100年の歴史に幕…「大阪松竹座」の最終公演が決定、ラストは名作の数々

3時間前

閉館する「大阪松竹座」

(写真3枚)

昨年の8月末に、2026年5月公演を最後に閉館することが突然発表された「大阪松竹座」(大阪市中央区)。そのラストとなる歌舞伎公演『御名残四月大歌舞伎』(4月3日~26日)と『御名残五月大歌舞伎』(5月2日~26日)の詳細が明らかになった。「大阪松竹座」で歌舞伎に親しんできた人たちだけでなく、今からでもここで歌舞伎を観たい! と願う人たちのために、見どころを紹介したい。

■ 中村獅童、中村勘九郎など…ラストは豪華な俳優陣が登場

大正12(1923)年に創建した「大阪松竹座」。外観片岡仁左衛門や中村鴈治郎などの、上方歌舞伎を代表するベテランたちだけでなく、注目の若手俳優たちも大挙出演する今回の舞台では、演目もポピュラーな名作からコアなファンが唸る作品、ストーリー性が高いものから華やかな舞踊まで、言葉通り「有終の美を飾る」のにふさわしいラインアップとなっている。

ただ、内容の豪華さと最後の興行というプレミアが付いているだけあって、正直値段は通常よりお高め。2公演の昼と夜の部、あわせて4回…しかも演目によっては、俳優が「Aプロ」「Bプロ」で入れ替わるものもあり、すべて観るのはかなりのハードルだ。そこで上演される各作品のポイントを簡単ではあるが紹介していくので、ピン!と来たものを厳選していただけたらと思う。

昭和27(1952)年「風と共に去りぬ」上映時の大阪松竹座外観ⓒ松竹
昭和27(1952)年「風と共に去りぬ」上映時の大阪松竹座外観ⓒ松竹

『御名残四月大歌舞伎』の昼の部では、仇討と恋愛物語が同時進行する人気作品を中村獅童&中村隼人というTVでもおなじみの俳優たちを中心に上演する『彦山権現誓助剱 毛谷村』。「大阪松竹座」と縁の深かった上方歌舞伎の名優・坂田藤十郎(2020年逝去)が復刻させた、実在の花魁にまつわる悲哀の物語『夕霧名残の正月 由縁の月』。大金を手に入れた男が巻き起こすコメディを、松本幸四郎が愛嬌たっぷりに演じる『大當り伏見の富くじ』を上演する。

また夜の部では、歌舞伎三大名作『菅原伝授手習鑑』のなかでも特に人気の高い場を松王丸を仁左衛門(Aプロ)・幸四郎(Bプロ)、源蔵を幸四郎(Aプロ)・隼人(Bプロ)と組み合わせを変えて上演する『寺子屋』。誰もが知る『牛若丸』の物語を、獅童&獅童の息子・中村陽喜が演じる『五條橋』。鴈治郎や弟・中村扇雀などが出演する、近松門左衛門の心中物の代表作『心中天網島 河庄』では、4人の登場人物を「Aプロ」「Bプロ」でキャスト替えをして上演する。

『御名残五月大歌舞伎』の昼の部では、祝いの席の定番の舞を中村歌昇や中村米吉などの若手たちが舞う『寿式三番叟』。武将・木曽義賢の最後の戦いを、片岡愛之助が圧巻の立ち回りで見せる『源平布引滝 義賢最期』。年末恒例のドキュメンタリー番組『密着!中村屋ファミリー』でもおなじみの中村勘九郎&七之助兄弟が、鰯売と遊女の恋物語を明るいムードで見せる、三島由紀夫作の歌舞伎作品『鰯賣戀曳網』を上演する。

夜の部は、源平合戦で敵味方に分かれた兄弟+その家族たちの人間模様を、仁左衛門が円熟の演技で見せる『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』。落語『星野屋』を原作にした、主人と妾の心中をめぐる、サスペンスでいてコメディタッチの物語『心中月夜星野屋』。そして「仁左衛門が監修し、幹部クラスの俳優たちが総出演する」ということ以外、現時点ではシークレットとなっている『當繋藝招西姿繪』を上演する。

いずれの回もバラエティに富んでいるが、武士の話が多くてダイナミックな「荒事」の江戸歌舞伎とは違い、庶民の物語が多くて人間の機微を見せる「和事」が多い上方歌舞伎の作品か、あるいはその世界観に寄せた演目が多いという印象。初めて歌舞伎を観る人にあえて勧めるなら、王道であったり、おなじみの物語が多い『四月』の夜の部だろうか。舞踊や立ち回りが多く、視覚的に見ごたえのある作品がそろう『五月』の昼の部も楽しめそうだ。

現在の松竹座外観(提供:松竹株式会社)
現在の「大阪松竹座」外観(提供:松竹株式会社)

とはいえ、やっぱり大事なのはインスピレーション。「この俳優さんが気になるな」というチョイスで全然構わないし、むしろ歌舞伎ではそれが1番正解という気がする。数多くの歌舞伎作品を上演し、たくさんの人々に初めて歌舞伎と出合う機会を作ってきた(私もそのひとりだ)「大阪松竹座」。ひとりでも歌舞伎の魅力に開眼する人が増えて、大阪に歌舞伎小屋が戻って来る原動力になることを願っている。

『御名残四月大歌舞伎』『御名残五月大歌舞伎』は、両公演とも一等席2万6000円、二等席1万3000円、三等席7000円。チケットは2月22日〜発売開始。ほか詳細は公式サイトにて。

取材・文/吉永美和子

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