日本橋進出でも…吉原ファーストな重三郎の思い【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第23回より。日本橋の呉服屋たちから呼び出された重三郎(写真中央、横浜流星)(C)NHK
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。6月15日の第23回「我こそは江戸一利者なり」では、重三郎が吉原を離れて、一流の本屋が立ち並ぶ日本橋への転居を決意。ただ商売を広げるためかと思いきや、吉原の発展を使命とする重三郎らしい理由が、そこにはあった。
■ 激怒する吉原の親父たちを説得…第23回あらすじ
重三郎は田沼意知(宮沢氷魚)から、蝦夷の上知計画に一枚噛むよう誘われるが、丁重に断った。一方花魁・誰袖(福原遥)は、意知からの身請けを条件に、蝦夷地を治める松前藩の藩主の弟・松前廣年(ひょうろく)に、ご禁制の抜荷に手を出すように仕向けていく。オロシヤからの琥珀の抜荷によってお金ができれば、もっと自分と会う時間ができると涙ながらに語り、誰袖はまんまと廣年の心を揺るがせることに成功した。

その頃重三郎は吉原の主人たちに、一流の本屋が立ち並ぶ日本橋への進出を宣言。養父・駿河屋市右衛門(高橋克実)は激怒するが、重三郎は自分が成り上がることで、吉原は身寄りのない子をここまで育て上げる町だと、世間が見直すきっかけになると説得した。折よく日本橋の本屋「丸屋」が売りに出されていたが、吉原の人間は市中の土地を買えないことと、丸屋の閉店は吉原や蔦屋が絡んでいることが、重三郎の障害となる・・・。
■ 裏切りではない「日本橋」への移転は必然…
吉原を女郎が住みやすくて、周りの人たちからも尊敬される町にすることを目標に掲げて、そのためにさまざまなアイディアを練ってきた重三郎。作家や絵師たちに対して、吉原での特別待遇をギャラ代わりにするなど、まさに吉原あってのここまでの大躍進だと言えるだろう。
しかし蔦屋重三郎は、耕書堂立ち上げから10年後となる1783年に、本拠地を日本橋に移している。一見吉原に見切りを付けた行動に思えたけど、『べらぼう』ではむしろ吉原のイメージを上げるため、みずからがその象徴になろうとした・・・という解釈で描かれた。

まず、なぜ周囲の人々が日本橋への出店にこだわるか? というと、やはりブランドイメージ。「銀座の人気店」とか「京都の老舗」など、特定の土地に店があるというだけで、品質まで保証されているような気がするのは、江戸時代から一緒だったということだ。特に重三郎が拠点とする吉原は、今も風俗街であることには変わりがないから、やはり「いかがわしい場所で売られる本」というイメージは、いまだにぬぐえないと思われる。

そして意外とこれが一番のポイントだけど、地方とつながる五街道の起点になる場所ということ。書物に限らず、各地から江戸に仕入れに来る人が、ほぼ100%通ることになるエリアなのだ。さんざん歩いて、ようやく江戸に着いた・・・というところで、そこからさらに数キロ離れた場所にあるポッと出の本屋まで足を運ぼうとする人は、まずいなさそう。今回の「雛形若菜」のやり取りに見られるように、同じような錦絵が日本橋で売られているなら、ほぼ間違いなくそれを仕入れるのも納得だ。
特に蔦屋の場合、『見徳一炊夢』のヒットで市中の本屋でも仕入れてくれるところが増えたけど、鶴屋や西村屋などの大型老舗書店は相変わらず絶縁状態。よその土地の人にてっとり早く「耕書堂」をアピールするには、日本橋に直営店を出すのが、もっとも有効かつ近道なわけだ。ブランドイメージと流通戦略の両面で、日本橋への移転は遅かれ早かれ選ばざるをえない状況だったのである。
■ 「階段落ち」から這い上がり、駿河屋を説得
しかしそれを商売の都合だけではなく、同時に吉原のイメージも好転させるための手段にしたという理由付けには、脚本・森下佳子の作劇の妙を感じざるをえない。和泉屋(田山涼成)の葬儀を通じて、吉原の人間が今も根強い差別待遇にあることを重三郎に直面させ、吉原を中からだけでなく、外からも変えねばならないことを痛感させた。そのためには、吉原に育てられた自分が、誰もが称賛するような仕事ぶりを日本橋で見せれば、「吉原は拾い子もここまで立派に育てる、懐の深い町」と考え直す機会となるはず。

ただそのためには、まず吉原の人々・・・特に重三郎への愛情と暴力が比例する駿河屋市右衛門(高橋克実)を攻略せねばならなかった。これまではなにかあるごとに市右衛門に階段から突き落とされ、スゴスゴと退散するのが様式美となっていたが、今回は血を流しながらも階段を登り、文字通りどんな目に遭っても必ず成り上がるという不屈の精神を父に見せつけて説得させた。今までの階段落ちは、もしかしたらこの名シーンのために、あらかじめ置かれた布石だったのかもしれない。

のちにあの曲亭馬琴が「吉原で遊んで財産を失う人が多いのに、逆に吉原から出てきて商人として成功するなんてすごい」という感じの賞賛の文を送っているので、最終的に重三郎の狙いは見事に当たることになる。「吉原に住む女たちが楽しく暮らせるようにする」という思いが、本作りの最大のモチベーションとなった『べらぼう』の重三郎らしい、痛快な日本橋進出のエピソードだった。
■ まだまだ壁が残る、重三郎の日本橋進出の夢
ただここで問題になるのが、第14回でクローズアップされた「吉原の人間は市中の土地を買っちゃダメ!」という決まり事。さらに目星をつけた本屋「丸屋」の女将・てい(橋本愛)は「絶対蔦屋にだけは売らん!」と、将来重三郎と結婚することになるとは知らずに徹底拒否と、駿河屋以上に乗り越えねばならない壁が、まだ結構残っているのが現状だ。

そこでラストに扇屋宇右衛門(山路和弘)が連れてきた人物こそが、日本橋進出の夢をかなえるキーパーソンとなりそうなのだが、それが何者かは今回は明かされず・・・さまざまなミラクルを起こしてきた重三郎が、次はどうやって法の壁を超えるかも注目だが、個人的には須原屋市兵衛(里見浩太朗)が重三郎に見せた蝦夷地の絵図、これってあの田沼意次(渡辺謙)・意知親子が必死に探してる、松前藩の抜荷の証拠の絵図なのでは? というのが、すごく気になってるんですけど・・・。

◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月22日の第24回「げにつれなきは日本橋」では、重三郎が江戸の中心・日本橋に店を構えるため、吉原の主人たちも巻き込んで奔走するところが描かれる。なおこの日は選挙特番のため、NHK総合の放送は夜7時14分からスタート。
文/吉永美和子
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