花組へ組替え後、初主演の極美慎 27年ぶりのディーン開幕

2時間前

無名の新人からスクリーンの一番星へ。その輝きを、大きな説得力をもって演じる極美慎

(写真5枚)

孤独を秘めた瞳、破天荒な言動、芝居への情熱が一本の線でつながる。そこに令和のディーンがいた――。宝塚歌劇団星組から花組へ組替え後、初の主演作に挑んだ男役スター・極美慎(きわみ・しん)。

彼女が1950年代のハリウッドに彗星のごとく現れた稀有な映画スター、ジェームズ・ディーンを演じる花組公演『DEAN』が、11月17日に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で開幕した。

1976年にロンドンで初演されたミュージカルをアレンジし、1981年に大地真央主演で上演。1991年に安寿ミラ、1998年に絵麻緒ゆう主演でおこなわれた宝塚の伝説的作品が、27年ぶりに谷貴矢の潤色・演出でよみがえった。

幼いときに母と死別、父との確執を抱えたジェームズ・ディーン。彼の24年という短すぎる生涯が、主演映画『エデンの東』『理由なき反抗』『ジャイアンツ』の名場面を織り込みながら描かれる。

極美はスタイルの良さが映えるジーンズや赤いジャケットなど、ディーンのアイコン的なスタイルが抜群に似合い、寂しげな表情を見せたかと思えば、大物の映画人にも物おじしない態度を見せる彼の複雑な内面を、繊細に表現する。

作家サン=テグジュペリの『星の王子さま』を愛するディーンの詩的な感性も、極美が演じれば一層みずみずしく輝き、星が瞬く天空のようなセットにしっくりと溶け込む。彼が生涯で唯一愛したピア・アンジェリ(美羽愛/みはね・あい)とのシーンでは、真っすぐすぎる告白や、不器用な生き方に胸を打たれる人が多いだろう。

ピア・アンジェリ(美羽愛)には純粋に心を開き、ふたりの距離は近づいてゆく
ピア・アンジェリ(美羽愛)には純粋に心を開き、ふたりの距離は近づいてゆく

星組最後の公演『阿修羅城の瞳』では力強く安倍邪空を演じ切った極美が、まったく異なるナイーブな男役像で新境地を開き、花組に新たな風を吹かせている。

極美の同期、一之瀬航季(いちのせ・こうき)が演じるニコラス・レイ監督や、映画PR会社の社長・ベン(希波らいと/きなみ・らいと)、本作のストーリーテラーも担う追っかけカメラマンのパット(天城れいん/あましろ・れいん)など、理解されづらいディーンの本質を尊重し、彼を温かな空気感で包み込む様子が、そのまま作品に優しいぬくもりを残している。

また本作で新たに加わったキャラクター・謎の少年(彩葉ゆめ/いろは・ゆめ)とディーンの絡み。新聞女王のヘダ・ホッパー(美風舞良/みかぜ・まいら)との痛快なやり取り、映画の撮影中、現実と幻想の狭間にいるディーンを諭すエリア・カザン監督(紫門ゆりや/しもん・ゆりや)など、印象的な役が多く、それぞれがこの名作を豊かに彩る。

映画『理由なき反抗』の撮影を進めるなか、謎の少年の姿も……。左から極美、鏡星珠、彩葉ゆめ、初音夢
映画『理由なき反抗』の撮影を進めるなか、謎の少年の姿も……。左から極美、鏡星珠、彩葉ゆめ、初音夢

世界一の役者を目指し、「表現の真実」を求めたディーンの生き様を、約2時間で色濃く演じ切った極美は、フィナーレで花組カラーのピンクの衣装に身を包み、メンバーたちとジャジーに躍動。美羽とのデュエットダンスでも魅せる。

16日におこなわれた公開舞台稽古の最後、極美は「ジェームズ・ディーンを演じられた3名の諸先輩方と、ジェームズ・ディーン様に敬意を示しながら、千秋楽まで精一杯演じていきたいと思います」と爽やかな挨拶で締めくくった。

本作は11月23日まで同劇場で上演後、12月3日~11日まで日本青年館ホールでも公演。なお、22日16時公演は全編ライブ配信がおこなわれる。詳細は公式サイトで確認を。

取材・文/小野寺亜紀

宝塚歌劇花組 シアター・ドラマシティ公演 『DEAN』

日程:2025年11月17日(木)~11月23日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:全席指定8000円

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