抜荷に土地売買詐欺、2つのペテンの行方は?【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第24回より。蝦夷の上知の件について、進捗を聞く老中・田沼意次(渡辺謙)(C)NHK
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。6月22日の第24回「げにつれなきは日本橋」では、重三郎の日本橋進出と、幕府の蝦夷上知計画をめぐる、2つの大きなペテンが佳境に突入。2つの世界があざやかにリンクすることで、視聴者の興奮がいっそう高まっていた。
■ 田沼親子が松前藩に仕掛ける…第24回あらすじ
蝦夷を幕府の土地にする「上知」を狙う田沼意次(渡辺謙)と意知(渡辺氷魚)は、蝦夷地を治める松前藩の抜荷の証拠をつかむための絵図を探していた。さらに意知は吉原の花魁・誰袖(福原遥)と組んで、藩主の弟で江戸家老・松前廣年(ひょうろく)に、琥珀の抜荷をするよう仕向ける。しかし気の弱い廣年は、なかなか抜荷に手を出そうとしない。そこで意次たちは松前道廣(えなりかずき)の宴席で、廣年が吉原通いをしていることを暴露する。

最初は烈火のごとく怒った道廣だったが、しばらくして誰袖のいる大文字屋を来訪。物陰に隠れた意知の前で、主人の大文字屋市兵衛(伊藤淳史)に対して、松前と吉原が一緒に琥珀の抜荷をして、大儲けをするという相談を持ちかけた。その頃江戸は、夏が近づいても涼しいままで、地震も頻発していた。誰もが不安を抱えているなか、ひときわ大きな揺れにつづいて「浅間山が噴火した」という知らせが届いた・・・。
■ 2つの世界が「大きなペテン」でリンクする
一見すると異なるルールのもと、それぞれの物語が平行線で進んでいるように見える、重三郎が生きる江戸市中の世界と、田沼意次たちが生きる江戸城の世界。しかし何かの拍子に、そこで起きている事件や人間関係が、パチン! とリンクする瞬間がときどき出現する。このバランスの按配と、リンクのタイミングの絶妙さが『べらぼう』の大きな見どころの一つだけど、今回はどちらも「大きなペテンを仕掛ける」という、共通のキーワードがあった。

まず江戸城パートの方は、田沼意知&誰袖花魁による「松前藩江戸家老ハニートラップ作戦」が継続中。花魁の色気にやられて抜荷に手を出すかと思いきや、自分の描いた絵を花魁にプレゼントするなど、いまいち欲を出すことがない。今回の紀行にもあった通り、絵画に優れた才能を持ち、むしろ「蠣崎波響」という雅号の方が有名な松前廣年。アーティストタイプの人間は、えてして無欲かつ商売下手な人が多いという実感があるけど、廣年もそういうタイプだったのは、誰袖の誤算だったのかもしれない。
■ 思惑通り!欲望の塊・松前道廣が「抜荷」に参戦
しかしここでラッキーだったのは、弟の「欲」という概念をすべてこいつが奪っていったんじゃないか? と思うほどの欲望の塊・松前道廣が出馬してきたことだ。家臣を火縄銃の的にするなど、相変わらず悪趣味な宴会を繰り広げているが、ここで意次は家臣・三浦庄司(原田泰造)を使って、廣年の吉原通いを兄にバラした。これになんの狙いがあったのか? は謎だったけど、道廣が吉原に来たことで、意次たちの思惑は判明した。

無欲かつ安全第一な生き方の廣年と違い、自分の利益やスリルのためなら大博打も厭わない性格の道廣。彼の前に大きな儲け話をぶら下げれば、抜荷を承知で飛びついてくる可能性が高い。しかも江戸家老がスキャンダルを起こすよりも、藩主みずからが抜荷を主導したことがわかれば、お家お取り潰しは確実だ。廣年の失敗を逆に踏み台にした、田沼親子が仕掛けた大きなペテンだろう。

しかしここで気になるのが、道廣の悪趣味宴会仲間・一橋治済(生田斗真)の存在だ。アイヌの楽器をプレゼントするなど、ただの仲良しこよしに見えるけど、政治的にもガッツリ裏で手を組んでいるとしたら・・・? 道廣の奔放すぎる行動の数々も「いざとなったら、一橋様がいるもんねー」という、大きなバックがあってのことかもしれない。まずはこの抜荷作戦が、どのような結果になるのかは注目せざるをえないだろう。
■ 日本橋が吉原の親父たち撃退、柏原屋へ売却
そして一方重三郎パートは、蔦屋日本橋進出を目指して、吉原の親父様たちが張り切って行動し始めたけど、なんせ市中の土地を買うことはご法度にされてしまった吉原の人間。正攻法では上手く行かないからと、借金をチャラにするから店を代理購入しろとか、証文を買い上げて店を譲るよう迫ろうとするとか・・・冷静に考えたら、やってることが土地売買詐欺とか、ヤクザの地上げとあんまり変わらなかった。

でもこれが、嘘一つ上手く付けない亀屋の若旦那のようなアホボンならともかく、相手は男性以上に漢籍に精通したインテリ・てい(橋本愛)と、吉原への差別意識から、吉原レーダーの精度がとんでもなく高い鶴屋喜右衛門(風間俊介)のタッグだ。物事の矛盾はすぐに見破るし、少しでも吉原がつけ込んできそうな穴があったら、速攻で塞ぎに行く。現時点では重三郎の敵役ではあるけど、お見事な撃退としか言いようがない。

というわけで、大坂の書物問屋・柏原屋(川畑泰史)に丸屋を取られてしまったわけだけど、その柏原屋がなんと蔦屋に転売を持ちかけてきた・・・というところで話が終わった。どういうわけがあって、こんなに早く手放そうとするのかは不明だけど、たまたま重三郎がていへの熱い思いを語った現場にいたことで、真っ先に重三郎のところに来てくれたのは幸いだった。しかも大坂の人なので、重三郎が吉原の土地を買えない事情について知っていても「言うほどややこしいもんとちゃうやろ」と、軽く考えている可能性もある。
■ 「天明の大飢饉」突入…米不足の現代のヒントに
というわけで、紆余曲折はあったものの、次回では日本橋進出の大きな手形を手に入れることになりそうな重三郎。しかし同じタイミングで浅間山の噴火があり、世の中は「天明の大飢饉」という大不況時代に突入していくことになる。

ここからどうやって、ていや鶴屋と信頼関係を築いていくか。そして飢饉で経済も気分も落ち込んだ江戸の町を、重三郎がどうやって明るく照らしていくのか。それはきっと、まさに米不足まっただなかの今の日本を生きる私たちに、少しでも楽しく生きるためのなんらかのヒントを提示してくれるはずだ。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月29日の第25回「灰の雨降る日本橋」では、なかなか日本橋進出のめどが立たなかった重三郎が、浅間山の噴火を期に形勢を逆転させていくところが描かれる。
文/吉永美和子
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