「父が買ってた」失われゆく神戸らしさ、老舗帽子店の70年に幕

帽子専門店「神戸堂」の販売員(左から)須賀裕子さん、安藤秀幸さん
ファッション文化の象徴「大丸神戸店」の北側で、1946年から営業してきた老舗帽子専門店「神戸堂」(神戸市中央区)が、2023年1月29日に閉店。コロナ禍を区切りにリニューアルが続く神戸の街から、またひとつ「神戸らしさ」が失われる。
「神戸堂」を立ち上げた前オーナーが閉店を決めた2012年に、「神戸堂」の屋号を引き継いだのは関西の帽子メーカー「マツイ」(大阪市中央区)。それまであった「神戸堂」の形態同様、イタリアやアメリカから輸入された一流メーカーの帽子を中心に販売してきた。
同店で10年以上勤続する販売員の安藤秀幸さんは、「イタリアで160年以上同じ型で作られている帽子は、マニアックなところがあります。流行り廃りはなく、ずっと定番。職人が伝統工芸品のようにひとつずつ手作業で作る帽子は、冬は暖かく、エレガントで美しくてかっこいい」と、輸入帽子の魅力について話す。

そういった帽子は平均価格が7〜8万円と高価ではあるが、大切に扱えば10年以上もつという。一度買うと長く使えることや、そんな帽子を頻繁に購入していた「おしゃれな男」たちが高齢になり帽子が必要なくなったこと、さらにコロナ禍で客足が遠のいたことが閉店の理由だという。

SNSでは「父がいつも買ってた帽子屋さん。これはショックです」「神戸らしい店が閉店だぁ」「閉店までにぜひとも訪ねておきたいです」など、惜しむ声が上がっている。
帽子を試着せずにネットで購入する人が増えている昨今、「いいものを紹介したいけれど、時代に合わせて自社製品に力を入れていくことを選択しました」と、同じく販売員の須賀裕子さんは話す。営業は2023年1月29日まで。現在は閉店セールを実施中。
取材・文/太田浩子
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