1970年・大阪万博のポスターも!歴代品46点、京都で一挙展示

7時間前

1970年の「大阪万博」時のポスター

(写真5枚)

現在、大阪の夢洲でおこなわれ、注目を集めている『大阪・関西万博』。そのタイミングにあわせ、現代万博のテーマ変遷をグラフィックからたどる企画展『モダン・エキスポ・ポスターズ』が京都で開催中だ。各時代の万博のテーマが時代背景とリンクしながら、公式ポスターにどのように表れているのか——視点を変えた万博史として観てもおもしろい内容となっている。

■ 過去の万博、なにがどう違う?

1851年の「ロンドン万博」からスタートした万博。当初は見本市的な色合いが濃かったものの、第二次世界大戦以降は、体験を提供する「エンタテイメント型」に変化。1958年のブリュッセル万博以降「テーマ」が設けられ、人々がそれについて考える機会になった。

同展では、現代万博の走りとなったブリュッセル万博から、2025年の大阪・関西万博までの計14回の現代万博のポスターを46点展示。ところで、過去にもさまざまな「万博」が日本で開催されてきたが、なにがどう違うのだろうと疑問に思っていた方も多いのではないだろうか?

万博は、「BIE(博覧会国際事務局)」の承認のもと、国際博覧会条約に基づき開催される国際博覧会の総称で、今回の『大阪・関西万博』のような「登録(一般)博覧会」と1975年の『沖縄国際海洋博覧会』や1985年の『国際科学技術博覧会(つくば万博)』のような「認定(特別)博覧会」、そして1990年の通称「花博」でおなじみの国際花と緑の博覧会のような『国際園芸博覧会』の3種類ある。

同展では、これら日本で開催されたすべての万博ポスターも含めて紹介しており、3種類の各万博の違いもわかる展示内容になっている。

1985年のつくば万博ポスター展示風景。和田誠のイラストや田中一光デザインのポスターも
1985年のつくば万博ポスター展示風景。和田誠のイラストや田中一光デザインのポスターも

では万博のテーマは、どのように変遷してきたのだろうか?1958年の第二次世界大戦後、初めて本格的に開催された『ブリュッセル万博』のテーマは、「科学文明とヒューマニズム」だった。1962年の『シアトル万博』は「宇宙時代の人類」がテーマで、どちらもオブジェやシンボルマークなどがストレートに描かれているのが特徴だ。

現代万博の走りである1958年のブリュッセル万博と1962年のシアトル万博のポスター展示風景
現代万博の走りである1958年のブリュッセル万博と1962年のシアトル万博のポスター展示風景

1970年のアジア初開催となった『大阪万博(通称)』は、「人類の進歩と調和」がテーマで、戦後復興と高度経済成長のピーク期だった背景がある。1985年の『つくば万博』も「人間・居住・環境と科学技術」をテーマにアミューズメント性も兼ね備えており、このあたりまでの万博のテーマからは、当時の人々が「最先端の科学技術とともに歩む明るい人類の未来」を思い描いていたことが想像に難くない。

同展では、「日本のエッシャー」の異名を持つグラフィックデザイナー・福田繁雄が手掛けた『大阪万博』のある意味幻のポスターともいえる「コンペ用のポスター」も展示されているので必見だ。『つくば万博』では、たばこ「ハイライト」のデザインや『週刊文春』の表紙イラストレーションで知られる和田誠や無印良品やロフトのロゴなどを手掛けたグラフィックデザイナー・田中一光など、私たちが身近に感じているデザイナーのポスターも。

興味深いのが、東西ドイツ統一10年を記念して開催された2000年の『ハノーバー万博』。ロゴが固定ではなく、流動的な可変性が高いデザインなのだ。

2000年のハノーバー万博のロゴデザインは、DTPデザインが主流化し、流動的で可変性の高いデザインに。映像で、ロゴや背景カラーが変化した他のデザインポスターも観ることができる(展示できなかった他のポスターも観ることが可能)
2000年のハノーバー万博のロゴデザインは、DTPデザインが主流化し、流動的で可変性の高いデザインに。映像で、ロゴや背景カラーが変化した他のデザインポスターも観ることができる(展示できなかった他のポスターも観ることが可能)

デザインの歴史の中で、特筆すべき大きな変化は、「DTPデザイン、いわゆるコンピューターデザインの導入です」と、主催の公益財団法人DNP文化振興財団ddd企画室・熊本和夫さん。DTPデザインは、90年代初頭に日本に入ってきた。

『ハノーバー万博』の可変性が高いロゴは、まさにコンピューターデザインが定着した時代だからこそ生まれたものなのだ。20世紀最後の万博であった同万博のテーマは、「人類・自然・技術」で、これまでの産業博型から、環境保護を重点にした内容だった。テーマもポスターデザインも変化する時代をよく表していることがわかる。

現在の大阪・関西万博に引き継がれている「理念提唱型」の走りとなった2005年の通称「愛・地球博」(愛知博)のポスター展示風景。9・11同時多発テロを想起させるポスターデザインも
現在の大阪・関西万博に引き継がれている「理念提唱型」の走りとなった2005年の通称「愛・地球博」(愛知博)のポスター展示風景。9・11同時多発テロを想起させるポスターデザインも

21世紀最初の登録博だった2005年の通称「愛・地球博」(愛知博)は、「自然の叡智」をテーマに掲げており、自然との共生や環境問題への意識が強調されたのが特徴だ。同博を機に地球規模の課題に対する解決策などを各国が提唱する「理念提唱型」に変わり、この価値観が現在の万博に引き継がれている。

企画展『モダン・エキスポ・ポスターズ:グラフィックでみる現代の万博』は、「京都dddギャラリー」(京都市下京区)にて8月20日まで、入場無料。各詳細は公式サイトにて。

会場:京都dddギャラリー(京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620 COCON烏丸3F)
会期:2025年06月13日(金)~08月20日(水)
開館時間:火~金(11:00~19:00)、土日祝(11:00~18:00)
休館日:月曜日(祝日、振替休日の場合はその翌日)

取材・文・写真/いずみゆか

企画展『モダン・エキスポ・ポスターズ:グラフィックでみる現代の万博』

会場:京都dddギャラリー(京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620 COCON烏丸3F)
会期:2025年06月13日(金)~08月20日(水)
開館時間:火~金(11:00~19:00)、土日祝(11:00~18:00)
休館日:月曜日(祝日、振替休日の場合はその翌日)

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