人気の「ぷっくりシール」を手作り…SNSで蔓延する方法が危険!?

2025.12.16 11:30

ブームとなっている「ボンボンドロップシール」や「ぷっくりシール」。1シート500円以上するものも(筆者撮影)

(写真3枚)

「子どもらのぷっくりシール界隈に伝わるといいのですが…」と、「シール帳」「シール交換」が人気のため、小学生女子が危険に陥るかもしれない状況に、警鐘を鳴らしたXでの投稿が話題に。

その危険とは、「レジン」を使って、ぷっくりと立体的なシールを自作すること。歯医者での治療に影響する可能性があるとのことで、歯科医師にも取材しました。

今回、投稿したのは天然石のアクセサリー作家であるCittaさん(@Citta_tokyo)。株式会社クーリア(本社:大阪市中央区)がつくるプクッと膨らんだシールや、厚みがあってキラキラクリアな「ボンボンドロップシール」が人気で手に入らないなど、若い世代を中心にブームになっているなかで、小5の姪っ子さんと一緒に買い物へ。

そこで初めてぷっくりシールを見て、1シート500〜700円という高価格に驚いたそう。その後、100均に行き、同様のシールを一緒に探していたところ、姪っ子さんが驚きの話をしたのです。

その内容は「友だちと一緒に長時間に渡って部屋にこもり、ぷっくり感を再現するために素手で平たいシールの上に100均のレジン液を盛り、ラメを入れたりして硬化する作業をしていた」というもの。

その話を聞いたCittaさんは、レジン作家さんが制作の際に留意していることや備えなどを思い出し、心配になってその場でレジンコーナーに一緒に行くことに。

「作業中の換気の必要性」「素手で扱わないこと」「レジン液やライトに目を近づけないこと」など、レジン液パッケージの裏側の注意書きを復唱し、吸い込むことも触ることも危険なものであることを伝えました。

すると姪っ子さんは「友だちもみんな知らない!教えてあげよう!」と話していたそうです。

そんなCittaさんの投稿には数多くの体験談が寄せられました。

■レジンの危険性、実感する体験談が続々

今や、SNS上では人気シールの在庫情報や交換・収集にまつわるトラブルについての投稿などもしばしば目にします。特に、立体感がかわいい「ボンボンドロップ」であれば入手困難。なんとかして、同じようなものをという気持ちも分かります。

Cittaさんの話を聞き、ぷっくりしたシールのなかでも人気の「ボンボンドロップシール 作り方」と検索するとたくさんのサイトがヒット。SNS上でも製作過程動画が数多くアップされており、その多くが「平たいシールにレジン液をのせて硬化させる」という方法でした。

危険をともなう情報が広まるなか、少しでも正しい知識が広まればという思いを話してくれたCittaさん。

「私は専門外なので、レジン作家さまのどなたかがもう注意喚起しているかもなのですが…。姪は少しアレルギー体質なこともあり、とても心配に思い投稿いたしました。

100均のレジンが悪いわけではなく、『子どもの手にもお財布にも届きやすい』『親に専門的な知識がないのに危険物である』という状態が問題だと思うんです。レジンは正しく使えば素晴らしい作品へとなりうる素材です。なので“良いもの”として広まって欲しいです」

レジン使用歴のある方々も、続々と体験談を共有。みなさん、レジン素材の汎用性や創作への活用に期待を寄せる一方で、子どもが使用する際の注意や、レジンによるアレルギーの発症例などについて綴っています。

「手袋の届かない手首が猛烈にかゆくなる・マスクをしても強烈な喉の痛み数日続く……という症状がレジン使っている時必ず起こり、これはヤバいとまだ新品のボトルもあったけど処分」
「大人でも知らない人多いし、ましてや小学生なんか親が作り手じゃない限りは知らないよね」
「固まる前のレジンは有毒です。固まるまでは素手で触れたらダメ(私はニトリル手袋使ってます)。長く触るとアレルギー出る人もいて、そうなれば歯医者さんとかで大変な目に遭う事も」
「マスクも付けずに至近距離でレジン使ってるシール界隈の動画もあるので、本当に危ないと思います…真似してやりたいと言う子も多いと思います。恐ろしいことに『水を固める』と形容する方にも会った事も…せめて100均のレジン液売り場には注意喚起のPOPつけてほしいなと思ってます」
「『封入物の量に気をつける』にも言及したいです。着色剤やラメをたくさん封入した場合、UVライトの光が中まで届かず未硬化になりやすく、後からレジンが滲み出す場合があります。なににせよレジンを使う際は親御さんの管理の元扱うことをお勧めします」
「お子さんは粘土くらいの感覚だったのかな レジンはアレルギーを起こすようになってしまうと歯科治療の補綴(詰め物や被せ物)も材料が限られちゃうし、市販されてるけども危ないものなのよねぇ」

小学生から大人にまで広がるシール人気。特にぷっくりとした立体的なシールが人気だが、入手困難に。そのため、自作する人も
小学生から大人にまで広がるシール人気。特にぷっくりとした立体的なシールが人気だが、入手困難に。そのため、自作する人も

多くの体験談が寄せられている中で、気になったのが「アレルギーが出ると歯科治療に影響が出る」ということ。

子どもだけでなく、大人になっても歯科治療はとても身近な医療です。そこで、歯科治療とレジンの関係性やアレルギーについて、東京都港区新橋にある「ヘルシーライフデンタルクリニック」院長で歯科医師・博士(歯学口腔内科学)の手塚充樹さんにお聞きしました。

■レジンは現代の歯科医療に欠かせない素材

――歯科治療では、どのような場合にレジンの使用を?

レジンは、歯科では非常に幅広く使われています。特に、白いプラスチックの詰め物(コンポジットレジン修復)として、一般的に使用されています。

また、被せ物や詰め物を歯に接着するための「のり」のような役割や、仮歯(テンポラリークラウン)を作る際の材料としても使われています。

さらに、金属のフレームに白い樹脂を盛り付けて自然な見た目にする場合や、義歯(入れ歯)の修理・補修などにも使われることがあります。

レジンは「歯を修復する・接着する・見た目を整える」など、現代の歯科治療に欠かせない素材のひとつです。

――子どもと大人の治療で、レジンの使い方に違いなどは?

基本的には、子どもの治療と大人の治療でレジンの使い方や目的に大きな違いはありません。

ただし、年齢によって歯の状態や環境が異なるため、注意点や使用範囲には差があります。

小児期では、乳歯や生えたばかりの永久歯にできたむし歯の修復に、光で硬化させるタイプのコンポジットレジンが主に使われます。

成長期の歯はやわらかく、再発を防ぐことも重要なため、歯を削る量をできるだけ少なくしてレジンで補う治療が多く行われます。また、まれに矯正装置の固定や小児用の義歯などでもレジンが使われることがあります。

一方で、成人以降の治療では、補綴や接着、見た目の改善など、より幅広い目的でレジンが使われています。詰め物や被せ物の接着、仮歯や入れ歯の修理、見た目を整えるための治療などがその例です。

子どもの場合は主にむし歯の修復材として、大人では修復や接着、審美的な目的など多面的に活用されていると言えます。

レジン液のラベル。注意事項が挙げられています(筆者撮影)
レジン液のラベル。注意事項が挙げられています(筆者撮影)

――院内でレジンを扱う際はどのような装備を?

必ずグローブを着用しており、診療中はマスクも常に着用しています。作業時には、未硬化のレジンが皮膚に直接触れないように配慮し、硬化後の清掃や研磨の際にも粉塵が飛ばないよう注意を払っています。

硬化して安定した状態では、アレルギーが起きる可能性はかなり低くなるといわれています。一方で、硬化前の状態ではまだモノマー成分が残っており、皮膚や粘膜に触れると刺激となる場合があります。

――万が一、レジンアレルギーが出た場合、どのような症状が?

レジンアレルギーの多くは、レジンに含まれるメタクリレート系の成分に対する接触性のアレルギー反応です。この反応は、すぐに起こるものではなく、何度かの接触を経て体が過敏に反応するようになる「遅延型アレルギー(IV型アレルギー)」と呼ばれるタイプです。

気づかないまま口の中にレジンを使った治療を受けたり、未硬化のレジンが皮膚や粘膜に触れたりすると、以下のような症状が出ることがあります。

<口腔内の症状>
口の中や唇の腫れ・赤み、かゆみ、灼熱感・ヒリヒリ感、粘膜のただれや潰瘍、口内炎様の症状、味覚異常を伴うことも

<皮膚の症状>
接触部位の湿疹・発赤・かゆみ、手指や顔への湿疹(ネイルやアクセサリーの場合) 、まれに全身性の皮膚炎に拡大することも

症状は接触後12〜48時間程度で現れることが多く、すぐには気づきにくいのが特徴です。

――症状が出た場合の対応は?

まずはかかりつけの歯科医院に相談してください。歯科医師は使用した材料の種類や成分を確認できます。また、症状の経過から原因を推測できます。必要に応じて皮膚科や口腔外科への紹介を行います。

アレルギーの確定診断には、皮膚科でのパッチテスト(貼付試験)が必要です。これにより、どの成分に反応しているかを特定できます。

――他の素材での歯科治療は可能?

アレルギーが確認された場合、以後の歯科治療ではメタクリレートフリーの材料、セラミックや金属などの代替材料を選択することで、安全に治療を受けることができます。早めに相談し、アレルギー情報を共有しておくことが重要です。

◇   ◇

想像以上にレジンが歯科治療に必要不可欠な素材であり、医療の現場で欠かせないものであることがわかりました。

また、厚生労働省の2023年度の「家庭用品に係る健康被害の年次とりまとめ報告」によると(※)、「アクセサリー製作用レジン(樹脂)材料(非金属製品)」の事例として、10歳代女性が「アレルギー性接触皮膚炎」と診断され、顔に皮疹が生じ、治癒した件が挙げられています。

アクセなどをはじめ、レジンは素敵で魅力的な仕上がりが期待できる素材で、「買えないなら作ってみよう!」と考える子どもたちの好奇心ややる気をサポートしたくなるのも当然です。しかし、アレルギーを発症してからでは、身近な歯科治療をはじめ、困り事が増える懸念も。

Cittaさんが注意喚起されていたように、趣味やクラフトなどの場面で正しい装備や環境で安全に使えているか、レジンを扱う際の注意点についてあらためて親子で確認することが必要です。

(※)2023年度 家庭用品に係る健康被害の年次とりまとめ報告(令和6年11月 厚生労働省医薬局 医薬品審査管理課化学物質安全対策室)

取材・文/太田 真弓

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