トリッキーながらも評価、戦国時代のキツイ側室問題どう描く【どうする家康】

側室選びが不安で空を見上げる家康(松本潤)(C)NHK
古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。第10回『側室をどうする!』では、家康が母からの訴えで、しぶしぶ側室を迎えるものの、その意外すぎる結末にSNSがザワついた。(以下、ネタバレあり)。
■どうする家康、側室は実は
三河の支配を盤石にした家康だが、妻・瀬名(有村架純)との間に、これ以上子どもができる気配はなかった。母・於大(松嶋菜々子)は家康に側室を持つよう勧め、瀬名もそれに同意して候補を探しはじめる。そして選んだのは、家康が自害に追い込んだ鵜殿長照(野間口徹)の縁者ながらも、今は岡崎城で下働きをしているお葉(北香那)だった。
家康は当初、寡黙で感情が読めない彼女を不気味がるが、なにかと気がきくところに次第に惹かれ、2人の間に娘・ふうが誕生。しかしお葉は、側室の務めはこれまでにしたいと、家康に申し出る。実はお葉は男性が苦手で、下働きのお美代(中村守里)と相思相愛だったのだ。家康はお葉を希望通りお役御免とし、2人がともに城内で働けるよう計らうのだった・・・。
■戦国時代の側室の必要性とは
前回までの「三河一向一揆」が、とにかく「つらい」の連続だったためか、家康さん家の子作り事情という、比較的ライトな「どうする」が描かれた第10回。とはいえ戦国大河としては、内容としても見せ方としても、賛否両論が出そうなほどアグレッシブな回となった。
まず大河で側室問題が出てくると、正室が激しく嫉妬するとか、側近がめちゃくちゃ立腹するなどのネガティブムードにおちいるのがお約束。しかしそこはさすが「明るい大河」を標榜する『どうする家康』。正室が(表面的には)ノリノリで側室を探し、殿もそれにつられて鼻の下が伸びていく・・・という、ちょっと大河では見たことがない展開となった。

さらに、於大が家康を説き伏せる際の「もっとポンポン産むおなごをめとりなされ。殿は三河一国を束ねるお立場。子をどんどん作って、あっちとくっつけ、こっちとくっつけ・・・、松平家を盤石なものにしていかねば」という発言には、「コミカルな回だが側室制度のエグさ、でも戦国時代において必要な機能だった事、正妻と側室のそれぞれの辛みも描いてとても面白かった」「側室めちゃくちゃいる主人公の大河で側室描写から逃げない大河、信頼できる」などとSNSでも評価する声が上がっていた。
■トリッキーだが一定の評価
そして「側室オーディションかよ!」とSNSでもツッコミが入るまくるほど、数多くの側室候補者から選ばれたお葉は、ナタ1本でイノシシを倒してさばき、気配りも完ぺきという超男前キャラ。SNSでも「お葉さんかっこいい!」「家康公より強そう」「女子高の中でファンクラブできるタイプ」と、瀬名ならずともひと目で惚れ込んだという告白が多数。
また、お葉が側室を辞退する理由が、実はレズビアンだった・・・というのも、かなりトリッキー。戦国時代は、高名な武将たちが男性に送った恋文が多数遺されるなど、同性愛が非常にオープンな時代だったとはいえ、それをここまでストレートに、しかも女性同士でというのを描くのは、昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、三代将軍・実朝(柿澤勇人)を同性愛者にしたのに続く、思い切った見せ方だろう。

SNSでも「大河で百合とはいい時代になり申した」「なぜ西郡局(お葉)が督姫(おふう)以降、子を産んでいないのか? を説明するものにもなっており、センシティブな話題ながら歴史ドラマとしてすごく真面目に物語に昇華できている」「あの時代にも同性愛者はきっといたはず。本当はいるのに『いなかったこと』にされなくてよかった」と、一定の評価の声が上がっていた。
そしてこのままホームドラマテイストで終わるのか? と思ったら、ラスト5分で古代ローマ人、もとい武田信玄(阿部寛)の恐ろしき野望を匂わせたり、瀬名の両親を間接的に死に追いやった田鶴(関水渚)が、次の悲劇の布石を打った所が描かれたりと、いろんな不穏要素を超凝縮形で見せてきた。作り手からの「次からは本気だすよ」というメッセージ、ドキドキしながらも楽しみにしておこう。
『どうする家康』は、NHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夕方6時からスタート。第11回『信玄との密約』では、家康が信玄との談判の末、駿府攻略の密約を交わし、未亡人となった田鶴が守る引間城を攻撃するところが描かれる。
文/吉永美和子
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