石井裕也監督、韓国で撮影した作品で「ぶっ壊せた」

映画『アジアの天使』を手がけた石井裕也監督
辞書の制作仕事に取り組む人々の物語『舟を編む』(2013年)、都会のなかで膨大な会話を行き交わせる若者の様子を描いた『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)など、石井裕也監督の作品は「言葉」にまつわるものが多い。最新作『アジアの天使』は、そのなかでも象徴的な1本になりそうだ。
韓国に移り住んで事業に失敗し、どん底を味わう日本人の兄弟・透(オダギリジョー)と剛(池松壮亮)。そんな彼らと偶然出会う韓国の三兄妹・ジョンウ(キム・ミンジェ)、ソル(チェ・ヒソ)、ポム(キム・イェウン)。言葉が通じ合わない一行が、とある目的のため、ぎこちなく交流しながら旅をともにするなかで、独特な「天使」に出会う。今回、初のオール海外ロケとあって韓国スタッフとのやりとりには苦労があったと話す石井監督。映画づくりに必要なコミュニケーションとはどういうものなのか、話を訊いた。
取材・文/田辺ユウキ
「価値観や先入観が崩れること、または崩すことって重要」
──今回の物語は、剛(池松)とソル(チェ・ヒソ)ら日本人と韓国人の関係性がどのように変化していくのかがひとつの見どころ。そしてお互い、愛へと踏み込むべきかどうか迷いが生じていきます。
いきなり本質に迫る話をしますが、脚本を読んだ池松くんから「この映画には天使が登場しますけど、それって一体なんなんですか」と尋ねられたことがあります。僕はこの物語の天使って、愛、あるいは愛の可能性のひとつの具現化だと捉えています。それならば、必ずしも美しいだけのものではないはずなんです。もしかすると醜いかもしれない。ヘンテコかもしれない。それを信じられさえすれば、どういう姿をしていてもいいと僕は思うんです。

──天使は、剛とソルのあいだに芽生える「愛らしきもの」の表れということですね。
この映画の本質はまさに愛なのではないか、と僕は考えています。愛を具現化したものが天使であったとして、たとえばそれが美しい見た目ではなかったとしても、ふたりがその存在を信じられるかどうか。そこが物語の重要なポイントになります。
──そういえば石井監督が手がけた2015年のドラマ『おかしの家』でも、「人間を噛む」という意外な設定で天使を登場させましたね。
『おかしの家』のとき、出演者のオダギリさんは「天使に噛まれるためにこの仕事を引き受けました」と言っていました。今作は、だからいろいろな意味でつながっているんです。
──ハハハ(笑)。『おかしの家』では、「人を噛む天使」が登場した回が物議を醸しました。
否定的な感想も多かったと思います。個人的におもしろかったのが、テレビ局に「『おかしの家』の脚本家は何かの病気なんですか?」と問い合わせがあったそうで(笑)。それを聞いたときは腹を抱えて笑いましたけど、受け手の価値観や先入観が崩れるからこそ表現に価値はあると僕は考えています。もちろん『おかしの家』ではそれを狙ってやりましたが、今回はさらに挑戦的なことをしています。
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