大阪で主演舞台…元宝塚 紅ゆずる今年は「たおやか」に?「ガイズ」観劇エピソードも

宝塚時代からコメディが得意な紅ならではの演技に注目! 大阪国際文化芸術プロジェクト 「姫が愛したダニ小僧」
1月9日に開幕した注目の大阪単独公演『姫が愛したダニ小僧』で、主演の存在感を発揮している元宝塚歌劇団星組トップスター・紅ゆずる。1998年初演の後藤ひろひと作・演出による名作ファンタジーで、「すみれ姫」と名乗る謎の女性を演じ、新境地を開拓中だ(1月18日まで「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」で上演)。
本作は老人介護ホームを訪れた夫婦、「ダニ小僧」との再会を願う「すみれ姫」、個性的な旅の仲間や凶悪なホーム職員などが登場する、時空を超えたラブストーリー。その開幕直前、紅に作品の魅力や、元タカラジェンヌ同士の絆、2026年の目標などを単独インタビューで訊いた。
取材・文/小野寺亜紀
■ ファンタジーな姫役を貫き通す「姫ダニ」

――『姫が愛したダニ小僧』は、紅さんの演じる「すみれ姫」が、かつて恋した「ダニ小僧」を探しながら、いろいろな人と関わっていく不思議なファンタジー。稽古を重ねるなかで、紅さんが感じている見どころは?
ファンタジー色が強すぎると、お客様の中にはついていけない方もいらっしゃると思うのですが、今回は現実とファンタジーがすごくいい具合にミックスされています。登場するキャラクターは、「なんでやねん」と状況に突っ込む人と、ファンタジーをひたすら演じ続ける人と、ふたつのタイプが存在。決して、夢物語すぎてついていけない、という感じではないんです。

――そのバランス感覚は、作・演出の後藤ひろひとさんならでは、でしょうか。
そうですね。大王(後藤)が「そんなことあるか!」と思いながら、書いていらっしゃるところもあるのではないかなと(笑)。無理にファンタジーに寄せた世界観、という感じではないのがおもしろいです。
――タイプがふたつに分かれるというキャラクターのなかで、紅さんの役柄は?
私は完全にファンタジーな姫、ファンタジーを貫き通す役です! そこに周りが突っ込んできてくれます。全体としては、単に夢夢しいだけではなく、お笑いというか、コント的な要素があちこちに散りばめられていて。逆に私は、そこが「ファンタジー」なんじゃないかなと思っています。「夢夢しさ担当」として、コントの中にいても、それをコントだと気づかないくらいの感覚を持っていたいな、と思います。

――なるほど。かなり独特な世界ですね。
この物語に出てくる国の設定として、私の中で勝手に考えているのが、すごくけなされても、実は褒められている、と受け取るのではないかなと。
――そういう捉え方もできるのですね。
そうなんです。水田航生くんが演じる祐一は、あちこちで突っ込む役柄で、仲間に対しても結構ズバズバ言う。普通だったら「なんてこと言うの!?」と彼に対してなるところを、私の役は「でしょう?」「そうなのそうなの」と、むしろ嬉しくなっている。そういう感覚が当たり前だと思って演じています。

――昨年主演された『FOLKER』に続く後藤さんの演出はいかがですか?
今回、マイクなしで舞台稽古を進めているのですが、音響効果の整ったドラマシティで、あえて使わないというのがすごいなと思います。大王(後藤)は、稽古場でも声の厚みや大きさを役者に結構アドバイスされるんです。その声を、ミキサーさん(音響)が調整すると、コメディのおもしろさがなかなか伝わらないと、大王はおっしゃっていて。マイクをつけている方もいるのですが、私はつけていないので、生のリアル感が伝わるだろうなと思っています。
――本作は大阪国際文化芸術プロジェクトの一環として上演。大阪にゆかりのある出演者が多数おられますね。
ある意味振り切っている世界観なので、さすが大阪で生まれた作品だなと思いました。笑いに振り過ぎていない、きちんと演劇としてお見せしているところが大好きです。お芝居の間やテンポ感などを心得た、技量のある魅力的な役者さんばかりなので、そのセンスもすごいなと思っています。ぜひ楽しんでいただきたいです。

■ 元星組トップスターの礼真琴と、思い出の宝塚作品を観劇
――紅さんは退団後も宝塚の後輩の舞台によく足を運ばれ、変わらず「宝塚愛」が深いなと感じています。紅さんの次に星組トップスターに就任し、2025年8月に宝塚を退団された礼真琴さんと、月組『GUYS AND DOLLS』を観劇されたのを、Instagramで報告されていましたね。
あれは、まこっちゃん(礼)が「さゆみさん(紅)と観に行きたい!」と誘ってくれたんです! 「私が退団したら、まず『GUYS AND DOLLS』を一緒に観てほしいんです」と、まこっちゃんが言ってくれたんですよ。
――そうなのですね! おふたりは2015年の星組公演『ガイズ&ドールズ』で、紅さんはネイサン役、礼さんは女性のアデレイド役を演じ、最後は幸せに結婚する役柄でしたから。
そう。私のトップ時代の相手役・あーちゃん(綺咲愛里)も誘った方がいいかなと、あーちゃんにも声をかけたら、「さゆみさん! 礼さんはさゆみさんの相手役を演じたから、一緒に観に行きたいとおっしゃっていると思うので、そこで私もご一緒するのはお邪魔だから、絶対ダメです!」と断られました(笑)。
――さすが綺咲さん! 退団後の礼さんとは、どんなお話をされましたか?
まず「卒業おめでとう」と「お疲れさまでした」と伝えて。観劇前に、退団後初めて彼女とランチをしたのですが、「宝塚を退団してどう?」と訊いたら、「わけわかんないです」と言っていました(笑)。その気持ちすごくわかります。

――紅さんも退団された2019年は、そうだったのですか?
はい。「ここはどこ?」と、玉手箱を突然開けた人のような気分。時間の流れ方が違いました。まこっちゃんに「知らない間に長い時間が経っていた、という感じやろ?」と言ったら、「そうです」と(笑)。「どうしたらいいか、わからんやろう? 何でも言ってきてね」と伝えました。私もいまだにわからないところはあるけれど! でもそれが、タカラジェンヌの素養なのかな。たぶんわかっていたら、あんな夢物語は届けられないんじゃないかと思います。
彼女は武道館コンサートも成し遂げたトップ。柚希礼音さんもそうでしたけど、やっぱりすごいなと思っています。
――礼さんの武道館コンサートにも駆けつけてらっしゃいましたね。
武道館が「ちっさ!」と思いました。それぐらいすごかった。彼女以外の星組の組子たちも素晴らしくて。私はあのコンサートを観て、「この子たちに支えてもらってたんや。ありがとうございました」という気持ちになりました。
■ 大活躍の2025年を経て、新たな目標を立てる
――2025年、紅さんは7本の舞台にご出演されるなど、大変多忙な日々だったのではと思います。
なんなんでしょう、ちょっとワケがわからない感じです(苦笑)。昨年の『吉本新喜劇presents末成歌劇団特別公演』で共演した、末成映薫姉さんは、『姫が愛したダニ小僧』の初演で同じ役(老婆)を演じてらっしゃっるんですよ!

――『アンタッチャブル・ビューティー〜浪花探偵狂騒曲〜』でも共演されていましたね。
すごいご縁だなと思います。いつも「ちゃんとご飯食べてる?」とか聞いてくださって、可愛がっていただいています。『FOLKER』もそうですが、吉本さんとのお仕事が多くて、最近、吉本興業所属だと間違われることも(笑)。
――吉本新喜劇を観て育った、とおっしゃっていましたよね。
そう、ありがたいです!
――2026年の目標もぜひお聞かせください。
目標は、私に欠けているであろう「たおやかさ」を身につけることです。やっぱり男役出身なので、スパッとした役はやってきた感覚はあるけれど、もう一段階、根本から身につけたいものがあるなと感じていました。

それに、尾上菊之丞さんの公演にこれまで2度出演させていただき、またご縁があるかもしれないので、日本舞踊を今年から始めようと思っています。
――本格的に始められるのですね!
はい。菊之丞さんに「日本舞踊を教えていただきたいです」とお伝えしたら、喜んでくださったけれど、すごくお忙しい方なので、「夏までは、きっちり時間を取れないかもしれないから、松本幸四郎さんに相談していいかな?」と言われて。それで、私のお兄ちゃん的存在の「おにーにー」(松本幸四郎)にたずねると、「(菊之丞さんは)なんで僕に相談してきたんだろう」と言っていました(笑)。
まだ誰に教わるのかはわからないのですが、私の周りには中村壱太郎さんにしろ、家元のお知り合いが多いので、お願いしてみようかなと!

――昨年末には岩長姫役で、菊之丞さん構成・演出の舞台(詩楽劇『八雲立つ』)に立たれていたので、それも活きてきそうですね。
姫役はそれが初めてでした。今回の舞台も「姫」で「ダブル姫」です(笑)。「好きこそものの上手なれ」ではないですけど、周りに先生がたくさんいらっしゃるので、新しい幅を広げていきたいなと思います。

◇ ◇
『姫が愛したダニ小僧』は「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」で1月18日まで上演中。全席指定7000円。チケット発売中。
紅は5月、世界的にヒットしたフランスの同名映画を初ミュージカル化する『最強のふたり』にも出演。東京・大阪・愛知で上演される。川平慈英と浦井健治のダブル主演作。
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