8年ぶり大阪へ!101歳の影絵作家・藤城清治氏「明日はもっといい絵を描きたい」

7時間前

『藤城清治101歳展 生きている喜びをともに』内覧会に出席した影絵作家・藤城清治氏(10月21日・大阪市内)

(写真7枚)

大阪で8年ぶりとなる影絵作家・藤城清治の展覧会『藤城清治101歳展 生きている喜びをともに』が、10月22日から商業施設「グランフロント大阪」(大阪市北区)で開催。21日の内覧会に出席した101歳の現役作家・藤城清治が、飽くなき制作意欲について語った。

■ 大阪の名所だらけ・大パノラマ作品に苦戦?

影絵作家・藤城清治氏、100歳以降の新作にも愛猫や自身の分身でもあるこびとが描かれている(10月21日・大阪市内)
100歳以降の新作にも愛猫や自身の分身でもあるこびとが描かれている(10月21日・大阪市内)

学生時代から影絵や人形劇を始め、戦後は雑誌『暮しの手帖』への連載を契機にカラー作品の新境地を開き、日本における影絵作家の第一人者として注目を集めた藤城。光と影が織りなす幻想的なメルヘンの世界、さらに80歳以降は戦争や被災地など社会的なテーマの作品も生み出し、今春に101歳を迎えた現在もなお、精力的な創作を続けている。

101歳の誕生日に公開された『藤城清治101 アビーと共に生きる』は、明るい未来へ向かっていく希望が描かれていると解説した影絵作家・藤城清治氏(10月21日・大阪市内)
101歳の誕生日に公開された『藤城清治101 アビーと共に生きる』は、明るい未来へ向かっていく希望が描かれていると解説した影絵作家・藤城清治氏(10月21日・大阪市内)

藤城は「大阪で101年を記念した展覧会ができて、うれしい」と語り、会場入口で出迎える、大阪の名所が賑やかに散りばめられた大型作品『日本一大阪人パノラマ』について言及。2014年に大阪で開催された展覧会のために創作され、「大阪は東京とは違う色々なおもしろさや楽しさ、魅力が集まっている」と、当時は大阪城などさまざまな場所を巡って、写真を撮ったり、デッサンをしたそう。

入口で出迎えてくれる大型作品『日本一大阪人パノラマ』
入口で出迎えてくれる大型作品『日本一大阪人パノラマ』

だが、ビル群の何万もの窓を切り出す作業や大阪の要素を1点の作品にまとめるのに悪戦苦闘し、「普段は楽しんで作っているのに、これまでの作品で1番苦労した。改めて目にするとよく描いたなあ」と振り返り、「でも、苦労することも素晴らしいこと」と、大阪会場で来場者が最初に目にする作品に自信をのぞかせた。

■ 自然の美に感銘「光と影があれば影絵はできる」

『藤城清治101歳展 生きている喜びをともに』内覧会に出席した(左より)「藤城清治美術館」藤城亜季館長、影絵作家・藤城清治氏(10月21日・大阪市内)
『藤城清治101歳展 生きている喜びをともに』内覧会に出席した(左より)「藤城清治美術館」藤城亜季館長、影絵作家・藤城清治氏(10月21日・大阪市内)

創作では1日に約100枚消費するというカミソリで、絵の輪郭線を切り出していく藤城。戦後に影絵を始めた時は今のような(便利な)カッターもなく、「片刃のカミソリを使ってみたら、指先の動きのように細やかに感じたものを線で切ることができた」と、木々の葉1枚1枚の表現にも血の通ったような命を吹き込み、影絵作りに没頭する日々。

長年尽きることのない制作意欲の源を問われると、「戦後、なかなか絵が描けなかった時に、葉っぱが風で揺れたら光が輝いたり、地面に影が映ったり、海や空も自然は動く絵画だな」と地球の美しさとともに「人がいて、光と影があれば影絵はできる」と感じたそう。そして、「風景に出合ったり、動物を見ていると、描いて残したい、みんなに見せたいと思うし、今日の1日より、明日の1日にもっと1番いい絵を描きたいと、ここまで続けてきたのでは」と明かした。

作品下に水を使った展示の『金閣寺』『銀閣寺』(中央)など幻想的な空間が広がる(C)Fujishiro Seiji Museum
作品下に水を使った展示の『金閣寺』『銀閣寺』(中央)など幻想的な空間が広がる(C)Fujishiro Seiji Museum

本展では戦後の復興を願ったメルヘンの世界、東日本大震災後の福島でデッサンした作品など、時代の変遷を追体験でき、最後には、自身の愛猫や藤城作品の象徴でもあるこびとが「希望」へと誘う100歳以降に制作した新作も展示。藤城は「こういう事があったんだ、とこれから100年先の人が見ても、いろんな事を考えてくれるんじゃないか。そして、勇気を見出したり、生きることはどんなに喜ばしいか、ぜひ感じてもらえれば」と呼びかけた。

大阪の祭りを描いた『天神祭 今昔』(C)Fujishiro Seiji Museum
大阪の祭りを描いた『天神祭 今昔』(C)Fujishiro Seiji Museum

本展は「グランフロント大阪」 北館 ナレッジキャピタル イベントラボにて、2026年1月4日まで開催(12月31日・1月1日は休館)。時間は10時~17時(入館は閉館30分前まで)。料金は一般2000円ほか。

取材・文・写真/塩屋薫

『藤城清治101歳展 生きている喜びをともに』

期間:2025年10月22日(水)~2026年1月4日(日)
※12/31(水)・1/1(木・祝)は休館
時間:10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
場所:グランフロント大阪 北館B1 ナレッジキャピタル イベントラボ(大阪市北区大深町3-1)
料金:一般2000円、高大生1500円、小中生700円 ※未就学児無料

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