世界が注目する大阪発の映画祭、濃厚すぎる作品紹介

『第16回大阪アジアン映画祭』のビジュアルイメージ
斉藤「日本で紹介されるトルコ映画はほとんど芸術系。でも本国では娯楽作が主流」
──今回はあまりOAFFでお見掛けしない国の作品がけっこうありますよね。
国籍の幅広さというのも今回の特徴といえます。それが一番現れてるのが今回のコンペ部門で、珍しいところでは、自分でもまさかと思ったんですがエクアドル映画がありますね。
エクアドルは南米だから、なぜ入ってるんだという人もいるかと思うんですけれど。
──『空(くう)』ですね。なんでも中国人の話なんでしょ?
エクアドルって太平洋側に面しているんで、中国から貨物船で密航できるんです。もっぱら中国から移民してきた人たちのコミュニティで話が展開するので、映画の7~8割方は中国語ですね。
この映画はなんと今年のアカデミー国際長編映画賞のエクアドル代表なんですよ。ポール・ベネガスっていう監督自身は中華系ではないんですけど北京駐在経験があるみたいで、それで中国人社会と親しみがあるというか、多分中国語できるんじゃないかな?

──アメリカ大陸からは『ナディア、バタフライ』ってカナダ映画もありますね。
この映画、徹底してコロナに呪われちゃった映画で。なんせ2020年に東京オリンピックが開かれたという大前提があっての話なんですよ、これ。
──うわあ、かわいそう(笑)。
2020年にカナダ代表の水泳選手が東京で過ごす、オリンピック大会とかプライベートな生活とかを描いているんですよ。撮影自体は2019年頃に東京で撮ったと思うんですけど、実際2020年を迎えたら東京オリンピック開かれなかったので、まずいきなり現実感を失っちゃって(笑)。
──それだけ聞くと珍品の匂いがしますね。
それでもこの映画、快挙なことに2020年の『カンヌ映画祭』に選ばれたんです。でも、これはこれでカンヌもコロナで中止になっちゃって、結局日の目を見るチャンスを失っちゃったという。
コロナにやられっぱなしの映画なんですけど、だから選んだってわけじゃない。監督は水泳選手出身らしいんですけど、すごく映画の文法を知り尽くしていて、東京オリンピックネタということを別にしても素晴らしい作品ですね。
──アメリカ映画として『あなたを私のものにする』も入ってますね。藤谷文子も出てるっていう。
『ホワイト・オン・ライス』(OAFF2010上映)や『マンフロムリノ』(OAFF2015上映)の監督のデイヴ・ボイルがプロデューサーなんです。
監督のリン・チェンはずっとアメリカで女優として活躍してる人で、監督をやりたいって志向もずっとあったみたいで、これが監督デビュー作なんです。
これは2020年の『サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)』に入選して華々しくワールドプレミアを飾るはずだったんですけど、そのあとコロナでダウンして劇場上映はされなかったと思うんですよ。

──イスラエル映画もありますけど、OAFFでは初めてじゃないですか? ロマンティック・コメディだそうですね。
『ハネムード』ですね。これはイスラエルでも大ヒットしました。タリア・ラヴィって女性監督ですが、まだこれが2作目かな? 前作『Zero Motivation』も国際的には話題になってます。
で、この映画は、何に例えればいいんだろう??・・・自分としても、日本に紹介されているイスラエル映画と全然違うイメージで。
──でも最近ちょっとイスラエル映画のイメージは変わってきましたね。映画祭で上映されるのは相変わらず似たり寄ったりなんだけど、劇場公開されるイスラエル映画が段々増えてきて、内容も幅が拡がってきてますね。
この映画も娯楽性充分で、ぜんぜん商業公開もイケる作りなんですよ。
あと『ジェミル・ショー』。OAFFではトルコ映画も初めてじゃないかな? 昔のトルコ映画をリメイクするみたいなプロジェクトが映画のなかであって、そのオーディションを俳優志望の主人公が受けに行くという話なんです。
昔のトルコ映画は僕もよく知らないけれども、これを見ていると相当おもしろそうなんですけどね。

──トルコ映画もまた、日本で紹介されるのはほとんど芸術系ばかりですが。本国では娯楽作が主流で、連続ドラマの海外輸出はアメリカに次いで第2位って話もありますし。
これはつい最近開催された『ロッテルダム映画祭』でワールドプレミアされましたね。ネタは完全に娯楽映画ネタなんだけれども、ロッテルダム的な尖った作品でもある。映画についての映画ですね。ミルクマンさんはのめりこむんじゃないかと思うんですけど。
イラン映画の『キラー・スパイダー』も注目ですよ。イラン映画って、映画祭に来るのはパターン化してて大体同じような感じですけど、これ、全然違うんです。多分、アメリカの昔のノワール映画とかが好きな監督だと思うんですよ。昔のハリウッド映画を見てるような作りですね。
──アフマディネジャド政権になってから矮小化してしまったイラン映画界ですが、ようやく変わってきたんですかね? 2019年の『東京国際映画祭』でやって劇場公開もされた『ジャスト6.5 闘いの証』なんか高カロリーな犯罪映画でかなり興奮しましたが。
あれは割と健康的な方でしたけれど、これはもっと不健康な(笑)。ちょっと退廃的な感じがあるんですよね。こんなのがイランで作れるんだっていう。
──イスラーム革命前の映画って退廃的な映画いっぱいあったのにね、イランって。
あれはもう今の政権には否定されたままですからね。
『第16回大阪アジアン映画祭(OSAKA ASIAN FILM FESTIVAL 2021)』
期間:2021年3月5日(金)〜14日(日)
会場:梅田ブルク7、シネ・リーブル梅田、ABCホールほか
※ABCホールは映画祭公式サイトもしくは当日会場にて、それ以外は各劇場の公式サイト・窓口にて
料金:一般1300円、青春22切符(22歳まで)当日券500円
電話:06−4301−3092(大阪アジアン映画祭運営事務局)
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