花組・永久輝せあ、宝塚初のドイツミュージカル『ゲーテ!』開幕

11時間前

若きゲーテ(永久輝)から溢れ出る言葉が、歌やセット、ダンス(ウェルテルダンサーは宇咲瞬)などさまざまな形で舞台を彩る

(写真5枚)

「ゲーテ! ゲーテ!」。キャッチーなメロディーが終演後も耳に残る、ほぼ全編歌でつづられたドイツミュージカル、『A New German Musical「Goethe(ゲーテ)!」』が日本初上陸。

11月の東京公演を経て、12月1日に「梅田芸術劇場メインホール」(大阪市北区)で開幕、宝塚歌劇団花組トップスター・永久輝せあ(とわき・せあ)、花組トップ娘役・星空美咲(ほしぞら・みさき)を中心に情熱的に届けた。

本作のオリジナルは、2021年夏に初演、ドイツミュージカルシアター賞で3部門を受賞した同名作。ドイツの文豪ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテが、名作『若きウェルテルの悩み』に込めた自身の若き日の恋と、作家としての矜持や苦悩が、ポップでアップテンポな音楽に乗せて描かれている。

まず、30曲におよぶ楽曲の壮大な迫力と、それを歌いこなしていく出演者のスキル・熱量に圧倒される。「若きゲーテ」を演じるのは、2024年トップに就任後、大劇場公演では天使や、ドラキュラ伯爵の血を引くキャラクターなど異色の役が続いていた永久輝。

詩作の才能を周囲に認めてもらえず、偶然出会ったシャルロッテ(ロッテ/星空)との愛に歓び苦悩する、人間味あふれる未熟な青年をエモーショナルな歌声で表現している。

ゲーテ(永久輝)の詩を全身で受け止めるロッテ(星空)。魂と魂で結びついたようなふたりの行く末は――
ゲーテ(永久輝)の詩を全身で受け止めるロッテ(星空)。魂と魂で結びついたようなふたりの行く末は――

歌詞にはゲーテの文学作品から引用した言葉が散りばめられ、その生き様に、人生の奈落へと落ちる脆さや、どん底からはい上がっていく強さ、生きる意味を教えられる。

日々さまざまな言葉が飛び交う現代に、人生の核心を突くゲーテのような人物がいたら、時代のスターになるだろうと感じさせる未知数のカリスマ性も、永久輝はステージ上に立ち上げた。

ゲーテの才能に気づく感受性豊かなロッテ役の星空もまた、永久輝同様、高い歌唱力と情感の持ち主。愛を歌い上げるふたりのハーモニーの心地良さはもちろん、本作で女性のマルガレーテを演じた男役の美空真瑠(みそら・まる)とのデュエットも秀逸だった。

その妖艶な人妻のマルガレーテに、道ならぬ恋をしてしまうのが、聖乃あすか(せいの・あすか)扮するヴィルヘルム。ゲーテとともに法律を学ぶ明るい青年の奥にある、儚い側面を聖乃は繊細な表情も見せて好演した。

出会ってすぐに意気投合するゲーテ(永久輝)とヴィルヘルム(聖乃)。ふたりの友情がゲーテの名作を生むきっかけにもなる
出会ってすぐに意気投合するゲーテ(永久輝)とヴィルヘルム(聖乃)。ふたりの友情がゲーテの名作を生むきっかけにもなる

また、ゲーテが学ぶ地方裁判所の有能な弁護士で、ロッテを愛するようになるアルベルト役の侑輝大弥(ゆき・だいや)が、素晴らしい存在感でゲーテの人生を左右する役どころを的確に演じている。

ゲーテの名作『ファウスト』から抜け出てきたにしては蠱惑的すぎるメフィストフェレス役を、夏希真斗(なつき・まなと)が長身を活かしたダンスと歌で魅せ、ショーナンバーを盛り上げる。その場面を含め、ドイツのバレエ団出身である大石裕香・森優貴のきめ細やかな振付がドラマ性を高めた。

日本語脚本・訳詞・演出を手掛けたのは、ドイツ留学経験がある演出家・植田景子。11月30日の公開舞台稽古後におこなわれた取材会で植田は、宝塚がウィーン・ミュージカル『エリザベート』を初めて日本で上演してきたことなどに触れ、「最先端を目指してきた宝塚の諸先輩方の歴史をリスペクトしています」とコメント。新たな扉を開いた。

さらに永久輝は、「本当に素晴らしい作品だと心から思っていますし、この作品との出合いは私の宝塚の人生においても幸せな出来事だと思っています」と充実した表情で語った。本作は同劇場で12月11日まで上演。7日15時半公演は、全国映画館でのライブビューイングと全編ライブ配信がおこなわれる。詳細は公式サイトで確認を。

取材・文/小野寺亜紀

宝塚歌劇花組 梅田芸術劇場メインホール公演 A New German Musical『Goethe(ゲーテ)!』

日程:2025年12月1日(月)~12月11日(木)
会場:梅田芸術劇場メインホール(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:SS席12500円、S席9000円、A席6000円、B席3000円
 

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