「当たり前の風景が…」大阪で唯一駅構内の新聞雑誌スタンド最後の1日、昭和の面影またひとつ…

11時間前

スタッフを代表して、長年勤めた女性が谷口副駅長からの感謝の花束を受け取った(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

(写真10枚)

近鉄大阪阿部野橋駅(大阪市阿倍野区)構内の4番ホームで、長年営業を続けてきた、新聞・雑誌のスタンド売店が、2025年12月25日に営業を終了した。昭和の面影を残す風景が、大阪からまたひとつ消える。

西口改札は言って右側にありました(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

毎日16時になると、木製の台を組み立て、その上に雑誌や新聞、書籍などをズラリと並べる。そんなスタイルで、同駅を利用するサラリーマンらを迎えてきた。

同じく地下の店舗も閉店、張り紙が掲出されていた(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

近畿日本鉄道の広報担当者によると「自分たちにとって当たり前の風景でした。いつから営業していたか正確な記録は残っていないんです」ということだが、少なくとも60年以上は営業をこの場所で続けてきたようだ。しかし、時代は流れ、新聞や書籍の販売数は減少の一途。売店も惜しまれながら閉店することになった。

古い写真にも、スタンド売店の存在が確認できた(写真提供:近畿日本鉄道)

◆ クリスマスに笑顔と涙の最終営業…常連客や関係者が続々訪れ

お客さんとにこやかにお話するスタッフ、常連さんとの会話がはずむ。「電車どっち乗ったらいい?」などお客さんからの質問にも答えてきたという(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

クリスマスで賑わう天王寺。「金曜日は雑誌の発売が少ない曜日」ということで、月曜日から木曜日まで営業するこの場所で、60年以上続いた店舗が最終日を迎えた。この日は、常連客や、関係者などが次々訪れ、スタッフに感謝の言葉を伝え談笑したり、差し入れや手紙を渡したり。温かい雰囲気に包まれたラストデイとなった。

谷口副駅長が花束を贈呈し、記念撮影(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

同駅の谷口副駅長から、長年スタンドで明るい接客を続けてきたスタッフに花束が贈られ「時代の流れとはいえ、とてもさみしく残念。これまで続けてきてくださったスタッフのみなさんに感謝申し上げます」とこれまでの労をねぎらった。

運営会社の石原社長とスタッフが店の前で感謝を込め、頭を下げた(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)
スピーチする谷口副駅長(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

運営元の「親栄会」の石原社長によると、売店では81歳の社長の母ふくめ3人のスタッフがローテーションして勤務していた。通勤のサラリーマンがよく利用していることから、売れ筋は「マガジン」や「サンデー」「ヤングジャンプ」など漫画雑誌。そのほか、新聞や、カレンダー、書籍なども扱っていた。

新聞や阪神の2026年カレンダーなども扱っていた(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

スタッフの一人は、「お客さんとの会話が楽しくて。人間ウォッチングもできる面白い職場でした」と笑顔で振り返り、別のスタッフは「本当にさみしくて。でも最後にこうしてみなさんに来てもらって、花束をいただいたり、声をかけてもらったり。ご褒美ですね」と涙で語った。

スマートフォンで漫画を読む人が増え、また雑誌を買うにも同駅構内には、「ファミリーマート」もある。まさに時代の流れにより、阿部野橋駅の「当たり前の風景」が消えるわけだが、このような駅構内で営業する雑誌スタンドは、関西では最後の店舗だった。「親栄会」が運営する複数駅に設置している新聞の自動販売機は今後も継続する。

取材・文・写真/Lmaga.jp編集部

当たり前の駅の風景も見納めに(2025年12月25日 近鉄大阪阿部野橋駅 Lmaga.jp編集部撮影)

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