カタコトの週タイトル、どう決めてる?「トオリ、スガリ。」にこめた思い

59分前

『ばけばけ』第48回より。トキとおしゃべりに興じる小谷に苛立ちをおぼえるヘブン(トミー・バストウ)(C)NHK

(写真4枚)

『ばけばけ』(NHK総合ほか)は毎週、週タイトルが面白い。今週放送された第10週のタイトルは「トオリ、スガリ。」。

このカタカナ表記で「片言」の週タイトルは、本作のモデルである小泉セツさんと小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の共通言語で、単語は日本語、文法は英語に即した「ヘルンさん言葉」に倣っている(ちなみに「ヘルンさん」とは、セツさんをはじめハーンに近しい人たちが「Hearn」を日本語読みした愛称である)。

■ ただの「トオリ、スガリ。」の異人

第10週で、松江を襲った未曾有の大寒波により風邪をこじらせ、気管支炎で寝込んでしまったヘブン(トミー・バストウ)。トキ(髙石あかり)は彼を必死に看病するが、なかなか病状はよくならず、ヘブンは自分が死ぬのではないかと思い込んで、すっかり弱気になってしまう。

病床に伏すヘブンは第48回で、トキに「たとえ死んでも悲しまないでください。私はただの・・・通りすがりの、ただの異人です」と告げた。

『ばけばけ』第48回より。(C)NHK
『ばけばけ』第48回より。「私はただの通りすがりの異人」とヘブンに言われて心中複雑なトキ(髙石あかり)(C)NHK

「トオリ、スガリ。」は、この台詞に関連づけた週タイトルであり、世界各地を彷徨い歩いた末に日本の島根県・松江にたどり着いたヘブンの「誰とも深く関わらない」という覚悟と、孤独が伝わるタイトルだ。

第10週のタイトルにこめた思いと、毎週の週タイトルはどうやって決めているのかを、制作統括の橋爪國臣さんに聞いた。

■「ネタバレせずにその週の核心に触れるタイトル」に一苦労

橋爪さんは週タイトルの決め方について、「結構、毎週迷うんです」と話し、こう続ける。

「展開が読めるようなタイトルにはできないし、かといって全く内容と関係のないおどけたことをやっても面白くない。その週の核心に触れつつも、ネタバレしないタイトルを考えるのが毎週一苦労で。

週タイトルを考えるのは、台本が上がった段階ではなく、その週5回ぶんの映像の編集が終わってから。スタッフ間で完パケを観て、『今週はこうだったね』とみんなで話し合ってから、僕と、その週の担当演出が案を出し、最終的にふじき(みつ彦/本作の脚本家)さんに意見をうかがって決めています」。

『ばけばけ』第48回より。(C)NHK
『ばけばけ』第48回より。寒さにあてられ、気管支炎になってしまったヘブン(トミー・バストウ)(C)NHK

また、今週の週タイトル「トオリ、スガリ。」については、「ヘブン自身の人生を表す言葉でもあるし、それを受け取ったトキの思いも含ませています。第10週では小谷(下川恭平)がトキに恋する姿が描かれましたが、彼らの関係もまた、通りすがり。

いろんな人の人生が『通りすが』っていくなかで、それぞれの人物がどこにどう『はまっていく』のか。『定住することのできない人たちの物語』ということで、このタイトルをつけました」とコメントした。

『ばけばけ』第50回より。(C)NHK
『ばけばけ』第50回より。トキへの恋に一方的に盛り上がり、一方的に「ごめんなさい」を告げる小谷(下川恭平)(C)NHK

■「週が終わればリセットして新しいエピソードを」とはしたくない

第10週でフォーカスされた「通りすがり」というテーマは、次週・第11週の内容にもつながるという。第8週から第9週、2週にわたって描かれた「スキップ」しかり、なんとなくこのドラマは「2週で1エピソード」という構成になっているような気もするのだが・・・。橋爪さんはこう説明する。

「特に『2週で1エピソード』というつもりはいないんです。ただ、毎週『これまでの流れを汲んで』という考えで作っています。視聴者の皆さんに、週ごとに『1週間観終わったな』という気分にはなっていただきたいので、もちろん1週間・5回の起承転結は考えます。

でも、1週1週が独立した、『今週この話が終わったら、リセットして次の週に新しいエピソードを』というふうにはしたくないと思っていて。ひとつの出来事を引きずるからこそドラマだと思うし、なかには本筋の後ろで何週にもわたって走っているサブストーリーもあります。スキップは、この先も比較的長く出てくると思います」。

次週、第11週「ガンバレ、オジョウサマ。」では、ヘブンの過去が描かれるという。まだまだ謎に包まれているヘブンの来し方。第5週で江藤知事(佐野史郎)が言った「危ない橋」という言葉が意味する錦織(吉沢亮)の経歴。リヨ(北香那)の恋の行方。母・タエ(北川景子)に「社長になった」と嘘をつき続けている三之丞(板垣李光人)の職探し・・・これらはどう展開していくのだろうか。『ばけばけ』の世界を生きる人たちの物語の行く先を、見守りたい。

取材・文/佐野華英

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