鬼平まで総動員! お上を覆す「蔦重軍団」の逆転劇【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第38回より。鶴屋と重三郎に集められた、地本問屋や戯作者たち。写真左から、地本問屋・西村屋(西村まさ彦)、鱗形屋(片岡愛之助)(C)NHK
横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。10月5日の第38回「地本問屋仲間事之始」は、松平定信がたくらむ出版統制に対して、重三郎をはじめとする出版関係者が一丸となって立ち向かう様に胸熱になりつつ、喜多川歌麿を襲った悲劇に涙するという、情緒の忙しい回となった。
■ 出版統制に抗う策を次々と…第38回あらすじ
松平定信(井上祐貴)が、新たな黄表紙や錦絵の出版を制限するお触れを出すなか、重三郎は火付盗賊改方となった昔なじみ・長谷川平蔵宣以(中村隼人)を吉原で接待。惚れた花魁・花の井(小芝風花)をダシにしてだまし取った50両を、利子を付けて返済するという口実で賄を渡す。定信から指図された「人足寄場」の金繰りに苦労している平蔵はこの金を受け取り、出版統制の緩和のために働きかけた。

一方喜多川歌麿(染谷将太)の妻・きよ(藤間爽子)は梅毒が悪化し、歌麿は付きっきりで彼女の絵を描きつづける。彼女の訃報が届いたのは、重三郎や妻・てい(橋本愛)が、自分たちの作った本や浮世絵を異国まで売り出す話をしている最中だった。きよの死を認めず、遺体から離れない歌麿に対して、重三郎は「お前は鬼の子なんだ。生き残って命描くんだ。それが俺たちの天命なんだよ」と言って、泣き叫ぶ歌麿を抱きしめるのだった。
■ 闇落ちから一転…おかえり!吉原時代の蔦重
黄表紙は社会に抗うのが優先か、おもしろいのが優先か。解散するバンド風に言うなら「方向性の違い」で絶縁しそうになった重三郎と北尾政演(山東京伝/古川雄大)だったが、ここで思いがけない助け舟となったのが、松平定信が言い出した出版統制だ。思想的な締め付けのみならず、版木の無駄遣いも阻止するという、倹約過激派の定信らしいお触れ。しかしこれがまさか、重三郎を初心に戻すショック療法になるとは考えもしなかった。

まずは重三郎&鶴屋喜右衛門(風間俊介)の呼びかけで、江戸の出版関係者がジャンルを問わず大集合。そのなかには、てっきり第19回で退場と思われた鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)や、初期に活躍した彫師・四五六(肥後克広)なども。
この豪華で懐かしい顔ぶれに、SNSも「愛之助殿! 愛之助殿じゃないか!!!」「鱗の旦那と西村屋(与八/西村まさ彦)がいるのが地味にうれしい」「肥後リーダーまた出てるじゃん」などの喜びの声が。
そして重三郎は、お触れのなかの「どうしても新刊作りたい場合は応相談」という一文に目をつけて、本屋連中が大量の案件を持ち込んで奉行所をパンクさせるという、嫌がらせ一歩手前な策を思いついた。
さらにこの、法の網目をかいくぐりながら自分たちのやりたいことを実現させるというスリリングな状況が、作家や絵師のクリエイター魂に火を付ける! 制限の多い状況のなかでアイディアを出し合い、突破口を見つけては本作りを実現するという、まさに吉原時代の重三郎が帰ってきた瞬間だった。

SNSでも「越中守の触れに抜け道あるのを見抜いたとは、やはり蔦重は蔦重でした」「楽しいもの作りたい連中の集まりだもんな!」「こうしてみんな手を貸してくれるのは蔦重が今まで頑張ってきたからでもあるんだよな」「今までのライバル達が手を取って共闘するの、熱いなぁ」など嬉しさ満開状態で、さらに政とは一線を引きたがった政演まで立ち上がる姿に「キャー京伝先生! 粋で最高!(うちわ)」「兄弟子たちが踏ん張ってるんだもんな・・・先に目をつけられてる京伝も怖いよね。それでも立ち上がったんだ」と声援が上がっていた。
■ 第3回で騙された鬼平、ネタばらしも笑顔
しぼみかけた作り手側の創作意欲に燃料を投下した一方で、すかさず為政者サイドの方にも自分たちの意見を通す筋道を開くことにした重三郎。そのキーマンとなったのは、我らが「カモ平」こと長谷川平蔵!!
第3回で「花の井を巻頭グラビアにするための入銀」という名目で奪い取り、実際は吉原・浄念河岸を救うために使った50両、利子を付けて返済します・・・という形で、袖の下を渡すことに成功した。ここで騙されたことに腹を立てず、むしろ人助けをしていたことに気を良くするカモ平の、なんとすがすがしいことか。

SNSでも、鬼平の一連の行動に「鬼の平蔵になっても、吉原に来る時はしけ(髪の毛のほつれ)を作る辺り、変わったようで変わらないなw」「あああああ! あの時の入銀!」「初期の長谷川さまの大盤振る舞いがここで回収されるの~~ッ!?」「これ、おかみさんがわざわざ『騙されてくれた』って申告するのがジワる」「種明かしされても怒るどころか感心する鬼平。さすが鬼平いいおのこじゃの」「どこまでも鴨、いつまでも鴨」と、笑いながら伏線回収に感心するようなコメントが。

そしてカモ平のおかげで、定信は「(私の大好きな)江戸の誇りの黄表紙を江戸じゃない所で作るとか絶許」とばかりに、規制の手をゆるめることに。
この見事な作戦勝ちに「定信くんもややちょろいな」「元々黄表紙オタクな松平定信の負けん気をついた見事な策」「定信をおだて謙遜しつつ、定信が秘める黄表紙愛とプライドをくすぐって株仲間制に導く長谷川平蔵のコミュ力。やっぱり出世する男なのだな」などの歓喜の声があふれていた。
■ 放送していいん!? 歌麿&きよの地獄展開
この一連の騒動で「おもしろいと思ったものを心のままに放り込む」という、黄表紙・・・いや、エンターテインメントの真髄にようやく立ち返った重三郎。本当ならここでめでたしめでたしとしたいところなのに、別方向の地獄展開が待ち受けていた。
喜多川歌麿の愛妻・きよが、前回悪化の兆候が見えていた梅毒によって逝去。歌麿はその死が認められず、畳の色が変わるまで遺体を放置して、仏教の「九相図」よろしくその変化を描きつづけた・・・という、ゴールデンタイムに放送していいんか!? と思うほど壮絶なシーンだった。

SNSでも「せっかく良い落とし所で終わりそうだったのに、ラスト3分でやめてクレメンス・・・」「ハエの羽音で『あっ・・・(察し)』ってなるのキツいですって」「おきよさんが寝てた下の畳の色が変わってシミシミになってるの、この大河のスタッフ描写に容赦がねぇ」「朽ちていくきよを一心に描き留める歌麿。もうあんなの愛と狂気の九相図だよ」「歌とおきよさんの幸せな姿1話分しかないなんて、鬼脚本さすが森下佳子先生すぎるよ」とショックを隠せない人が多数。

完全に憔悴しつつも、愛妻への思いと画家としての業で、その相貌を描写しつづけた歌麿。このすさまじさは、染谷の演技込みで「ずっと抱えていた孤独が紛らわされたの、短すぎる時間だったなあ」「日曜夜8:00に見ていい狂気ではない・・・なんだこれは」「ヤンデレの狂気演技をやらせたら上に出る者がいない、人の心がない脚本との相性が抜群すぎる」「染谷将太という俳優の凄まじさをまざまざと見せつけられる回だった」など呆然とする声が上がっていた。

朝顔花魁(愛希れいか)の死体が全裸で打ち捨てられた第1回といい、性的に搾取された人物の死の描写が実にシビアな今回の大河。しかしこの残酷な現実を通じて、重三郎は「書物を使って吉原(そして日本)を良くする」という使命を見つけたし、今回の歌麿は「大首絵」という世界レベルで絶賛されるスタイルを、これで確立したと思われる。
しかしあの手法が、寝たきりなので顔しか変化する所がない愛妻を、死んだあとも描きつづけた結果会得したなんて・・・本当に真顔で「なに食ったらそんなこと思いつくの?」と聞きたくなるエピソードだ。あとはこれが蔦屋から出版されて、歌麿の不幸が報われる日が早く来ることを祈るばかりである。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。10月12日の第39回「白河の清きに住みかね身上半減」では、蔦屋から出版した北尾政演の本が絶版処分となり、重三郎にすさまじい逆風の嵐が吹きすさぶところが描かれる。
文/吉永美和子
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