齊藤工監督「窪田正孝さんと芦澤さん、この2人が条件だった」

『スイート・マイホーム』の齊藤工監督(左)と映画評論家・ミルクマン斉藤
◆「僕は最初から白旗を掲げて・・・」(齊藤監督)
──とにかく、窪田さんが素晴らしいんですよね。寄りのショットが強いとおっしゃっていましたけど、まさにそうで。しかも芝居自体は、どちらかというと受けに徹しているにも関わらず。
彼に反射するように、奥さん役の蓮佛美沙子さんも科学反応を起こしていくのが面白かったですね。何が起こるかは予想しなかったんですけど、あの夫婦が変化していくという話なんで、それぞれ良い意味で影響し合って。ラストも当初の予定とは全然違って、おふたりの顔に始まり、顔で終わることに変えましょう、と。
──で、エンドタイトルが終わったあとにもう1度、女の子の顔が来るという。
そうですね。
──それがプロローグと同じく、手で顔を覆う女の子で。枠構造のようになっている。
僕は結構、自分の映画でも枠を作りがちなんです。終わりの意味をつなげたいというのがあって。原作にはなかったんですが、母性というか、女性性の伝承みたいな話だなと。全然世界観は違うんですけど、アリ・アスター監督の『ヘレディタリー/継承』(2018年のホラー映画)なんかがイメージにあって。なにかを継承してしまう、男性ではなく女性の母性というか深い愛ゆえの魔性というかな。

原作の神津凛子先生も女性だし、それを女性キャメラマンの芦澤さんに切り取ってもらいたかった。男性の無力さを撮影行為としても日々感じ取っていきたいと思っていたんで、自然にそういうフォーメーションになっていきました。子役の女の子たちも含め、そういう女性性みたいなものを女性たちに描いて表現してもらうという、ちょっと蚊帳の外みたいなアングルで僕は関わっていた感じですね。
──私も『ヘレディタリー/継承』を想起しました。あの映画もミニチュアの家から始まる入れ子構造で、家への執着がありますもんね。おそらくアスター監督も影響を受けたであろうジャック・クレイトン監督の『回転』(1961年のホラー映画)もそうで。その枠を落とし込んだ脚本の倉持裕さんは最初から想定されたんですか?
ちょうど『ゾッキ』を作っていた時期と重なったり、(主演映画の)『零落』(2023年)があったり。決して2時間で収まるような原作ではなかったですし、原作では本田(奈緒)から見たパートがあったり、甘利(松角洋平)から見たパートがあったりしますから。僕は甘利が一番好きだったんですけど。それを一本化するのはなかなか至難の業で。
──原作は、複数の視点から語られる構成ですからね。映画にすると冗長になりかねない。
なので、あの大橋裕之の世界を脚本に落としこむっていうウルトラCみたいなことを『ゾッキ』でやってのけた倉持さんなら、原作に対して誠実に自分のエッセンスで掛け算ができる方だという実感があったので。倉持さんだったらこの映画は成立するかなと。
最初は僕もこの原作を映画にすることに、なかなか難しい橋を渡ることになるんじゃないかと思っていて。監督という立場だけじゃなく、自分が観る側として考えて、どこに柱があればこの映画は成り立つんだろうか、ということを、窪田さんや芦澤さん、そして倉持さんだけでなく、現場で袖を触れ合わせた方たちにお話しました。
──窪田さんと最初に対決するときの青いライト、あそこでこの映画のムードが決まったような気がするんですね。そのあと地下室の灼熱の赤いライトや蓮佛さんのラストの照明。そうした色彩設計もかなり計算されてますよね?
照明の菰田大輔さんに、ある程度自由にやってもらいました。これはほかの部所のスタッフもそうなんですけど、僕は監督として背伸びをするんではなく、むしろ最初から白旗を掲げて、プロフェッショナルな方たちにやりたいことをまずやってもらう。僕は、その場所を確保するのが監督の役割だと思っているので。それは役者さんもそうですね。
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