毒親ではなかった…高岡早紀が演じる母の「退場フラグ」にSNS悲嘆【べらぼう】

9時間前

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。髷を結いながら、重三郎の生い立ちについて話す母・つよ(高岡早紀)(C)NHK

(写真10枚)

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。

10月26日の第41回「歌麿筆美人大首絵」では、ついに喜多川歌麿の代表的な美人画が完成するものの、歌麿の母親代わりとなっていた重三郎の実母・つよに退場フラグが。重三郎とつよの最後の予感を漂わせる会話に、視聴者は号泣状態となっていた。

■ 「美人大首絵」が大ヒット…第41回あらすじ

重三郎は喜多川歌麿(染谷将太)の新作錦絵「婦人相学十躰」の出版と、妻・てい(橋本愛)が考えた女性向けの書物「ゆきかひふり」の出版を進めていた。「婦人相学十躰」は、背景を雲母摺にすることでより華やかにしたが、それを見たていは「ゆきかひふり」を、背景を黒くした石摺にすることを思いつく。

「婦人相学十躰」発売日は、人相見・大当開運(太田光)を招いたことで相学に興味のある人々が集まり、錦絵も飛ぶように売れた。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。蔦屋で人相見をおこなう大当開運(太田光)(C)NHK

重三郎は新作を持って、尾張の本屋まで売り込みに行くことになったが、母・つよ(高岡早紀)が初めて髪を結い直すと言ってきた。そこでつよは、夫婦で借金取りから逃げる際に、重三郎を巻き込まないために吉原に置いていったという真相を明かす。

さらに重三郎は強い人間に育ったが、たいていの人は強がって生きていることに気づいて欲しいと告げる。重三郎ははじめてつよに「おっかさん」と呼びかけて、蔦屋を発った・・・。

■ 「Mr.ノンデリ」滝沢瑣吉が物語を不穏へ

蔦屋の起死回生の大ヒット作になったと同時に、歌麿を当代一の絵師にのし上げた「婦人相学十躰」(実際は8作だけ発売)。それがついに世に出るまでの前後が描かれた第41回だったが、意外なほど「ついにあの絵がキター!」みたいなテンションが上がらなかったのは、歌麿があいかわらず不憫だったことと、重三郎の母・つよの退場フラグが嫌と言うほど立ちまくったせいだろう。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。頭痛がする重三郎の母・つよ(高岡早紀)(C)NHK

まず物語のムードを不穏にしたのは「Mr.ノンデリ」こと滝沢瑣吉(のちの曲亭馬琴/津田健次郎)の、歌麿性的マイノリティー疑惑。前回の最後で「あいつ、男色じゃね?」と重三郎たちに聞いていたけど、これは疑問というより「俺だけは気づいてる」という自慢めいた口調だった。そのまま黙っといてくれたらよかったのに、今回直接本人に・・・しかも周りに聞こえるように確認を求めるという、一番やっちゃいけない行動に出ていた。

これにはSNSも「おいこら、瑣吉、本人に聞くなよ、バカ」「馬琴さん! それ!! 地雷!!!」「そういうこと、人前で言っちゃだめだよ、江戸時代も令和の時代も」「アウティングの問題までぶっこんでくるのすごい」と罵声の嵐となったが、歌麿は「その通りですが、なにか?」と華麗にカミングアウトしたうえに、好きになったら男も女も関係ないという真理を説いて、瑣吉を納得させるというウルトラCまで決めてしまった。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。絵師・喜多川歌麿(写真左、染谷将太)に男色ではないかと指摘する滝沢瑣吉(写真中央、津田健次郎)と、その様子を見る重三郎(写真右、横浜流星)(C)NHK

この対応にもSNSでは「た、多様性・・・! うまい返しだな!!」「歌麿このレスバできるのすご。あんなに苦しんで苦しんで、自分で出した答えを人に言ってる。血反吐にまみれながら出した答えや」「性別を好きになることはない。『その人』だから好きになる、か」「歌麿の恋愛観(?)、なんか納得させられちゃったな。無礼な瑣吉も押し黙っちゃったね」「すごいかっこいいカミングアウトしたな・・・本当は蔦重だからこそ、大好きなのに」などの感心の声があがっていた。

■ 美しい抜け殻…歌麿が本作屈指の「愛の言葉」

とはいえ歌麿の本心、このように割り切れたわけではないということが、その直後のつよと交わした会話で明かされた。重三郎が自分を人生の相方にはしないとあきらめたうえで、「俺の今の望みは、綺麗な抜け殻だけが残ること」と語る。

自分の「実体」は愛されなくても、自分と重三郎が一緒に生み出した「抜け殻」が、誰かの癒やしになればそれでいい・・・悟りと誇りと強がりが混じったような、歌麿の境地。『べらぼう』のなかでも屈指の愛の言葉であり、名台詞だろう。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。重三郎への思いを語る絵師・喜多川歌麿(染谷将太)(C)NHK

これにはSNSも「作品を『美しい抜け殻』って表現するのいいなあ。かつての自分の一部だけど自分そのものじゃない、自分から切り離されて以降変化していかないもの」「それは愛だぞ歌麿。二人で何か残せたらそれでいい・・・全てを飲み込んだ愛だ・・・」「あまりに絵師として生きすぎているし、歌麿が人生で自分の心を殺す度に、『歌麿文学』とも呼べそうな美しい言葉ばかり紡がれている」などの、しんみりとした感想が。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。雲英摺で仕上げた錦絵を確認する絵師・喜多川歌麿(写真左、染谷将太)(C)NHK

しかしその直後に重三郎が、歌麿には新作の摺りあがりを見せるため、つよは医師に見せるために、2人を呼び出すことに。診察を怖がるつよに対して、蔦屋の女中・たか(島本須美)が「怖くない、怖くない」となだめる姿に、某ジブリ映画を思い出した人たちから「お、おたかさんが『怖くない』って言ったよー!(ナウシカ・・・)」「ぜったい島本さんに『怖くない』って言わせたい台詞だろこれ!」「テトじゃないんだからw」などのツッコミが一斉に上がっていた。

■ 生い立ちの真相…母が呼ぶ幼名に、幼い息子の顔

歌麿の絵は、一橋治済(生田斗真)がお忍びで訪れる(なにしに来た?!)ほどヒットし、おていさんが提案した女性のための本も素晴らしい仕上がりとなった。それを書物問屋の流通ルートに乗せて、本格的に全国展開するために出張する重三郎に、つよがついに重三郎を捨てた真相を語った。

登場時は「子どもを捨てておいて、売れっ子になったらちゃっかり帰ってきた毒親」扱いされたつよだけど、歌麿やていへの愛情深い態度を見るうちに、毒親像とかけ離れた人柄にとまどった人も多かったはず。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。重三郎(横浜流星)の髷を結い直す母・つよ(高岡早紀)(C)NHK

そしてここでついに、借金のために重三郎を捨てざるをえなかった真相を告白。自分が邪魔者じゃなかったことに安堵したところで、つよが「柯理(からまる)」と呼びかけた一瞬で、重三郎が子どものような表情になったとき、SNSは「『からまる』と呼んだ時の蔦重の固まった顔のとこ、泣きそうになった」「完全に『幼い息子』の顔だったんだよ・・・なんであんな表情できるんだよ」「そこで幼名は反則ですよ!!」などの、泣かされたと言わんばかりのコメントが。

さらに「周りの人にもっと気を使うように」という、母親らしい・・・そして、もう一人の「息子」の歌麿を意識した忠告に、はじめて重三郎が「おっかさん」と声をかける。ようやくこの親子が歩み寄ったと思われたシーンだったけど、つよさんは今回の序盤からしばしば頭痛を訴えていた。史実の重三郎の母親もこの年に亡くなっているのもあわせて、誰もがとびっきり大きな退場フラグが立ったことを、覚悟したに違いない。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。絵師・喜多川歌麿(染谷将太)と話す重三郎の母・つよ(高岡早紀)(C)NHK

SNSでも「教科書に載せたくなるレベルのフラグオンパレード」「逝かないでババア! ずっとBL作品の神ヒロインやってて!」「最期のアドバイスみたいなのやめて・・・BGMもしっとりしてるじゃん」「TLが『死ぬんじゃねえぞババア!!』『長生きしろよババア!!』であふれている。視聴者が全員毒蝮三太夫になってしまった」「まぁでもこの時間が持てたんだから、良かったのかな。良かったんだろうな」という、切ない声があふれていた。

■ 「毒親をやらせたら絶品」…ではなかった!

重三郎の人格形成に、直接ではないにせよ大きな影響を与え、さらに「母」という立場を生かして、重三郎と歌麿の間の調整役のような存在となっていたつよ。重三郎にここぞというところで釘を刺し、歌麿をいつも癒やしなだめていた彼女は、どうやら本当に退場することが、無情にも次回予告で暗示されていた。つよがいなくなったことで、2人の関係はどうやら良くないルートに乗っかってしまいそうではあるが・・・。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。母・つよ(高岡早紀)を見る重三郎(横浜流星)(C)NHK

そして登場したばかりの頃は「毒親をやらせたら絶品」と言われた高岡早紀。終わってみれば毒親のふりをしているけど慈愛にあふれた、そして普通に人たらしの女性という、幾重にも仮面を重ねたようなキャラを演じきったことが判明した。史実では10年以上前に死んでるはずだったけど、今まで重三郎を導いてきた須原屋市兵衛(里見浩太朗)さんともども、その名演に拍手を送りたい。

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。(C)NHK
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第41回より。重三郎に江戸への思いを力説する書物問屋の主人・須原屋(里見浩太朗)(C)NHK

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月2日の第42回「招かれざる客」では、ていが重三郎の子どもを懐妊するという嬉しい知らせの一方、歌麿に鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の息子で西村屋の跡継ぎ・万次郎(中村莟玉)が接近するところが描かれる。

文/吉永美和子

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