京都で画家・鴨居玲の展覧会、没後40年でも衰えない魅力とは

『没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く』より
没後40年となる画家・鴨居玲(かもいれい)の展覧会が、「美術館「えき」KYOTO」(京都府京都市)を皮切りにスタート。フランスやスペインなどに滞在しながらも、後年はほぼ神戸を拠点に活動していた鴨居は、暗い影を宿したような独特な人物像で、今なお人気の高い画家だ。
鴨居が折々に描いてきた初期から晩年までの自画像を中心に、さまざまなモチーフごとに展示された約60点の絵画と雑誌の挿絵原画30点の展示で、ここで新しく鴨居玲に触れる人にとってもちょうどいい展覧会となっている。
■ 目が離せない…鴨居の自画像
普段よりもぐっと照明を落とした印象の場内で、浮かび上がるようにして鴨居玲の作品が目に入ってくる。「人間の暗い側面にロマンを感じる」という鴨居が描いてきた対象は、それほどバリエーションに富んでいるわけではなく、むしろ、いくつかの決まったモチーフを繰り返し描いた作家といえる。
なかでも本展覧会でも1章を設けて紹介される「自画像」は、ほの暗い自意識とともに、どこか芝居がかったようにも見える作品も多くて目が離せない。若い頃にはつらつとした表情で描れた自画像も展示されているが。40代でものにした自画像では、半開きになった口から蛾が飛び出しているというあり様(《蛾》1969年)。なお、蛾は鴨居が好んで描いたモチーフでもあり)。

本展出品作のなかでも一番の大作《1982年 私》は、真っ白なキャンバスを前に虚ろに佇む画家本人だけでなく、その周囲に配された弱々しい人物群も作家の分身だそうで、一見してどん底な世界観。が、どこかでそれを描きながら哄笑している作家の姿も見えるようで興味深い。
鴨居は57歳で自死するのだが、その半年前に描かれた自画像2作と、亡くなった後にイーゼルに掛かっていた絶筆の作品、これもまた自画像で、この3作が連続して見られるのも本展の醍醐味だ。

■ 1章まるごと!?「酔っ払い」の絵

鴨居がひんぱんに描いたモチーフとして、サイコロゲームに興じる人や音楽を奏でる楽師、そして、酔っぱらいなどがある。酒場や酒宴を描くのは絵画あるあるでもあるけど、これほどまでに情けない顔をした酔っぱらいというのも鴨居ならでは。「あ゙ぁ゙〜もう嫌」という声までが聞こえてきそうで、どこか共感さえ覚える。

展覧会後半には、人間以外で鴨居が唯一描いたモチーフといえる「教会」作品がまとめて登場。陰鬱ではあれど人間らしさが充満する人物像とはまた違って、シュルレアリスムを思わせる非現実感、その静謐な画面に見入ってしまう。

ちなみに鴨居は信仰を持たなかったが、ヨーロッパ滞在中にどうして自分は無宗教なのかという問いかけから教会を描くようになったのだという。

■ 雑誌の仕事や鴨居を撮った写真にも注目
一方で、最終章では雑誌『週刊読売』の連載コラム(陳舜臣「弥縫録 中国名言集」)に鴨居が描いていた挿絵がまとめて展示されている。コミカルなテーマの切り取り、軽快なタッチ、添えられた文字まで、陽性の鴨居玲が顔をのぞかせていてまた新たな一面が知れる。

もうひとつ、この展覧会で特徴的なのは作品キャプションだけでなく、ところどころに鴨居が写る記録写真もあわせて紹介されていること。実は鴨居玲、相当な美男子として知られ(検索サイトで予測変換に「鴨居玲 イケメン」と表示されるほど)、残された数々の写真も俳優のごとし。虚ろな自画像や鬱々とした人物画との落差にさまざまな物語を想像してみたくもなる。

『没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く』は7月6日までの開催。グッズ売場では絵画作品だけでなく、鴨居のポートレイトを使ったポストカードも販売されていた。入館料は一般1100円。
取材・文・写真/竹内厚
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