万博で大バズりの「カラオケ盆踊り」… 会場内で異彩を放った「よしもと館」の仕掛け

『盆踊りのアシタ』で、ステージ下に設置されたヤグラを囲んで踊る人々(7月7日 Lmaga.jp撮影)
閉幕が迫り、連日大賑わいの『大阪・関西万博』(会場:夢洲)。158カ国・地域と7国際機関が参加するなか、「吉本興業」(大阪市中央区)のパビリオン「よしもと waraii myraii館」は会場内でも異彩を放っていた。連日カラオケや盆踊りが開催され、SNSで瞬く間に話題に。総合プロデューサーを務めた小松純也氏に、このパビリオンに込めた思いを訊いた。(取材・文/田辺ユウキ)
■ 人間味、活気を感じた…街の姿の再現を目指して

「笑いのチカラで、こころとからだの健康を」を掲げる同パビリオン。「笑顔の球体 タマー」ではプロジェクションマッピングなどさまざまな演出を織りなす異空間でアート体験ができるほか、隣接する「アシタ広場」では癒し空間「IKOI」、言葉が通じなくても楽しめるノンバーバルショー「Comedy show」、盆踊り、カラオケ、ダンスを融合させた参加型イベント「盆踊りのアシタ」など開かれている。

このパビリオンの総合プロデューサーを担当したのが、小松氏だ。テレビプロデューサーとして『チコちゃんに叱られる!』(NHK)、『人生最高のレストラン』(TBS系)などを担当し、演出家としては『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』シリーズ(Amazonプライム・ビデオ)、監修として『トリビアの泉〜素晴らしきムダ知識〜』(フジテレビ系)といったヒット番組を多数手がけている。

そんな小松氏が同パビリオンの空間に重ねた風景は、かつての大阪・天王寺付近の様子。今ほど整備が行き届いてはいなかったが、その分、人間味、活気が感じられた。そんな街の姿の再現を目指した。
「今回は僕が捉えた懐かしい大阪っぽさが出ています。地元は西宮(兵庫県)なのですが、天王寺の高校に通っていました。そこでものすごいカルチャーショックを受けたことを覚えています。動物園前の商店街を通ると、昼間から大人たちがお酒を飲み、将棋をして、そして何人かそれを見ている。また、木で作られた競馬ゲームで声をあげて遊んでいる。『エゲつないなあ!』と思いました。でもそのエゲつないは悪い意味ではなく、「ここでしか見られない光景」ということなんです。そんな当時の大阪の様子が今回の下地にはあります」。

たとえば「盆踊りのアシタ」は、2010年代に撤去された天王寺公園の青空カラオケがイメージされているという。小松氏は「15時くらいに天王寺公園へ行くと、「この人らは何者なんやろう」というおっちゃん、おばちゃんらがカラオケで楽しそうに熱唱していた。今はそんなことはできなくなった。だからこそ、ここの開放的な空間で思う存分、歌ってみて欲しい。小さい子どもさんがYOASOBIの『アイドル』とかを歌えば、大人になってもそれが思い出になる。なにより盆踊りやカラオケは、海外の方にとって新鮮な日本の文化ですから」。

ちなみに小松氏は3歳くらいのとき、1970年開催『大阪万博(日本万国博覧会)』へ連れて行ってもらったそう。ただ、当時の記憶は「自動販売機で売られていたガムを買ってもらったことだけ」だと振りかえる。一方で「いろんなパビリオンを見るけど、子どものときの楽しい記憶ってつまりはそういうことなんだなって。ですので『子どもの記憶に残ること』もコンセプトの一つとして形にしました」と語る。
この「盆踊りのアシタ」は口コミやSNSをきっかけに、今では注目スポットのひとつに登りつめた。写真・動画の撮影が全面的にOK。吉本芸人が日替わりでMCをつとめるステージに「我こそは歌いたい!」と志願した参加者が上がり、大画面に映し出されるカラオケで熱唱し、観客はライブさながらにスタンディングで盛り上がったり、芝生エリアでしっとり鑑賞したりと、各々がフリーダムにそのときを楽しんでいる。

同イベントの常連MC・レイザーラモンと藤崎マーケットは「盆踊り神4」と呼ばれるようになり、「神4」目当てに入場するツウもあらわれ、閉幕間際に開催時間が延長されるほど人気コンテンツとなった。
■ 「きっとみなさん疲れるはず」…畳が敷かれたIKOI
小松氏がもう一つこだわりを持つのが「アシタ広場」に設置する「IKOI」だ。ここには畳が敷かれており、来場者は靴を脱いでくつろぐことができる。

「いろんなパビリオンを見てまわって、きっとみなさん疲れるはず。常に意識が外へ向いている状態。でも吉本のパビリオンに来たら『ここでゴロゴロできるやん』と。そこで一度、家族、友人らと顔を見合わせてほしい。靴を脱いでゆっくりしながら、万博の楽しい時間について語り合ってもらいたい。それが『記憶』につながる気がします」。

同ステージでは吉本新喜劇ほか、とにかく明るい安村、ウエスPなど世界で活躍中の芸人も登場した。日本のお笑いが海を越えて評価されつつある現状について小松氏は、「僕も『HITOSHI MATSUMOTO presents FREEZE』シリーズ(Amazonプライム・ビデオ)で海外に向けた番組販売をおこなっていますが、日本のお笑いは海外のマーケットで『ジャパニーズクレイジーショー』として一つのジャンルになっています。『風雲!たけし城』シリーズなど身体性ベースのお笑いは、海外の人から「よくこんな企画を思いつくな」と驚かれます。日本人にしか考えられないアイデアに身体性を組み合わせれば、日本のお笑いはもっと海外へ渡ると思います」。

小松氏のかつての体験や、日本のお笑いの「現在」が詰まった「よしもと waraii myraii館」。最後に改めて小松氏は「今って、意識が高い人を見ると『自分もそうしなきゃいけない』と考えがち。そういうしんどさがあるなかで、この場所での『そうじゃない感覚』が世の中に響いて欲しいです」と来場者にメッセージをおくった。
『大阪・関西万博』は10月13日までの開催。
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