【連載vol.23】見取り図リリー、デ・キリコ展を観る

1階にあるフォトスポットにて、《予言者》のマネキンと一緒に撮影
アート大好き芸人「見取り図リリー」が、色々なアート展へ実際に観に行き、美術の教員免許を持つ僕なりのおすすめポイントをお届けする企画「リリー先生のアート展の見取り図」第23回でございます。今回は、「神戸市立博物館」(神戸市中央区)で2024年12月8日まで行われている『デ・キリコ展』です。
20世紀を代表するアーティストで、アートシーンに多大な影響を与えたジョルジョ・デ・キリコ(以下、親しみを込めてキリコと呼ばせていただきます)。不思議な空間に、明らかに意図的にゆがめたデッサンや謎な遠近法、不気味に伸びた影などを描いた「形而上絵画(けいじじょうかいが)」というスタイルを生み出したことで有名です。僕はそういった作風しか知らなかったのですが、この展覧会で、これまで知らなかったキリコを観ることができました!
まず入ると自画像が並んでいます。僕の勉強不足で自画像を描いていること自体が衝撃だったのですが、すごいのは作風のバリエーション。1922年頃作の《自画像》と、その隣の1929年頃作の《自画像》で、タッチがまったく違うんです。前者はアカデミックな絵画技法で、後者は印象派のような筆触を残しています。この2枚だけでキリコの絵画への探究心がわかります。
あと自分のこと大好きなんだろうなというのが伝わってきます! ナイスナルシズム! 《闘牛士の衣装をまとった自画像》という作品は厚めに絵の具を塗り、まるでロマン主義のような迫力がありました。《自画像のある静物》はセザンヌを、後に妻となるパートナーを描いた《秋》ではダ・ヴィンチのモナリザを感じました。さまざまな技法や画家を研究し、今でいうと、アートガチ勢なんでしょうね! キリコのYouTubeチャンネルでアート解説をしてたら絶対チャンネル登録しています。
次はキリコの代名詞である「形而上絵画」セクションに。形而上絵画のはじまりとなった「イタリア広場」シリーズを、フィレンツェのサンタ・クローチェ広場で思いついたとき、こんなことを思ったそうです。「いつも見ている、いつもの広場なのに、取りまく全てのものが、今はじめて見ているような感覚になった」・・・はぁ? すいません。この凡人めには天才すぎてよくわからんのでございます。
うん、確かにこの非凡な感覚がないと描けない絵! なので凡人のわたくしは魅了されるんでしょうね。そんなシリーズの中から、特に《イタリア広場(詩人の記念碑)》は、特にキリコって感じでいいです! 謎のいびつな形の窓のような所から広場が見え、手前には分度器や定規のようなもの。広場にある記念碑、建物から伸びる影、絵画上にはいない人物の影なども描かれてもいます。そしてどんよりとした空。全てがあいまって夢の中にいるような感覚になるんです。観れば観るほどわからないところが出てくるんです。僕はこれを勝手にアートの永久機関と呼びます!

家の中に屋外があるといった「形而上的室内」シリーズもあります。《福音書的な静物Ⅰ》、これはすごいですねー、わけわからんけどめっっっちゃ良い! 欲しいし、こんな絵描いてみたい! 窓から、真っ青な背景に柱の影ような物が見えています。その窓の上側にはまだ室内が続いていて、さらに窓があり、その景色は真緑。右側には、焼き菓子と地図が貼り付けられたパネル、その奥には分度器や定規が置かれていて、僕はそこが唯一、空間の重力というか平衡感覚を感じることができました。この文章を自分で書きながらもパニックになりそうです。わけわからんくなってきた! シュルレアリストたち(注1)に影響を与えたのも納得です!
形而上絵画において、キリコは同じモチーフを繰り返し描き、マヌカン(マネキン)をモチーフにしている作品もたくさんあります。キリコの性格とかは全然知りませんが、顔のないマヌカンの不思議さや不気味さというのは、キリコが好みそうだなと勝手に想像して楽しくなりました。
そのマヌカンを描いた《予言者》という作品では、腕のないマヌカンが振り向いてこちらを見ています。そしてその前には脚が1本足りないイーゼルが…何を考えて、何を伝えたいのでしょうか。不思議な空間で、室内のようなのに神殿のような建築物が建っています。このシュールさとメッセージ性を考えているとずっとこの絵の前にいてしまいます。どう表現すればいいのか伝わるのかわからないのですが、催眠術みたいな感じなんです。キリコに脳みそを操られてる感覚。キリコがオンラインサロンをしていたら入会していたでしょう。もうガチファンです。
「伝統的な絵画への回帰」のセクションでは、独自の手法を追い求めつつ、過去の名画家も振りかえって、静物や風景画も描いていたことを知りました。バロック、ロマン主義、写実主義、色々な作風があり、ルノワールのタッチ!とまるわかりなものも。同じ画家が描いたと思えないのに、全作どこかにキリコ節が効いてるんです。太い芯というか、自分というブレない何かがあるんでしょうね!

90歳で亡くなったキリコによる87歳の時の作品もあるのですが、まじで信じられません。線はいきいきとしてるし、87歳の人がこんな感覚でこんな構成で描けるって、すごすぎる! 100点以上の作品を鑑賞して、一貫して思ったのは、キリコが全部楽しんで絵を描いたんだろうなということ。嫌な線や嫌な色が無く、本当に自分の描きたい物を描いてる感じが気持ちいいんです!
油絵が中心の展覧会ですが、手がけた本の挿絵や舞台衣装も。あと、彫刻がかっこよかった! 現実にはない、自由な形だから立体化するのが難しいのでは?と思ったら、多面的な絵を描く人だからこそ、立体作品に向いていました。部屋にひとつ欲しくなった!
あーもうお腹いっぱいです。いや、キャパオーバーです。頭を整理してもう一度行きたい! でも、きっと行ってもまた行きたくなって、キリコの思う壺なんでしょうね。みなさまもキリコの催眠術にかかりに行ってみてください。気付いたらキリコに夢中です。
(注釈1)シュルレアリスト…1924年に、作家アンドレ・ブルトンがはじまりを宣言した文学・芸術運動がシュルレアリスム。夢と現実、意識と無意識が混じったような状態こそが、本当の現実としてとらえたもの。この運動に携わった人々がシュルレアリストで、デ・キリコが生み出した形而上絵画が、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリットらに影響を与えたそう。
【見取り図リリーの近況】
1年ぶりの単独ライブ『イルでチルなミトリズ』を11月29日に大阪で、12月11日に東京でやります。見取り図のYouTube『見取り図ディスカバリーチャンネル』のほかに、大好きな先輩・かまいたち濱家さんと『はまリリ酒呑みチャンネル』では、おいしいごはんと酒を楽しんで、自由におしゃべりしています! 見取り図の最新情報はオフィシャルファンクラブ「見取り図ポッセ」へ!
『デ・キリコ展』
イタリア人の両親のもとギリシャで生まれ、ドイツの美術学校で絵画を学んだジョルジョ・デ・キリコ(1888〜1978)。形而上絵画・新形而上絵画というジャンルを生み出し、シュルレアリスムの始まりともいわれている。今回の作品では初期から晩年まで70年以上にわたる画業を、100点以上の作品を通じて振りかえる。期間は12月8日まで、9時半〜17時半(金・土曜は〜20時)。月曜休館(祝日の場合は開館、翌日休館)。料金は一般2000円、大学生1000円、高校生以下無料。
『デ・キリコ展』
期間:2024年9月14日(土)〜12月8日(日)
月曜休館(祝日の場合は翌日休館)
時間:9:30〜17:30(金・土曜は〜20:00)
会場:神戸市立博物館(兵庫県神戸市中央区京町24)
料金:一般2000円、大学生1000円、高校生以下無料
電話:078ー391ー0035
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