今泉力哉監督「これからって役者さんばかりだった」

主役を演じる若葉竜也。古着屋に勤め、読書好きな青年を演じる。(C)「街の上で」フィルムパートナーズ
「漫画家・大橋裕之さんのエッセンスを与えてもらった」
──今泉監督の映画って、各登場人物の距離感が微妙に食い違ったり、遠のいたり近づいたりするというのが基本にありますよね。その塩梅がこの『街の上で』は、ちょっと恐ろしいくらいに上手くいってるような気が。
今回はどこから作っていこうとかあまり決めずにパーツパーツで発想していきました。もともと、彼女にフラれた男が彼女のことを引きずってて、ただ過ごしているうちにいろんな女性に出会っていく・・・みたいなのはあったんですが。
あと、さっきの煙草もそうですし、本に挟まれたメモや留守電に残る声とかもそうなんですけど、すごく意図的なことでなくて何ならちょっと忘れてるくらいになってたことが遅れて届くとか、そういうのに興味があったんでしょうね。
──青の昔のカセットテープとかね。
そうですね。テープはあるけどデッキがないとか。どっか欠けてる。なにか足りない。
──青のなかにどれだけあの煙草を残してた理由があるかも分かんないですしね。それにしてもさきほどの幻のラストシーン、登場人物たちが路上で出会って揉めに揉めていく爆笑シーンと呼応するようで。
あそこの撮影、実はなかなか上手くいかなくて、メッチャ時間がかかりました。しかも撮影最終日だったんですけど、あの日だけ灼熱の温度になって、35度とかあったのかな? 地獄で、みんな頭が回らないし、あんな掛け合いなんて1歩ズレたら全く面白くなくなるし。
段取りやっても全然面白くならなくて、脚本が悪いのかな、みたいにドツボにはまって。ちょっとあそこは怖かったなぁ。
──あのシーンってどっちかというとハリウッド的な昔のスクリューボール・コメディの、もつれにもつれた末、いささか不条理な状況にまで至る狂騒的クライマックスみたいな感じがちょっとありますよね。
構成としては初期に作った『サッドティー』や『こっぴどい猫』とかと一緒で、群像劇はとりあえず全員集合させたら終われる、ってところがあって。ずるい考えですが(笑)。
揉めてる途中段階で雪がとつぜん「1回殴られました」みたいなことを言うんですけど、ワケ分かんなくて好きで(笑)。ああいう台詞、書けたときにうれしくなるんですよ。『愛がなんだ』の「よし、パスタ作る」ってとこと同じで、なんで今この流れで殴られた話なんか出てくるんだっていう。
そういうのが書けたときに、ここは上手いこといったなみたいな。思いつくかどうかだけなんですけど。

──今回、漫画家の大橋裕之さんと脚本を共作されてますが、どういったやりかたで?
もちろん俺は大橋さんの作品が好きなんですけれど、同時に脚本を書くというのは無理があったので、結果的には会ってお話をしたり、俺が書いたやつを読んでもらって意見してもらったりを繰り返していた感じですね。
大橋さんのエッセンスを与えてもらった、って感じです。さっきの路上の揉め事もそうだけど、俺がひとりでやっていたらちょっとコントとか笑いにいきすぎてビビって切ってしまっていたかもしれないのを、大橋さんが「ここ残さないともったいないよ」って。
──会話と心理がぐちゃぐちゃになって。
途中で、ある男が自転車でやって来るのも大橋さんのアイディアです。大橋さんはあそこに警察もやってくるのはどう? って言ってたけど、それは集まりすぎ(笑)って俺がブレーキかけて。そんな話し合いをあちこちのシーンにおいてしました。
──でも、その異物である自転車もちゃんと上手く活かされている。しかも急な坂道が前にあって、何故か雪が自転車奪って颯爽と走り去ろうとするとコケそうになって押して上がる、とか。最高ですよね、あれ。
あれは偶然。ほかの監督ならあれを良しとできないかも、って思いながら作っていました。穂志さんが乗れなかったからってだけで、コントロールして作ってない。追っかけられるかもってリアリティで作っていくよりも、ダサくて面白いから本番もそれでいいよ、って。
──なんだかこの1年間で、映画界に期せずして大橋裕之ブームみたいなものが。
アニメーションの『音楽』(2020年)があってね、(竹中直人・山田孝之・齊藤工共同監督の)『ゾッキ』(2021年4月2日公開)もあるし。
──この間、『大阪アジアン映画祭』で上映された中村祐太郎監督の新作『新しい風』のポスターも大橋さんが描いてるし。今まで山下敦弘さんを除いては、映画界からほとんどコミットメントされてなかったのに。
でも僕のなかにはずっとあるんですけどね、大橋さん。ずっといる気はする。
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