今泉力哉監督「これからって役者さんばかりだった」

主役を演じる若葉竜也。古着屋に勤め、読書好きな青年を演じる。(C)「街の上で」フィルムパートナーズ
「『今泉映画経由朝ドラ』みたいになったらうれしいな」
──この映画、すべてのシーンが面白いと言えば面白いんですけれども「これはちょっとものすごいものを見ているな」と3分くらい経って思うのが、荒川青と城定イハ(中田青渚)の15分くらいのほぼフィクスの長回しシーンです。あれは最初から意図されて?
決めていたわけではないんです。物理的な事情も含めてなんですけども、その日の現場が驚くほど押してて。
『パンとバスと2度目のハツコイ』とか『愛がなんだ』とか今まで何本か撮ってきた状況下で、結構重要な2人だけのシーンを1カットで見せるみたいなことをしてきてたんです。そこに引っ張られている自分もいつつ、ただ芝居が成り立たなければカットを割るしかないし(笑)。
正直、段取り、テストも、最後までは1回も上手くいかなくて、仕方なく「そろそろ撮りますか」って。で、あれは本番1回だけなんです。なんかあの空気が撮れちゃったら、もう俺がハサミを入れる意味はないな、と。
──でも10分くらい続いたところで、川瀬雪(穂志もえか)の部屋のシーンが挟まれますよね。それはそれで衝撃の展開なんだけど。
まあ、長回し中にちょっと芝居をトチったところがあって。でもカメラの裏から、俺が台詞をこそっと言ってあげて、止めずに撮り続けた。もともと雪たちのシーンは、あの長回しのくだりが終わったあとに置くはずだったんです。
映画にも残ってますけど、イハが「おやすみ」って去ったあと、青が部屋の隅っこに行って携帯いじってるでしょ。あれは携帯で「今日、実は間宮さんに会ったよ」ってメールを送ってるんですよ。本当はメール繋がりであっちに行く流れだった。でも、今の完成版も繋がりはいいですよね。
──脚本として、あの2人のやりとりは出来てたんですよね?
そうです。アドリブではなくて台詞は書いてるんだけど、2人が台詞と台詞の間で笑ってたり、照れてるみたいになってる時間というのは俺はコントロールしていないので、脚本を芝居で上げてもらってますね。ま、何をもってアドリブというのか、だとは思うんですけど。
自分で書いておきながら「終わんね~。なにこれ、大丈夫?」みたいなことを段取り中に現場で感じてて。脚本めくってもめくって終わらない。これヤバいぞ、って思ったけど、焦ることもなくただ撮ってましたね。

──そもそもあのお2人、もうボケツッコミができてるじゃないですか。何分続こうがまったく退屈しない心地よさがある。監督もお笑い好きですもんね。
ああ、そうかも。あと、イハのしゃべりを関西弁にしたりというのもありますよね。
──それがいちばん大きいかなあ。初めは標準語だったんですか?
書いてるときは標準語でしたね。それで中田さんが演るって決まってから、2人の時間作って。そのときにやっぱ関西弁でやった方がいいかも、と。「これ関西弁で書けない?」って、中田さんに校正してもらって作っていったんです。
それから若葉さんとの本読みに入ったんですけど、俺がそれをちゃんと彼に伝えてなかったっぽくって。そしたら「台本は標準語で書いてあるのに、勝手に関西弁で演じる女優がいる」って若葉さんがいろんな取材の場で言っちゃって。「中田青渚はヤバいですよ。宇宙人です」とか(笑)。
──あはは。まあ、あれだけのやりとりをやってのけた若葉さんなりの親密感の表現なんでしょうけど。
「今泉さん、あれ関西弁で、って指示してたの? いろんなところで言っちゃった」って(笑)。逆に中田さんは中田さんで、「関西弁っていうのは相手との距離が近くなるから、なるべく言葉を雑に投げて、なるべく距離感が近すぎないように、恋愛っぽく見えないように意識してました」って言ってて、すごいなあと。確かに言葉がぶっきらぼうなんですよ。
──中田さんにとっても、あれだけバリバリの関西弁で演じられたことはなかったでしょ?
彼女が出演する、ふくだももこさんの『君が世界のはじまり』(2020年)よりも前に撮ってました。だから、ある程度どんと大きい役というのもまだやってなかったから、こっちもキャスティングするときに、「結構チャレンジだよね」って、プロデューサーと言ってたんです。
中田さんとはドラマ版の『his』(2019年)のオーディションでお会いしてて、配役のバランスで外しちゃったんですけど、そのときの芝居もメチャメチャ面白かった。そしたらプロデューサーの髭野さんがすでに仕事してて「中田さんにイチかバチか頼って裏切られたことないですよ、全部上手くいってます」って言われて、じゃあ中田さんと心中だぁと。
例えばちょい役のかわいい子みたいなポジションは今後商業映画でいっぱい来るだろうし、そういう使い方をこの映画でする必要はないよねって。やるならガッツリかな、と。
──でも、中田さんはこれですごく注目されるのは間違いないですね。
それが、コロナで公開が1年延びてしまった。中田さんだけでなくて、本当にこれからって役者さんが沢山いたから、2020年に公開してたらみんなそのあとの仕事いっぱい来たかな、って思いがあったんです。けれど、いやいや全然活躍してる、っていう(笑)。
──まあ、僕も含め映像関係者は、去年の公開予定日前に大方観てただろうしね。『お嬢ちゃん』や『37セカンズ』で大きな役を演ってた萩原みのりさんはともかく、あとの3人は知ってはいたけれどもまだ全然でしたし。この映画を観たからこそ、この1年の間で起用されたというのは絶対にあると思うんだけど。
そうだとしたら、とってもありがたいです。
──でも成田さんの「朝ドラ役者」は今の方がウケますよね(笑)。
こんなタイミングよく?みたいな。前の『愛がなんだ』の公開のときもちょうど『まんぷく』が放送してて、岸井ゆきのさんと深川麻衣さんが出てた。ドラマ3月終わりで映画4月公開で、「朝ドラが宣伝に使えるみたいなことがあるの?」みたいなこと冗談で言ってたのに、また同じことが若葉さんと成田さんとで起きてるから、「NHKの人ありがとう」みたいな(笑)。
──古川琴音さんは『エール』に出てましたもんね。だからドラマのキャスティング・ディレクターはみんな今泉映画を注目して観てるんじゃないのかな?
そうなんですかね。「今泉映画経由朝ドラ」みたいな(笑)。そうなったら、うれしいですね。
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