脚本家・吉田恵里香氏が語る、『虎に翼』の戦争と原爆裁判

『虎に翼』の脚本家・吉田恵里香氏 (C)NHK
連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合ほか)が残すところあと2週となった。今週放送された第24週「女三人あれば身代が潰れる?」では、少年法見直しの議論がおこなわれるなか、寅子(伊藤沙莉)の恩人で元上司の多岐川(滝藤賢一)が亡くなった。
昭和6(1931)年から物語が始まった本作。戦中・戦後と激動の時代、戦後の憲法改正を経て、第24週では高度経済成長末期、学生運動がピークをむかえる昭和45(1970)年の様子が描かれた。終盤の山場となる原爆裁判、そして遡って「戦争編」制作への思いを、脚本家・吉田恵里香さんに訊いた。
■「このスタッフとならがっつりやれるな」という信頼感
吉田さんは、物語において原爆裁判は欠かせなかったと語り、こう続ける。「主人公・寅子のモデルの三淵嘉子さんの半生を調べたときから、彼女が原爆裁判を担当されていたことがわかっていたので、ぜひ扱いたいと思っていました。でも、どこまでがっつり扱うか、自分の中でも扱いきれるのかという不安があって。しかし、今回の作品のスタッフさんとなら、がっつりやっていけるなという信頼感がありました」。

続けて、「元々この作品では、『戦後』をメインで描きたいと思っていました。第9週からずっと戦後編、つまり戦争の傷跡を描いている作品なので、そのひとつの大きな山場として原爆裁判を扱うことは最初から決めていたんですけど、その分量や、正面から扱うというのは、書き始めてから覚悟が決まっていきました」とコメント。
「法律考証の先生方のご意見を聞きながら、私ももちろんたくさん調べましたけど、三十何年生きてきたなかでの原爆に対する自分の知識の少なさを思い知りました。原爆が『落とされた』ことは誰でも知っているけど、それ以外のことについては知らないことだらけで。すごく思うところがあり、作品で扱わなければならないと思いました」と振りかえった。

■「1945年8月、広島・長崎に新型爆弾が落ちた」ことを見せなかった理由
やがて憲法改正や原爆裁判につながる、「戦争」のエピソードは、放送期間にして約1週間。終戦間際に寅子、あるいはほかの登場人物が「広島と長崎に新型爆弾が落ちた」と新聞で知る、というような描写はなかった。この意図についてたずねると、吉田さんはこう語る。
「第8週から、弁護士の道を断たれてしまった寅子が社会から心を閉ざす姿を描きました。それまで社会に出て働く女性だった寅子が、心が折れたこともあり、家庭に入るという描写をするために、新聞を見なくなるという展開にしました。戦争中は家族のためだけに動くというキャラクター造形に寄り添って、寅子が知らないことや見ないことは、第9週までは本編でも見せない、という意図でした」

第9週、寅子が河原で初めて「日本国憲法」を目にして号泣するシーンにも、特別な思いがあるという。
吉田さんは、『虎に翼』の戦中戦後における「情報の断絶」の表現について、「当時やはり、生活のため、生きるために必死だった人が重要な情報に行きつかないことが多かったと思うんです。いろいろと調べていくなかで、戦争が終わったことを知らないまま、8月15日以降も数日過ごした方がいたとわかりました。寅子は、学生時代から新聞をよく読んで社会情勢を気にしている人だったぶん、そことの対比をつけるために、という意図が大きいですね」と持論を語った。
物語の最後は、どのように結ばれるのか、残り2週の展開からも目が離せない。
取材・文/佐野華英
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