まだ動いてた!昭和の名物「風船自販機」、世代を超えてふくらむ笑顔

2時間前

遊園地「とくしまファミリーランド」の風船自動販売機(写真提供:とくしまファミリーランド)

(写真3枚)

昭和の時代、デパートや遊園地などでよく見かけた「風船の自動販売機」。子どもたちの憧れの存在だったが、今では姿を探すほうが難しく、ほとんど見かけなくなってしまった。

そこで調べてみると、徳島県の遊園地「とくしまファミリーランド」、高知県の遊園地「わんぱーくこうち プレイランド」、奈良県の「生駒山上遊園地」(※12月1日〜2026年3月上旬は冬季休業)、室内遊園地「あそびマーレ」(大阪・東京・神奈川)に、稼動している風船自販機を発見した。

■「現役で頑張ってます!」レトロでも健在、笑顔ふくらむ風船自販機

自販機では汽車がデザインされた風船が購入できる(写真提供:とくしまファミリーランド)
自販機では汽車がデザインされた風船が購入できる(写真提供:とくしまファミリーランド)

「とくしまファミリーランド」広報担当・中川さんによると、小さな子どもの利用はもちろん、SNS用に動画撮影する若者の姿も見られるという。

利用客からは、「小さい頃デパートにあったけれど、すぐ飛ばしちゃうから買ってもらえなかったの」(70代)と昔を懐かしむ声や、「汽車の絵が描いてあるので遊園地に来た思い出に毎回買って帰っています」(20代)というリピーターの声も。また、「膨らむ時の大きな音がちょっと怖かった」(3歳)など、レトロな機械ゆえの感想も耳にするようだ。 

時には風船が割れてしまうなどのハプニングもあり泣いてしまう子どももいるというが、「すぐに新しい風船をご用意できるようにしております」と中川さん。「風船を手にした時のお客さまの笑顔を絶やさないよう、日々メンテナンスを怠らず長く販売していきたいと考えております」と、強い思いを語ってくれた。 

高知県の動物園「わんぱーくこうちアニマルランド」の風船自動販売機(提供:わんぱーくこうちアニマルランド)
高知県の遊園地「わんぱーくこうち プレイランド」の風船自動販売機(写真提供:わんぱーくこうち プレイランド)

また、高知県の「わんぱーくこうち プレイランド」では、コロナ禍でヘリウムガスの入荷が減り販売を一時中止。最近は仕入れが安定したため再開することができたという。

このマシンでも風船が破裂することがあり、「驚いて泣き出すお子さんもいれば、思わず笑ってしまうお客様もいます。見た目に反して、膨らむまで意外とスリルのある販売機なんです」と担当者は苦笑しつつも「古い機械ですが、まだまだ現役で頑張っています!」とアピールしてくれた。

■まだ製造されているのか?

調査を進めると、今回見つけた風船自販機はすべて京都の機械メーカー「池本車体工業」が昭和頃に生産したものだった。同社に当時の様子を訊いてみた。

「タダでもらうもの」だった風船を自販機に、売上は右肩上がり

「池本車体工業」が1975年に自社製品として製造をスタートした風船自販機「FANKY MALLOON」。「風船は当時、銀行でタダでもらうものという風潮があったため、パフォーマンス要素を含んだ風船自販機はお客さんの心を掴んだようです」と、営業担当の岸田さんは振り返る。

販売当初は数カ月で50台を出荷するなど売り上げは好調。1979年にはアメリカを中心として海外輸出が活発になり、ピーク時で500台を輸出した記録も残るほどだ。

風船需要の低下から、自販機は絶滅寸前の危機に・・・

しかし、その好調は長くは続かなかった。岸田さんはその背景について、「当初爆発的に広がった風船自販機でしたが、一般化してしまったため、珍しさ・需要がなくなったことが考えられる」と指摘。

さらに「昔は縁日などで風船を見かけることもありましたが、最近ではあまり見なくなり、風船自体の需要がなくなったことも理由の一つとして考えられています」と、寂しさをにじませた。

現在は新規製造はしていないそうで、中古品を分解、部品の交換等をおこない、新しく組み立て直すオーバーホールをおこなったものになるという。販売価格は税別30万円。その他にヘリウムガスボンベや同社の風船が必要ということだ。

近年の受注台数はというと、残念なことに、2025年は無し。2024年は、中古品1台の出荷があったという。

しかしながら、「新しいモデルの風船自販機も考え中」と岸田さん。新しく誕生するかもしれない令和の風船自販機にも期待だ。

風船需要の低下とともに数を減らし、いまや希少な存在となった風船自販機。それでも現存するものは大切に守られ、世代を超えて笑顔を届け続けている。

取材・文/Lmaga.jp編集部

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