橋本愛が名セリフ…オタクの説得で「プロジェクト写楽」が前へ【べらぼう】

43分前

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。絵師・喜多川歌麿(染谷将太)に頭を下げる重三郎の妻・てい(橋本愛)(C)NHK

(写真11枚)

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。11月23日の第45回「その名は写楽」では、松平定信の仇討ち計画のために、重三郎が「写楽」の絵を売り出すことに。SNSはその完成に至る紆余曲折に一喜一憂するとともに、蔦屋の女房・ていの大金星に喝采することになった。

■ 「源内生存説」を流布するには…第45回あらすじ

「傀儡好きの大名」の仇討ちを企てた松平定信(井上祐貴)は、彼の犠牲となった平賀源内(安田顕)が実は生きているのではないかと、世間を騒がせるよう重三郎に要請した。それを聞いた妻・てい(橋本愛)は、どうせならうんと贅沢でふざけた騒ぎにすることを提案。

芝居町で、歌舞伎役者たちの素顔が見られる「曽我祭」が開かれると聞いた重三郎は、源内が描いたと思われそうな役者絵を発表することをひらめき、定信もそれを承諾した。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。一橋家に再び奉公をしたいと訪ねてきた大崎(映美くらら)(C)NHK

その頃「傀儡好きの大名」こと一橋治済(生田斗真)は、実の息子である将軍・徳川家斉(城桧吏)にさらにたくさんの子どもを生んで、一橋家の血脈を日本中に広めることを強いるようになり、幕府の財政にも口を出しはじめた。

家斉や幕臣たちが治済のたちの悪さにようやく気づきはじめたその頃、治済の指示で様々な裏工作を仕掛けていた家斉の乳母・大崎(映美くらら)が治済の前に現れ、再び奉公がしたいと願い出てきた・・・。

■ 今作の最高到達点「写楽」誕生の瞬間へ

紫式部を主人公にした前回の大河ドラマ『光る君へ』は、やはり『源氏物語』が誕生したときのSNSが最高にフィーバー状態となった。それと同じように今年の『べらぼう』も、蔦屋重三郎が売り出した謎の絵師・東洲斎写楽の登場が一番盛り上がるだろうと、誰もが予想した。

そして! ついに!! この第45回で「写楽」の名前が出てきたが、それは数多くの悲劇を生み出した一人の悪党を成敗するために、松平定信が言い出しっぺとなった一大プロジェクトXだったとは、誰が予想できただろうか・・・。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。重三郎に協力してほしい内容を伝える松平定信(井上祐貴)(C)NHK

まず重三郎が「源内先生にしか書けない」と思った戯作、実は三浦庄司(原田泰造)の証言を元に定信が描き下ろしたものだった。先週のコラムで「もし定信がアレを書いたのなら、重三郎即座にスカウトだ!」と冗談で書いたのだが、まさか正解だったとは・・・

SNSでも「ふんどしが書いたのか。やるやん、さすがオタク」「すげえな定信くんの妄想力を形にできる強火なオタク力」「蔦重が一言も感想を言ってくれなくて、定信ちゃんがきっと布団に向かって声を押し殺して泣いたと思う人、挙手!」などの称賛と心配? の声があふれた。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。絵師や戯作者たちを集める重三郎(横浜流星)(C)NHK

そして、第11回のときに重三郎と関わった歌舞伎役者・市川門之助(濱尾ノリタカ)から、「曽我祭」(これも仇討ちの話!!)が開催されると聞き、役者の素顔を描いた似絵(ブロマイド)を、「作:平賀源内」という噂話とセットで売り出すというアイディアが降臨。

定信の依頼通り世間を騒がせることができるし、芝居界隈も盛り上がる。これは重三郎の脳内に、久々に熊さん(山根和馬)と八っつぁん(阿部亮平)が登場するほどの「そうきたか!」だ。

SNSでも「久々の八っつぁん熊さんが出る蔦重シミュレーション」「蔦重脳内劇場も随分と久しぶりだな、アイディアが閃くこと自体が久しぶりだ」「よみがえる重三のひらめき妄想」「イベント限定ブロマイド商法〜!」「一石三鳥の祭りじゃな! 蔦重も源内先生のおかげで本調子に戻ったね」「源内先生・・・あの世から意次様と一緒に見てますか・・・あなたの志がこうやって受け継がれてすんごい展開になってますよ」と感激の声が上がっていた。

■ 写楽=蔦重ファミリーの合作!現場は難航

というわけではじまった「平賀源内再現プロジェクト(仮)」は、まぁさんこと朋誠堂喜三二と重三郎のアイディアで「写楽」という名前に正式決定。

1人の画家ではなく、複数の覆面作家が生み出した存在という結論に「この世の楽を写す・・・アベンジャーズによるチーム東洲斎写楽、爆誕」「写楽=蔦重ファミリーの合作と言うことにするとな!」「なるほど写楽はCLAMP的なやつか」「あのとき出来なかった源内先生の供養をしてるみてぇでワテ泣けてくるんですけどぉ」など、SNSもまさに「そうきたか!」の嵐に。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。重三郎の企画に盛り上がる戯作者たち。写真左から、朋誠堂喜三二(尾美としのり)、大田南畝(桐谷健太)、唐来三和(山口森広)、宿屋飯盛(又吉直樹)(C)NHK

そうしてはじまった「プロジェクト写楽」だけど「蘭画のテイストを取り入れて、役者の素顔をありのままに描く」という、誰もいまいちイメージが沸かない世界を作り出すのは、やはり至難の技だった。

あまりの重三郎のダメ出しの嵐に、ついに北尾重政(橋本淳)がキレてしまったが、なぜかSNSは「編集蔦重のリテイク連発にキレる現場チーフ重政」「あーっ、重政先生キレた! あの温厚な重政先生が!」「あんだけ優しさの塊の重政先生が?!」と、なぜか今回トップ3に入るほど盛り上がっていた。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。ダメ出しの多い重三郎(写真右、横浜流星)に反論する絵師・北尾重政(写真左、橋本淳)(C)NHK

一方その頃、江戸城では、一橋治済が家斉に対して「もっと子ども作れ」ハラスメントの真っ最中。自分には知力も情もないから、健康な子どもを増やして国を安定化させるよ!・・・と、子作りしかできることのなかった治済ならではの政(と言えるのか?)を推し進めていた。そのためには国防より大奥に予算を回すとか、さすがに周囲も「こいつヤバくね?」と気づいてきたようだ。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。子どもを増やすよう11代将軍・徳川家斉(写真左、城桧吏)に圧力をかける一橋治済(写真右、生田斗真)(C)NHK

そんなところに、かつての暗殺部隊の一人・大崎が戻ってきたのだが、自分の真っ黒な腹を誰かに探られていると知った治済が、おめおめと重要参考人を生かしておくだろうか?

この治済の一連の動きについて、SNSは「実の息子を種馬扱いする毒親治済か」「ニッポン一橋化計画、これはキモい・・・流石に老中達もドン引きですよ」「一橋の血で染め上げるなんて・・・カルトか!!!」「一橋治済、今度は大崎を切り捨てそうな気配がビシバシ感じる!」「これは大崎さん毒殺されるフラグですわぁ」「探っている勢力が多すぎてわからないってのがさすが治済さまラスボス感ありあり!」など、ちょっと引き気味の感想が並んだ。

■ てい「二人の男の業と情…」歌麿に魂の説得

そして、今は袂を分かつ形となっている重三郎と歌麿だが、重三郎は写楽のプロジェクトを通じて、歌麿ほど自分のダメ出しに粘り強く付き合える作家はいないことに気づかされた。対する歌麿もまた、巨匠となった自分に誰も指図をしてくれないことで、深刻な迷いを見せるように。

まだ誰も見たことがない作品を作るためなら、一切の妥協を許さない者同士だからこそ傑作を生み出せたのだと、この期に及んで知ることになってしまった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。本屋から指図を出されないことに悩む絵師・喜多川歌麿(染谷将太)(C)NHK

しかし、これこそが、和解の大きな動機となるのだ。それに気づいたのは、ずっと「ゲイカップルに挟まれたヒロインみたい」と言われてきた、おていさんだった。

まずはシリーズ完結した『歌撰恋之部』を「重三郎からの恋文」だと言い、歌麿の重三郎への激重感情に気づいていたことを示唆。さらに「自分は出家する」と言って、暗に「妻」の座を譲ると申し出た。しかし歌麿は「嘘だね」と一蹴。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。絵師・喜多川歌麿に思いを話す重三郎の妻・てい(橋本愛)(C)NHK

この静かな心理戦にはSNSも「蔦屋重三郎からの恋文、正確には恋文の返事なんてそんなことを歌麿さんに言うのは一種の賭けだよな」「これを告げにくるにはどれだけ葛藤があっただろうと、おていさんの心を思うと泣ける」「自分は身を引くから帰ってきてくれって・・・本当に愛」などのウルッと来るような言葉が。

しかし、ていの本音は「二人の男の業と情、因果の果てに生み出される絵というものを見てみたく存じます」だった。絵と本を愛するオタクであり、作品をプロデュースする本屋の業でもある。重三郎との子どもを産めなかった自分に代わって「子ども=絵」を作ってほしいという切ない願いでもあると同時に、「関係を成就させて!」という腐女子的な目線もある。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。重三郎が出版した浮世絵を見る絵師・喜多川歌麿(染谷将太)(C)NHK

これは間違いなく『べらぼう』名台詞の一つに並べられるだろうし、それを聞いて瞳に輝きが戻って来る染谷将太の表情も見事だった。

このおていさんの言葉には、SNSも「『二人の業と情が見たい』凄いセリフだな」「おていさんが歴戦の腐女子みたいなこと言ってるんですけど!?」「喜多川歌麿の心を動かしたもの、それは・・・お前らコンビの作品が見たいんだよ! という一人の女オタク精神だった!!」「おていさんの『見たい』が観念したオタクみたいだったのが最高」「おていさんの業と性、リアルBLを目の前で直接浴びたい腐った女子の気持ち、ということでよろしいか」「全べらぼう中、至高のセリフ認定しますた」などの絶賛と共感の嵐となった。

■ 「無名の妻」が歴史的偉業の「最後のピース」に

写楽誕生のきっかけが松平定信というのは実に荒唐無稽(だがそれがいい)だけど、この困難なプロジェクトの最後のピースをはめる役目を果たしたのは、歴史の教科書に残っているような偉人ではなく、歴史的には「多分実在したんだろうなあ」ぐらいのことしかわかっていない、重三郎の無名の妻(『てい』はドラマオリジナルの名前)だった。

重三郎の偉業以上に、その周囲の人々も含めて「あの時代を生きた一人の人間」という面を懇切丁寧に描いてきた『べらぼう』にふさわしい、決着の付け方だろう。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回より。仇討ちに巻き込まれたことを妻・てい(橋本愛)に謝る重三郎(横浜流星)(C)NHK

次はいよいよ「写楽」の絵が完成するわけだけど、それと同時に「平賀源内が生きている」という都市伝説を流すことで、一橋治済が上手く釣られてくれるか? も気にかかる。

仇討ちには感心がない素振りの重三郎だけど、彼が源内だけでなく、田沼意次(渡辺謙)&意知(宮沢氷魚)親子、花魁・誰袖(福原遥)や友人・小田新之助(井之脇海)の仇でもある(あらためてリストアップしたら本当にド畜生だな、治済!) と気づくときは来るのだろうか? この捕物帳の行方が気になりすぎるから、一刻も早く来週が来てほしい。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月30日の第46回「曽我祭の変」では、歌麿が仲間に加わったことで「写楽」の絵が完成し、ついに「曽我祭」で売り出されるところが描かれる。

文/吉永美和子

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