしたいと、足掻いている。
どちらかといえば、『自分の道は自分で切り拓く』という野心を持ったサワのほうが、これまでの朝ドラで多く見られたヒロインの造形に近いのかもしれません。

2人それぞれに違う生き方があって、進む道も違う。きっとお互いに理解できないところもあるのだと思います。子どもの頃のトキとサワのような関係には戻れないけれど、何があってもきっと、心の奥ではつながっている。そんな関係性が描けたら、と考えました」。
■ なみを通じて描きたかった、明治時代のセーフティーネットの脆弱さ
そんなサワのことを、なみは、「橋の南側」から出られない「仲間」だと言った。しかし、1月23日に放送された第80回でなみは、身請けを申し出た得意客・福間(ヒロウエノ)と一緒になることを決意し、天国町から出ていくことに。なみの人物造形についても、橋爪さんは明かす。
「なみは、トキやサワよりももっと貧しく苦しい環境で生まれ育ちました。『最底辺』の暮らしを強いられ、遊女になることでしか生き抜くことができなかった。それでも暗くならずに、自分の人生を受け入れて明るく生きていく、というのがなみのキャラクターです。
なみのエピソードを通じて、明治時代のセーフティーネットの脆弱さみたいなところを描ければ、と思いました。こうした問題は、形は変われど現代にも地続きなのではないかと」。

■ なみを「本当の地獄」に落としたくはなかった
橋爪さんは、明治の時代に遊郭で働いて生き延びた女性たちについて、「当時の遊女の行く末は、たとえ身請けしてもらえたとしても、相当に困難なものでした」と話し、こう続けた。
「年端も行かない遊女を身請けして、奴隷のように扱った人も少なからずいたといいます。でも、なみをそうした『本当の地獄』に落とすのは嫌だと思いました。彼女なりの希望を見いだしてもらいたかったし、最後は幸せになってほしいな、と」。
また、トキ・サワ・なみの3人について、「それぞれの生き方があって、それぞれの良さも悪さもある。それぞれに苦しみがあるし、それぞれに希望もある。そんなところが描ければ、と考えて、幼なじみのサワ、長屋の隣の遊郭で働くなみ、という2人に、トキのそばにいてもらいました」と明かす。
なみは今後も登場し、次週、第17週では、引き続きサワのエピソードが描かれるという。サワは最終週まで登場する予定とのことで、橋爪さんは「ずっと温めてきたサワの物語が、ようやく花開いていきます。楽しみにご覧ください」とコメントした。
取材・文/佐野華英
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